2018.09.19

【コラム】DF離れした攻撃力と悪魔の左足…“ロベカル”が示し続けた唯一無二の個性

“銀河系軍団”の一員としてレアル・マドリードで活躍したR・カルロス [写真]=Getty Images
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 9月上旬、サッカーファンにとって“懐かしい顔”がFリーグのコートに立った。日本では「ロベカル」の愛称で親しまれた元ブラジル代表DFロベルト・カルロスだ。エキシビジョンマッチに加え、Fリーグ選抜の一員として公式戦にも出場したR・カルロスは、6年前に現役を退いた選手とは思えないようなプレーで会場を沸かせた。もちろん、現役当時に「悪魔の左足」と恐れられた強烈なキックも健在だった。

 悪魔の左足ーー。その異名が世界中に広まったのは、1997年に行われたフランス対ブラジルの国際親善試合がきっかけだった。距離にして40メートル近くはあっただろうか。ボールを入念にセットし、たっぷりと長い助走をとったブラジル代表の背番号6は、独特の小刻みなステップから左足のアウトサイドで直接FKを蹴った。矢のように放たれたボールは摩訶不思議な弧を描きながら、右ポストをかすめてゴールネットに突き刺さる。おそらくGKはボールが蹴られた瞬間にゴール右へ外れると踏んだのだろう。待ち構えていたファビアン・バルテズは、急激に曲がって枠内に飛び込んできた一撃をただ見送るしかなかった。

1997年のフランス戦で決めた直接FKは今も語り草 [写真]=Getty Images

 170センチに満たない小柄な体からは想像もつかないような強力無比なキックを、R・カルロスはキャリアを通じて何度も披露してきた。時速140キロ超、まるで重力の法則を無視したかのような軌道で曲がる“弾丸”は、物理学者たちの研究対象となったほどだ。彼のキックはそれほどまでに“規格外”だった。

 彼が務めていたサイドバックのポジションは、今でこそ「戦術上のキーマン」と言われてクローズアップされるようになったが、20年前は単に地味な役回りのポジションと見なされていた。そのイメージを一新した選手こそがR・カルロスだろう。「悪魔の左足」だけでなく、肉体は鋼のように硬く、スプリントからロングランまで走力も抜群。彼はとにかくアスリートとしての能力が高かった。

 R・カルロスのプレーは、ロナウドやリヴァウド、ロナウジーニョを擁したブラジル代表でも、ジネディーヌ・ジダンやルイス・フィーゴら超一線級のタレントがそろっていた「銀河系軍団」のレアル・マドリードでも、攻撃において主役を張れるほどの代物だった。前線にスーパースターがいたとしても、チームとして「この選手を生かすべき」と思わせるだけの攻撃力を持っていたのである。

スーパースターに囲まれても“ロベカル”の攻撃力は際立っていた[写真]=Getty Images

 R・カルロスはサンパウロで生まれ育ち、地元クラブから名門パルメイラスを経て1995年にイタリアのインテルに移籍。ただ、守備が美徳とされる“カルチョの国”はどうも性に合わず、1年でクラブを去ることになった。新天地に選んだレアル・マドリードでも最初のうちは「守備に難あり」の評価が付いて回ったが、当時から「サイドバックこそ後方からチャンスを演出すべき」という信念を持っていた彼は決してブレなかった。アグレッシブな姿勢を貫き、果敢な攻撃参加を続けた結果、やがて攻撃的なスタイルが好まれるスペインで居場所を確立していく。

 結局、レアル・マドリードには11年にわたって在籍し、数々のタイトル獲得に貢献。外国籍選手のクラブ歴代最多出場記録も打ち立てた。特にジダンと一緒にプレーした時期は、そっくりそのままR・カルロスの全盛期だった。4-4-2の中盤左サイドをスタートポジションとしていたジダンは、試合が始まると頻繁に中央に流れて左サイドに広大なスペースを作り出した。R・カルロスが大暴れするための“おあつらえ向き”の舞台が整っていたわけだ。

 それを象徴するのが、2001-02シーズンのチャンピオンズリーグ決勝だろう。レヴァークーゼンとの一戦で勝負の行方を決したのは、かの有名なジダンのボレーシュートだった。このスーパーゴールを演出したのがR・カルロスの攻撃参加だ。中盤からの浮き球のパスに反応してロケットのように前線に飛び出すと、敵のプレッシャーをかいくぐるようにして難しい体勢から左足でクロスを供給。この折り返しが、今も語り草となっている伝説の名シーンを生んだ。

 サイドバックでありながら唯一無二の個性と魅力を持ち、これだけ“華があった”選手は、後にも先にもR・カルロスをおいて他にいないだろう。

文=大谷駿

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