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積極補強のバルサとは対照的 レアル、“静かな夏”は自信の表れか

2016.09.08

今夏の移籍市場では大きな補強を行わなかったレアル・マドリード [写真]=Anadolu Agency/Getty Images

 2016年夏の移籍市場において、リーガ・エスパニョーラのクラブで最もお金を使ったのは、バルセロナだった。昨シーズン、リーガとコパ・デル・レイの2冠を達成したバルセロナだが、各ポジションに若く代表歴のある選手を揃え、チームを強化。スペイン紙『マルカ』の報道によれば、今夏は1億2300万ユーロ(約140億円)の出費となった。チャンピオンズリーグ(CL)を含めて3冠を達成した後の2015年夏は5600万ユーロ(約64億円)だったので、今夏は2倍使ったことになる。

 次に大枚を叩いたのは、アトレティコ・マドリードで約8000万ユーロ(約91億円)、日本代表MF清武弘嗣所属のセビージャが5400万ユーロ(約62億円)、ビジャレアルが5000万ユーロ(約57億円)と続き、移籍市場で例年のように主役だったレアル・マドリードは、5番目にやっと登場する。

 レアル・マドリードが今夏に移籍金を支払って補強したのは、ユヴェントスから買い戻したスペイン代表FWアルバロ・モラタだけ。2014年夏に2000万ユーロ(約23億円)で売却した選手を、契約書にあったオプションを行使し、3000万ユーロ(約34億円)で買い戻した。ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド、フランス人FWカリム・ベンゼマがいない間にジダン監督の信頼を積み重ねているスペイン代表MFマルコ・アセンシオは、レンタル先のエスパニョールから戻ってきただけで、コストはかかっていない。

 今夏はフランス代表MFポール・ポグバ(ユヴェントスからマンチェスター・Uへ移籍)、アルゼンチン代表FWゴンサロ・イグアイン(ナポリからユヴェントスへ移籍)など、天文学的な移籍金額で過去の記録も塗り替えられたが、レアル・マドリードが世界中の視線を集めることはなかった。スペイン最大の建設会社を牛耳る敏腕経営者であるフロレンティーノ・ペレス会長は、“ウンデシマ”(11度目の意味=CLの優勝回数を指す)を達成したチームを変革する必要はないと判断した。マドリード寄りのスペイン紙『マルカ』や『アス』も声高に戦力強化、スターの獲得を訴えず、『マルカ』紙は「最近20年で最高のレアル・マドリードの陣容は?」というお題でインターネットアンケートを行い、「3万682票の内27.98パーセントが今シーズンのメンバーがベストだと投票した」と報じた。マドリディスタは、今のメンバーに満足していると喧伝する。

 レアル・マドリードは過去10シーズンにおいて、リーガ制覇がわずかに3回しかない。最後に勝ち取ったのは、2011-12シーズンだ。最大のライバルであるバルセロナは、同6度の優勝で、今シーズンは3連覇を狙う。リーガの戦績だけを見れば、マドリディスタは苦虫を噛み潰していてもおかしくないが、今夏はメディアを含め、静観した。タイトルを逃せば、「チームを強化し、戦犯を放出しろ」というのがビッククラブだが、レアル・マドリードにとって“静かな夏”だった。なぜならCLを制覇したからだ。

 マドリディスタは昨シーズンを成功と捉えている。リーガはラファエル・ベニテス監督の在任時に落とした勝点を埋めきれず、コパ・デル・レイは「失格」で敗退した。しかし、ジネディーヌ・ジダン監督が就任してからは敵地での“クラシコ”に勝利し、リーガでは最終節までバルセロナに喰いつき、欧州王者に輝いた。新シーズンも主力を欠きながら、アセンシオらの活躍でUEFAスーパーカップを勝ち取っており、ペレス会長を含むマドリディスタは、今の指揮官、メンバーを絶対的に信頼している。“静かな夏”を過ごしたレアル・マドリードだが、それは彼らの自信の表れなのかもしれない。

■リーガ・エスパニョーラ 2016年夏の補強費トップ10

1位 バルセロナ
 1億2300万ユーロ(約140億円)/前年:5600万ユーロ(約64億円)
2位 アトレティコ・マドリード
 8000万ユーロ(約91億円)/前年:1億1700万ユーロ(約134億円)
3位 セビージャ
 5400万ユーロ(約62億円)/前年:2600万ユーロ(約30億円)
4位 ビジャレアル
 5000万ユーロ(約57億円)/前年:4070万ユーロ(約54億円)
5位 レアル・マドリード
 3000万ユーロ(約34億円)/前年:8500万ユーロ(約97億円)
6位 ベティス
 2050万ユーロ(約23億円)/前年:890万ユーロ(約10億円)
7位 レアル・ソシエダ
 1920万ユーロ(約22億円)/前年:2320万ユーロ(約27億円)
8位 エスパニョール
 1720万ユーロ(約20億円)/前年:150万ユーロ(約2億円)
9位 バレンシア
 1000万ユーロ(約11億円)/前年:1億3900万ユーロ(約159億円)
10位 マラガ
 900万ユーロ(約10億円)/前年:480万ユーロ(約5億円)

■リーガ・エスパニョーラ 2016年夏の移籍金トップ10

1位 アンドレ・ゴメス(バレンシア→バルセロナ)/3500万ユーロ(約40億円)
2位 ケヴィン・ガメイロ(セビージャ→アトレティコ・マドリード)/3200万ユーロ(約37億円)
3位 アルバロ・モラタ(ユヴェントス→レアル・マドリード)3000万ユーロ(約34億円)
4位 パコ・アルカセル(バレンシア→バルセロナ)3000万ユーロ(約34億円)
5位 ニコラス・ガイタン(ベンフィカ→アトレティコ・マドリード)2500万ユーロ(約28億円)
6位 サミュエル・ユムティティ(リヨン→バルセロナ)2500万ユーロ(約28億円)
7位 リュカ・ディニュ(パリ・サンジェルマン→バルセロナ)1650万ユーロ(約19億円)
8位 シメ・ヴルサリコ(サッスオーロ→アトレティコ・マドリード)1600万ユーロ(約18億円)
9位 ロベルト・ソリアーノ(サンプドリア→ビジャレアル)1500万ユーロ(約17億円)
10位 ヤスパー・シレッセン(アヤックス→バルセロナ)1300万ユーロ(約15億円)
10位 ニコラ・サンソーネ(サッスオーロ→ビジャレアル)1300万ユーロ(約15億円)

文=座間健司

By 座間健司

フリーライター&フォトグラファー。フットサルとサッカーを中心にスペインで活動中。

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