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ローレン・モロン、突然の覚醒のなぜ?

2019.11.19

 本日11月15日に発売となった雑誌『SOCCER KING』12月号では、「異変だらけの序盤戦、36のなぜ?」と題し、各国の序盤戦で生まれた36の疑問に迫っている。そんな雑誌『SOCCER KING』12月号から、一部コンテンツを公開!

WHY? 15
【LA LIGA】

ローレン・モロン、突然の覚醒のなぜ?

文=北川紳也 Text by Shinya Kitagawa
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images

※データはラ・リーガ第10節終了時のもの

 夏の放出候補が開幕戦から次々とゴールネットを揺らし、得点ランキングのトップに立つ―。ラ・リーガを舞台に、そんなおとぎ話のようなストーリーが展開されている。主人公はベティスのローレン・モロンだ。

 25歳の彼は2012年に4部でプロデビューを果たし、昨年2月にラ・リーガの舞台に初めて立った。そして、実質3年目となる今シーズンに突如、覚醒。開幕9試合でリーグ最多の7ゴールをたたき出した。この時期にスペイン人選手が得点王争いで単独首位に躍り出るのは、08-09シーズンにバレンシアで開幕9戦で10ゴールを挙げたダビド・ビジャ以来のことである。

 序盤戦で得点王争いに異変が起こるのはめずらしいことではない。昨シーズンの第7節終了時点で首位に立ったのは、ラ・リーガ初挑戦のアンドレ・シルヴァ(当時セビージャ所属。7戦で7ゴール)だったし、今シーズンは“本命”のリオネル・メッシやルイス・スアレスらがケガで出遅れていたから、混戦になることは予想できた。

 ただ、ローレンのすごみは、得点数以上にその効率性にある。データサイト『WhoScored』によると、第8節終了時点の決定率は46.2パーセント。これはムサ・デンベレ(リヨン/42.9パーセント)、ジェイミー・ヴァーディ(レスター/38.5パーセント)、パコ・アルカセル(ドルトムント/35.7パーセント)を上回り、欧州5大リーグでトップの数字だ。さらに驚くべきは、1試合平均のシュート数が「1.9本」と、MF並みの数字だったことだ。

 覚醒の理由について問われると、ローレンは「最初から僕のことを信頼してくれた」とルビ新監督の存在を挙げる。49歳のスペイン人指揮官は、今夏の就任後、昨シーズンまで率いたエスパニョールの“元教え子”ボルハ・イグレシアスの獲得を希望。同じ長身FWであるローレンは放出候補として名前が挙がり、実際、国外クラブからオファーも届いたという。それでも指揮官は貴重な戦力であるとし、ローレンもその期待に結果で応えてみせた。

 チームのプレースタイルが変わったことも功を奏した。キケ・セティエン前監督が志向したのは、最終ラインから攻撃を組み立てる緻密なポゼッションサッカーだ。その華麗なパス回しは「バルセロナ以上」と称えられたが、FWにとってはゴールに背を向けてプレーする時間のほうが長く、ローレンが持ち味を発揮できたとは言い難い。しかし、今シーズンのベティスはオーソドックスなスタイルに回帰。ローレン自身の決定力の高さは特筆すべきだが、FWにとってはゴールを狙いやすい状況にあると言える。

 スタイル転換によってローレンが輝きを増す一方、第10節終了時点で18位と、チームの成績が下降線を描いているのは皮肉なものだが、国産ストライカーの活躍はスペイン代表にとってもうれしいニュースだろう。スペイン人選手が最後に得点王のタイトルを手にしたのは、ダニエル・グイサが27ゴールを挙げた07-08シーズンのこと。12年ぶりの快挙を達成すれば、“ラ・ロハ”の一員として来夏のユーロにも出場できるかもしれない。

 ハードルはある。それも、複数。だが、人生は何が起こるか分からない。おとぎ話の主人公ローレンの人生ならば、なおさらそうだ。

『SOCCER KING』2019年12月号

What’s Going On? 異変だらけの序盤戦、36の「なぜ?」

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