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【アトレティコ流クラブ改革の真実①】新たな“神の子”が育つ土壌

2018.04.17

今シーズン限りでのアトレティコ退団を表明したトーレス [写真]=Getty Images

 それは唐突な告白だった。

「この場を借りて発表したい。今季がこのクラブでプレーする最後のシーズンになる。簡単な決断ではなかったけど、現状を見れば恐らく今が最善の時なんだ」

 4月9日、スポンサー絡みのイベントで行われたインタビューの壇上にて、フェルナンド・トーレスが今季限りでアトレティコ・マドリードを退団する意思を表明した。

 地元マドリード出身で11歳からロヒブランコ(赤白)のシャツをまとい、17歳でトップチームデビューを果たした「エル・ニーニョ(神の子)」も、3月に34度目の誕生日を迎えた。

 今季のラ・リーガでは第31節終了時点で3試合しか先発しておらず、全公式戦の出場時間は27%にも満たない1280分にとどまっている。それでも限られたチャンスを生かし、これまで全公式戦で7ゴール2アシストを記録してきたが、アントワーヌ・グリーズマンアンヘル・コレアケヴィン・ガメイロ、さらに1月以降はジエゴ・コスタも加わった前線において、背番号9の出番が増える兆しはなかった。

 そのような状況下、彼は愛するクラブに2度目の別れを告げる決断を下した。

「クラブは望むだけ居続けていいと言ってくれた。でも今季はほとんど重要な役割を与えられていない。恐らく他に道を譲るべき時なんだ。2度目の別れを告げるのは本当に辛い。ここで引退したかったけど、そのためだけに残りたいとは思わない。まだ心身ともに力はあると感じている。あと何年やれるかは分からないけど、まだまだプレーし続けたいんだ」

 まだ次の所属先は決まっておらず、これからオファーを聞くことになるという。ただどこへ行き、何色のユニフォームを着るにせよ、彼がアトレティコのシンボルであり続けることは間違いない。

 1992年6月、名物オーナーとして数々の伝説を残したヘスス・ヒル前会長は、「採算が合わない」という理由でBチームを除く下部組織の全チームを廃止した。その間に退団したラウール・ゴンサレスが後にレアル・マドリードの英雄となったことは、今もアトレティコの関係者にとって最大の屈辱の1つとなっている。

 そのラウールがレアル・マドリードのエースとして黄金期を築く傍らで、アトレティコはヒルが大規模な汚職事件の主犯として逮捕され、チームは2部に降格。トーレスはそんな混乱の時代に差し込んだ、一筋の希望の光だった。

 トップチームでデビューしたのは2部降格1年目の2000-01シーズンで、翌年には主力の一人として1部昇格に貢献。1部復帰後も中位に低迷するチームの中で毎シーズン二桁得点を挙げ、2003-04シーズンには史上最年少の19歳でキャプテンを任された。

 ゆえに2007年夏、リヴァプール移籍を発表した際は多くのファンが怒り、涙した。裏切り者扱いする声もあるにはあったが、それも少数だった。大多数のファンは彼がさらなる成長のためにより良いプレー環境を必要としていたこと、そして当時のアトレティコが彼には小さすぎる器となっていたことを理解していたからだ。

 それから7年半後の2015年1月。トーレスはユーロとワールドカップ、チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグのファイナルでプレーし、タイトルを勝ち取った世界で唯一の選手として地元クラブに戻ってきた。

 ビセンテ・カルデロンで行われたプレゼンテーションには4万5千人超のファンが集まり、大人の男として帰ってきたエル・ニーニョに変わらぬ愛を伝えた。

■新たな「神の子」が現れる日

コケ(右)とサウール(左)はトーレスの意思を継ぎアトレティコを背負うカンテラーノとして期待される [写真]=Getty Images


 一方、トーレスが不在の間にアトレティコは大きく変わっていた。

 明確な強化プランを持たぬまま、いたずらに選手の入れ替えを繰り返していた当時とは違い、ディエゴ・シメオネがチームとして、クラブとして進むべき方向性を打ち出した現在は自ずと必要な人材もクリアになった。他クラブから呼び戻したガビマリオ・スアレス、新たに台頭してきたコケサウール・ニゲスらクラブ育ちのカンテラーノがチームの中核を担うようになったのもそのためだ。

 彼らはシメオネがクラブのアイデンティティーとして浸透させたハードワークの精神をはじめ、アトレティコというクラブの価値を他の選手よりも深く理解している。しかも彼らはクラブ生え抜きであるがゆえにファンの人気も高く、お互いの帰属意識(=クラブ愛)を深め合う相乗効果をもたらす存在としても重要視されている。

 シメオネがチェルシーやミランで鳴かず飛ばずだったトーレスの復帰に尽力したのも、誰よりもファンに愛されたクラブのシンボルである彼がピッチ内外でもたらす影響力を必要としていたからだ。

 復帰からの3年半、トーレスはストライカーとして確固たる地位を築くには至らず、チームも無冠が続いている。それでも彼はクラブにとって、ファンにとって特別な存在であり続けてきた。そんな選手はごく僅かしかいない。

 ここ数年、アトレティコは第2、第3のエル・ニーニョを輩出すべく、かつてないほど育成に力を入れるようになった。現在はトップチームのみならず、女子チームを含めた下部組織の全カテゴリーに専任の分析チームを設け、試合や練習内容の改善に役立てているほどだ。

 そういった努力もあり、今季はフベニールの2チームがレアル・マドリード、バレンシアらを押さえてリーグ優勝を果たし、3部所属のBチームも昇格プレーオフに手の届く位置につけている。

 今季限りでロヒブランコのシャツを着た彼の姿を見られなくなるのは寂しい限りだ。ただ今の取り組みを続けていけば、新たな「神の子」が現れる日もそう遠くはないかもしれない。

文=工藤拓

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