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「21世紀最悪のシーズン」からのリスタートも…銀河系軍団に訪れた緊急事態

2019.08.17

[写真]=Getty Images

 レアル・マドリードは昨シーズン、宿敵バルセロナには19ポイントもの大差を付けられたうえ、地元ライバルのアトレティコ・マドリードにも8ポイントの遅れをとり、2年連続で3位に終わった。また、4連覇を狙ったチャンピオンズリーグでも、決勝トーナメント初戦で敗退。絶対的エースのクリスティアーノ・ロナウドの電撃退団や2度に渡る指揮官交代劇などドタバタ続きだった1年は、贔屓紙の『マルカ』からも「21世紀最悪のシーズン」と酷評される顛末となった。

久々の大型補強もケガ人が続出

メンディ、アザール、ヨヴィッチ、ミリトンらを獲得し、覇権奪回へ大型補強を行ったが… [写真]=Getty Images


 悲惨な結果を受けたクラブは、この夏は久々に大型補強を敢行した。チーム総得点が前年度の94ゴールから63ゴールへと激減した攻撃陣では、長年追い続けて来たベルギー代表FWエデン・アザールをチェルシーから迎え入れ、元フランス代表FWカリム・ベンゼマに続くスコアラーとしてセルビア代表FWルカ・ヨヴィッチをフランクフルトから獲得。主将のスペイン代表DFセルヒオ・ラモスと副将のブラジル代表DFマルセロの後継者探しが懸案事項の守備陣では、ポルトからブラジル代表DFエデル・ミリトン、リヨンからフランス代表DFフェルランド・メンディをそれぞれ獲得した。

 また、4500万ユーロ(約53億1000万円)もの大金を投じてU-20ブラジル代表FWロドリゴをサントスから青田買いし、バルセロナのカンテラ出身である日本代表FW久保建英をFC東京から獲得するなど、18歳の2選手の加入でも注目を集めた。

 だが、中盤の選手層の薄さは依然として解消されていない。スペイン代表MFマルコス・ジョレンテをアトレティコに放出し、クロアチア代表MFマテオ・コヴァチッチもチェルシーに完全移籍したにもかかわらず、手つかずとなっている。バイエルンへのレンタルから復帰したコロンビア代表MFハメス・ロドリゲスは去就が決まらず、ジネディーヌ・ジダン監督のお気に入りとされるフランス代表MFポール・ポグバの獲得はトーンダウン。アヤックスのオランダ代表MFドニー・ファン・デ・ベークへとターゲットが移ったとも伝えられるなど、状況は混迷している。

 また、ジダン監督がレギュラーとして期待を寄せていたスペイン代表MFマルコ・アセンシオが左膝の大ケガで年内絶望となったのを筆頭に、プレシーズンは故障者が続出。メンディは右大腿部の負傷で開幕が微妙となり、ヨヴィッチも右足首の負傷で一旦戦列を離れるなど、新戦力を十分に試すことができていない。さらに、開幕直前の16日にはアザールがトレーニング中に負傷。検査の結果、左足大腿直筋負傷と診断され、開幕戦の欠場が濃厚となった。

銀河系入りを果たした久保建英は…

レアルに加入した久保建英は複数チームからレンタルのオファーが届いており、武者修行に出る可能性も報じられている [写真]=Getty Images


 多くの課題を抱えるチームは、バイエルン、アーセナル、アトレティコ、トッテナム、フェネルバフチェ、ザルツブルク、ローマとそれぞれ対戦したプレシーズンマッチは、2勝2分3敗と不甲斐ない結果に終わった。格下のザルツブルク戦以外の6試合で18失点を喫し、とりわけアトレティコ戦では7失点の大失態を演じたディフェンスは、大幅な改善が求められる。

 基本となるシステムに関しても、当初採用された4-4-2が機能せず、3-5-2への変更も効果が出ないなど、開幕を前に定まっていない。これまでの軸であった4-3-3に戻すべきとの声も多く、クラブ寄りの『マルカ』紙による「どのシステムでプレーするべきか?」とのアンケートでも、半数近くの44%の支持を獲得。4-4-2の33%や、3-5-2の11%を大きく上回っている。

 補強の目玉のアザールは、プレシーズンマッチ全試合に出場しながらザルツブルク戦の1ゴールのみと、期待に応えられているとは言い難い。それでも、得意とする左から中央へと切り込む形に持ち込めた時の鋭さは垣間見せており、ベンゼマとのコンビネーションも悪くない。また、マルセロがゴールでもアシストでも存在感を示しており、左からの攻撃には一応の目処が立った。

 しかし、右からの攻撃に関しては、アセンシオの離脱により生じた問題を解決できていない。代役の最有力と目されるブラジル代表FWヴィニシウスは、得意とする左サイドに比べると、右サイドでのプレーは大きく見劣りする。2番手と見られるスペイン代表FWルーカス・バスケスは、守備面での献身は抜群だが、攻撃面での貢献は物足りない。プレシーズンマッチ最終戦では、構想外だったはずのウェールズ代表FWギャレス・ベイルを起用するなど、ジダン監督の迷いも伺える。

 なお、プレシーズンはトップチームに帯同した久保建英だが、当初の予定通りセグンダB(3部)に所属するBチームで一足先に新シーズンをスタートさせている。とはいえ、トップリーグの複数チームからレンタルのオファーが届いており、いきなり武者修行に出る可能性も報じられている。

合流後、安定感をもたらしたカゼミーロ

カゼミーロが合流するとチームは安定感を取り戻したが、不安を抱えたまま開幕を迎える [写真]=Getty Images


 心配だらけで開幕を迎えるチームにとって、ブラジル代表MFカゼミーロがピッチに立つとパフォーマンスが安定するのは数少ない救いだろう。実際、コパ・アメリカを終えて合流したカゼミーロが出場し始めて以降は1勝1分と、一応の体裁を整えてプレシーズンを終えた。『マルカ』紙も、「カゼミーロのレアル・マドリード」との見出しで、チームで最も重要な選手であるとの見解を示している。

「光る選手を探すのが難しかったプレシーズンは、カゼミーロの働きばかりが目立つ形となった。ジネディーヌ・ジダン監督にとって、どのような戦術を採るにしても必要不可欠なキーマンであり、カゼミーロの存在なくして今のレアル・マドリードは成り立たない」

 現時点でのレアルは、昨シーズンの成績やプレシーズンの内容から判断する限り、バルセロナ及びアトレティコの後塵を拝していると言わざるを得ない。『マルカ』紙からも、「問題はシステムではない。それに対応するための十分な練習が積めず、攻撃と守備が連動していないことだ」と指摘されるなど、両チームを逆転するには相当な積み上げが必要だ。「チームには様々な選手がおり、様々な戦い方が可能だ」との強気の姿勢を崩さないジダン監督が、その言葉通り数々の不安要素を払拭することができて、初めて3シーズン振りのリーガ制覇が視野に入ることだろう。

文=北村敦

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