レアルは2日に敵地でバルサとのクラシコに臨む [写真]=Getty Images
――今日の試合はクラシコのリハーサルと言えるのではないですか?
セビージャに大勝(4-0)した20日(第30節)の試合後、記者に質問されるとジネディーヌ・ジダン監督は「いつもの通りその時点でのベストメンバーを使う」とかわした。監督がスタメンを明かせるわけがない。が、この日の11人がベースとなり出場停止だったセルヒオ・ラモスを加えた以下のメンバー、GKケイロル・ナバス、DFダニーロ、ラファエル・ヴァラン、S・ラモス、マルセロ、MFルカ・モドリッチ、カゼミーロ、トニ・クロース、FWギャレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウドが先発するのは確実なように思われる。今のレアル・マドリードにはセビージャ戦の笑顔と1週間前のラス・パルマス戦の苦い顔の2つの顔があり、笑顔でクラシコを終えたいならなるべく顔ぶれを変えないのが道理だからだ。
前回の大敗したクラシコ(0-4)ではベストメンバーで臨んだわけではなかった。ラファエル・ベニテス前監督はそれまで重用し、結果を出していたカゼミーロを外してイスコを起用。スタメン11人による初試合がクラシコ、というサプライズは完全に裏目に出たのだった。近年のクラシコはサプライズの歴史である。ジョゼ・モウリーニョが、カルロ・アンチェロッティが、ラファエル・ベニテスが、スタメンの顔ぶれやシステムをいじって優位に立とうとした。その裏にあるのは、S・ラモスやペペの中盤起用が象徴するようにバルセロナへの劣等感である。特別な対策を取らなければやられる、という危機感が監督を奇策に走らせ、結果的にチームの混乱と攻守バランスの破たんを招いたのだった。
これに対して今回のジネディーヌ・ジダンにはサプライズにすがる理由がない。優勝争いのプレッシャーからはすでに解放されており、良い意味で捨て身で試合に臨める。これはホームに宿敵を迎える首位チームのルイス・エンリケ監督も同様。バルセロナも現時点のベスト、GKクラウディオ・ブラボ、DFダニエウ・アウヴェス、ジェラール・ピケ、ハビエル・マスチェラーノ、ジョルディ・アルバ、MFイヴァン・ラキティッチ、セルヒオ・ブスケツ、アンドレス・イニエスタ、FWリオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールをぶつけて来るだろう。
勝敗の分かれ目は、レアル・マドリードがどれだけ前でボールを奪えるかで決まる。
前回のラファエル・ベニテスのプランは「ハイライン&ハイプレス」だった。つまりDFラインを上げ前からプレスをかけ、選手間の距離を縮めチームをコンパクトに保って、バルセロナのパスコースを失くしてミスを誘って、ショートカウンターに出る、というやり方だ。このプランは前節ビジャレアルが苦戦させたように今やリーガではバルセロナ対策のスタンダードであり間違っていなかったのだが、監督の指示に選手が従わなかった。3トップもイスコも守備に戻らず、バルセロナに自由にボールを回され、怒りに任せた単発のプレスは簡単にかわされた。
レアル・マドリードは構造的にビジャレアルのような組織的なサッカーはできない。ベイル、ベンゼマ、C・ロナウドにプレスに従事させることは守備のプラスよりも攻撃のマイナスの方が大きくなるリスクがある。では、彼らがハイライン&ハイプレスを実行するにはどうすればいいか? 運動量とアグレシッブさで上回るしかない。走ればコンパクトになるし足を入れればボールを奪える。組織で勝てないのなら個の1対1で勝つしかない。そのためにはレアル・マドリードの選手のモチベーションが極限にまで上がっていなければならない。怒りと意地を見せなければならない。
バルセロナにとってはイスコが守りを放棄し、モドリッチとクロースが右往左往した前回よりは、中盤を支配するのは苦労するだろう。アンカーとしてCB2枚の前にカゼミーロが控えていることでモドリッチもクロースも前寄りの位置で広いスペースをカバーできている。とはいえ、メッシがいつものように中盤まで下がればバルセロナの4対3の数的有利となるわけで、レアル・マドリードにとってはベイルがどこまで意欲的にポジションを下げるかが鍵となる。もしレアル・マドリードの気持ちが切れたら、その時点で試合終了である。思い出してほしい。前回の大敗劇にメッシはほとんど関与していない。途中交代で入った時にはすでにスコアは0-3だったのだ。そのメッシが今回は絶好調で、バルセロナは公式戦39試合の無敗記録を更新中……。選手たちがどこまでエンブレムに誇りを持ち、ジネディーヌ・ジダンを信じているかが明らかになる試合だと思う。
(文=木村浩嗣/記事提供=WOWOW)
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