FOLLOW US

【コラム】白いユニフォームにまとわる勝利の伝統…白熱するリーガ覇権争い、カギは“逆転力”

2017.05.03

勝利の伝統を持つレアル・マドリード [写真]=fotopress/Getty Images

 レアル・マドリードバルセロナのデッドヒートが続いている。

 レアル・マドリードの本拠地・サンティアゴ・ベルナベウで行われたリーガ・エスパニョーラ第33節の“エル・クラシコ”で、白い巨人が覇権争いにけりをつけると思われた。しかし、バルセロナが土壇場の逆転で、勝ち点3を手にした。1試合少ないにも関わらず、首位に立っていたレアル・マドリードにとっては、引き分けでも十分だった。ましてやセルヒオ・ラモスを退場で失っていたが、同点に追いついていた。レアル・マドリードは試合をきっちりクローズするだけでよかった。

 2013-14シーズンのチャンピオンズリーグ決勝、アトレティコ・マドリード戦の後半ロスタイムのセルヒオ・ラモスのヘディングシュートが象徴するように、終了間際に得点を奪い、しぶとく勝利するのがレアル・マドリードの十八番だ。10人から同点にするなどレアル・マドリードに息づく伝統は“エル・クラシコ”でも見られたが、この日はリオネル・メッシにお株を奪われてしまった。最後のプレーで、決勝点を決められたのだ。失点後、クリスティアーノ・ロナウドを追うカメラは「ファウルしろよ!!」と激昂する姿を捉えていた。セルジ・ロベルトのドリブル突破に対して、マルセロがレッドカードでもいいから戦略的なファウルをしろよ、と心中を吐き出していた。レアル・マドリードらしからぬ負け方だった。

 スペイン紙『エル・パイス』によるとジネディーヌ・ジダン監督が率いるチームは、今シーズン、試合終了残り10分の時間帯から9試合をひっくり返している。残り10分からの得点で、7分2敗(7ポイント)で終わるはずだったところを7勝2分(23ポイント)へ劇的に変化させた。4月29日に行われた第35節のバレンシア戦もそうだった。マルセロが86分に決勝点を決めて、勝ち点3を手にした。

 今シーズンの大逆転劇と言えば、2016年12月10日に行われたデポルティーボ戦だ。1-2と1点をリードされていたが、84分に同点にすると92分にセルヒオ・ラモスが決めて、勝利した。その1週間前にバルセロナの本拠地・カンプ・ノウで行われた“エル・クラシコ”でも90分にセルヒオ・ラモスが決め、1-1の引き分けに持ち込んでいた。

劇的ゴールを決めたセルヒオ・ラモス [写真]=Getty Images

 最近10試合でも第25節ラス・パルマス戦では86、89分にクリスティアーノ・ロナウドが立て続けに2得点を決めて、敗戦を引き分けにし、第27節ベティス戦ではセルヒオ・ラモスが81分に2-1となる決勝点を決め、第33節スポルティング・ヒホン戦では90分にイスコがミドルシュートを叩き込み、2-3で劇的に勝利した。そして前記したようにバレンシア戦でも終了間際の決勝点で勝った。

 土壇場で決勝点をこれだけ決められるのは、もはや運という言葉では片付けられない。白いユニフォームの身にまとう伝統だ。自分たちの力を最後の最後まで信じ切れる勝者だけが持つことができるスピリットだ。

 勝者の伝統は、バルセロナも徐々に身につけつつある。チャンピオンズリーグ準々決勝のパリ・サンジェルマン戦(6-1)での逆転や第33節の“エル・クラシコ”(2-3)がその最たる例だ。特に“エル・クラシコ”での3点目は、ゴール前に飛び込んだFWではなく、サイドバックが後方から走り込んできたメッシに落ち着いてマイナスのクロスというバルセロナの典型的なスタイルでの得点だった。土壇場でも自分たちのスタイルを貫き得点を奪ったシーンに従来とは違うバルセロナの姿が見て取れた。今シーズンのバルセロナはビックマッチでは最後まで結果がひっくり返るかもしれないという期待感がある。だが、残念ながらレアル・マドリードのように毎試合、その雰囲気を醸し出し、本当に結果を出すところまでには達していない。パフォーマンスの波は大きい。

 残り3節。勝者の伝統を身にまとうレアル・マドリードは順延されているセルタ戦を含め残り4試合で取りこぼしはしないだろう。取りこぼす可能性が大きいのは、むしろバルセロナだ。はたしてバルセロナは真の意味で勝者のスピリットをユニフォームに縫いつけられるのか。もしレアル・マドリードに競り勝ち、リーガ3連覇となれば、いよいよ白いライバルクラブだけにあった伝統をバルセロナも持つことになるかもしれない。

文=座間健司

SHARE

LATEST ARTICLE最新記事

SOCCERKING VIDEO