2015.12.06

リーガで成功する初の日本人へ…“守備ハードル”をクリアし始めた乾貴士

乾貴士
レアル・マドリード戦に先発出場したエイバルMF乾貴士(左) [写真]=Getty Images
日本とスペインでの指導経験から「育成」を主軸にマルチに活動するサッカージャーナリスト

 エイバルのMF乾貴士が11月29日に行われたリーガ・エスパニョーラ第13節のレアル・マドリード戦で4試合ぶりに先発しフル出場を果たした。試合はアウェイのレアル・マドリードがギャレス・ベイルとクリスティアーノ・ロナウドのPKによって0-2で勝利したものの、翌30日の『マルカ』紙の採点で乾はチームトップとなる「6.5」の高得点(10点満点)を付けられ、「ボレーシュートやパスなどエイバルでは最も目立つ選手だった。(ホセ・ルイス)メンディリバル監督のチームの質(の高さ)を証明していた」という寸評を受けていた。

 ただし出場8試合で未だノーゴールというのは30万ユーロ(約4000万円)とはいえクラブ史上最高額となる移籍金で加入した外国人選手の序盤戦としては物足りない。また、この試合で同じサイドハーフのケコが累積警告による出場停止でなければ先発できていたかどうかもわからない。

 レアル・マドリード戦を中継したWOWOWではハーフタイムに解説を担当した城彰二氏による乾のインタビュー映像を流した。短時間ながら興味深い発言の多いインタビューだったので是非多くのサッカー関係者に見てもらいたい内容だが、城氏からメンディリバル監督から求められていることについて聞かれた乾は「今の監督はとにかくチームのためにやる選手が好きなので、その辺はしっかりやらないといけない」と答えた。

 このレアル・マドリード戦の前に乾が先発出場したのが第9節のバルセロナ戦で、カンプ・ノウに乗り込んだエイバルは開始10分に先制しながらもルイス・スアレスのハットトリックで3-1と逆転負けを喫した。それ以降、3試合続けて先発落ちとなった乾だが、「何もできなかった」「悔しかった」と漏らしたバルセロナ戦の乾は守備面でまだエイバルでサイドハーフの先発を確約されるほどのパフォーマンスではなかった。

 例えば1-1で折り返すことに成功した前半のエイバルはバルセロナをかなり苦しめたのだが、決定機にこそつながらなかったが乾がマッチアップするバルセロナの右サイドバック、ダニエウ・アウヴェスの上りについていかない(いけない)シーンが4回あった。うち1回は、エイバルの左サイドバックであるダビド・ジュンカが自分のエリアに入ってきたD・アウヴェスをつかまえて対応したが、本来であれば乾からジュンカに対してマークを受け渡すコーチングないしアクションが必要だった。

 30分以降は両チームの素早い攻守の切り替えによるスピーディーな展開に対して肉体以上に頭のインテンシティーが下がってしまい、攻守両面でチームメイトからワンテンポ遅いアクションを起こす場面が目立っていた。とはいえ、バルサ戦での乾は絶妙なポジションで常時2人以上の選手を引きつけていたイヴァン・ラキティッチへのパスコースを切りながら、ビルドアップにおける展開をマッチアップするD・アウヴェスに誘導することを目的とした守備の中間ポジションがきちんと取れていた。よって、チームにとっての「穴」とまではなっていなかった。

 日本では「テクニシャン」としてドリブルやボールタッチを評価されることの多かった乾だが今はまだ頭と身体に対する守備面での負荷が高く、彼本来の攻撃能力を発揮するまでには至っていない。しかし、欧州で5シーズン目を迎えるだけあって、守備戦術の高さは欧州の中でも屈指のリーガの舞台で出場10試合にも満たない乾がスタート地点に立つために必要最低限やるべき守備タスクを試合毎にこなせるようになっている点は「リーガで成功する初の日本人」という大きな期待を抱かせてくれるものだ。裏を返せば、スペインで日本人が成功するためには高い守備ハードルをきちんとクリアできなければいけないということなのだ。

文=小澤一郎

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