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アジアカップ後も苦しい状況が続く柴崎岳……現地報道から探る再起の道とは?

2019.02.22

充実の時を迎える今季のヘタフェにおいて、柴崎岳の置かれている現状は厳しい。

 近年稀に見る混戦模様を呈す今季のリーガ・エスパニョーラで、4位セビージャから1ポイント差の5位と好位置に着けているヘタフェ。だが、ヨーロッパリーグ出場を視野に捉え、チャンピオンズリーグ出場への期待も掛かるチームとは対照的に、日本代表MF柴崎岳は苦闘の日々を送っている。

 日本代表の主力として、昨年夏のワールドカップではベスト16、先日のアジアカップでは準優勝に貢献した柴崎だが、レギュラー奪回を目指すヘタフェでの立場改善には繋がっていない。出場機会を求めて環境を変える選択肢もあったが、夏のマーケットでも冬のマーケットでも噂された移籍が成立することはなかった。

 今季いっぱいはクラブに残ることが決定した柴崎に、ヘタフェで輝く道は残されているのだろうか。

■今季ここまでの状況

ベンチを温める、もしくは招集外となることが多い今季の柴崎。チーム内の序列は明らかに下がっている。

 今季、ヘタフェで2年目を迎えた柴崎は、故障中にレギュラーの座を失った昨季から状況がさらに悪化。プレー可能なポジションにおいても、控えのさらに控えという立場に置かれている。実際、ここまで出場した公式戦は、リーガ・エスパニョーラで3試合、コパ・デル・レイで2試合にとどまっている。これはアジアカップ出場により1カ月間チームを離れたことを差し引いても明らかに少ない。2カ月以上戦列を離れた昨季でさえ、リーガで22試合に出場していることからも、チーム内の序列が一段と下がっていることが伺える。

 一方、ここまで出場した5試合のうち、リーガでは第1節および第16節、コパでは4回戦2nd legと、3試合で先発を果たしている。だが、これら昨年8月および12月に巡って来た出場機会は、柴崎の売却を考えたクラブによる移籍マーケット向けのアピールを目的とした起用だと、現地では報じられている。実際、アジアカップから帰国後の2試合は未出場に招集外と、ホセ・ボルダラス監督からは戦力として殆ど計算されていないのが現状だ。

■なぜ出場機会に恵まれていないのか

堅守速攻スタイルの色が濃くなるチームにおいて、柴崎のストロングポイントが出しにくくなっているという現実がある。

 今季のヘタフェは、8位と躍進した昨季を支えた4-4-2のシステムを基本に、堅守速攻のスタイルを一段と徹底している。強固な守備ブロックを築き、前線へのロングボールを中心に攻撃する戦い方に磨きが掛かれば掛かる程、パスゲームでこそ生きる柴崎の居場所はなくなるという状況だ。創造力ではチーム随一の柴崎だが、ピボーテには守備力、サイドハーフには突破力、トップには決定力を第一に求めているボルダラス監督にとっては、使うポジションがない選手になってしまっている。スペインのフットボール専門チャンネル『GOL』も、柴崎がチーム戦術の中に埋もれているとの分析を行っている。

「ボルダラス監督の戦い方は、ガクのようなスタイルの選手には向いていない。自身の持ち味とは異なる、激しいタックルや厳しいプレッシングが求められるからだ。中盤のレギュラー争いに敗れ、サイドにも上手く適合することができないガクは、プレー機会を完全に失っている」

■出場機会を得るには何が必要なのか

柴崎に序列回復の可能性はどれくらい残されているのだろうか。

 コパの準々決勝で敗退したヘタフェにとって、今季残されたコンペティションはリーガのみとなった。これは柴崎にとって出場のチャンスが一段と少なくなったことを意味する。現実的に考えると、チームの成績が急下降する、もしくは故障者が続出する、といった外的要因でもない限り、スタメンに名を連ねる可能性は極めて低い。スペイン最大のスポーツ紙『マルカ』も、柴崎がポジション奪回のためにできる事は限られているとの見解を示している。

「ガクのヘタフェでのハイライトは、バルセロナ相手のゴラッソで世界を驚かせた昨季序盤から更新されていない。その直後に負傷したあの一戦を境に、長らく失意の日々が続いている。彼の目標はレギュラーの座を取り戻すことだが、それは不可能にも思える。なぜなら、ボルダラス監督から殆ど起用してもらえないからだ。それでも、地道な努力を続けて指揮官を納得させるしかない」

 現状、柴崎が出場を見込めるのは、試合の勝負が決した後の終盤からの投入だろう。従って、僅かなプレータイムの中で強烈なインパクトを残すことが必要不可欠だ。難題中の難題だが、鹿島アントラーズ時代のクラブ・ワールドカップ決勝でレアル・マドリード相手に2ゴールを叩き込んだ柴崎なら、ここ一番での勝負強さに期待したくなる。これまでの鬱憤を晴らす一発回答を見せ、何とか逆境を乗り越えて欲しい。

文=北村敦
写真=Getty Images

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