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シティ、終盤戦の見どころは来季のメンバー争い? “師弟コンビ”誕生で戦術も多彩に

2020.06.16

[写真]=Getty Images

 マンチェスター・Cのファンは、コロナ禍による自粛期間中に何度も感情を揺さぶられた。ある者は、熱狂的ファンで知られる元オアシスのリアム・ギャラガーと同じく、漏洩した来シーズンのユニフォームデザインを糾弾した。特にサードユニのペイズリー柄に納得いかないようだ。

 またある者は、カレンダーを開いて6月第2週の3日間に赤い丸をつけた。UEFAに言い渡された2年間のチャンピオンズリーグ(CL)出場停止処分について、スポーツ仲裁裁判所で聴聞会が開かれた日だ。1年の減刑が有力視されるが、結果は7月まで出ないだろう。これでしばらくはサッカーに専念することができる。

 再開初戦はアーセナルと戦う。シティにとって、0-2の屈辱を味わった3月のマンチェスター・ダービー以来となる公式戦だ。そのユナイテッド戦で早くも今シーズン7敗目を喫したシティは、ペップ・グアルディオラ体制でのワースト記録を打ち立ててしまった。しかも、現在2位とはいえ、首位リヴァプールに25ポイント差をつけられている。再開後の目標は自ずとカップ戦に絞られるだろう。

 シティのファンサイトで記者を務めるジョー・バターフィールドはこう話す。「ファンの間にも変な空気が漂っている。プレミアリーグのタイトルには手が届かないと分かっているから、リーグ戦に力が入らないみたいだ。一番の関心はカップ戦にある。CLは特にそうだ」

 昨シーズン、国内3冠を達成したシティは、すでに今シーズンもリーグカップを制しており、FAカップでも勝ち残っている。そして8月には、CLのファイナルステージが開かれる見込みだ(リスボンでの集中開催が濃厚と報じられている)。

マンチェスター・C

アストン・ヴィラを2-1で下し、リーグ杯3連覇を達成した [写真]=Getty Images

 1990年代にシティで活躍し、現在はクラブアンバサダーを務めるポール・レイクもCLに照準を合わせるべきだと言う。そう考えると、残りのリーグ戦は「CLまでの予行練習」という位置付けになりそうだが、レイクは「ペップはそういうやり方をしない」と続ける。

「すべての試合でベストを求めるのが、彼のやり方だ。選手は練習から高いクオリティとインテンシティを求められる。ポジション争いをする彼らは、一瞬たりとも気が抜けないんだ」

 マンチェスターに生まれ、シティ一筋で育ったレイクは、結果だけでなく若い才能にも期待する。なかでも生え抜きのMFフィル・フォーデンとスペイン人DFエリック・ガルシアをもっと見たいと話す。「来シーズンのメンバー争いという視点からも注目したい。フィル・フォーデンにダビド・シルバの後継者が務まるかが楽しみだ」

 若手の成長を含め、終盤戦のカギとなるのは監督の采配だ。CL出場禁止処分がどういう決着を見るか分からないため、とりあえずは4位以内の確保も重要になる。肝心のペップはというと、チームが再始動する直前までスペインで過ごしていた。今回のコロナ禍で母を亡くした彼は、故郷のバルセロナでロックダウン生活を送っていたのだ。心に傷を負った状態でシーズンを戦うのは簡単なことではない。だが、彼には強い味方がいる。昨年末にアーセナルの監督に就任したミケル・アルテタの後任としてアシスタントコーチに就いたフアン・マヌエル・リージョである。ヴィッセル神戸を率いたこともあるリージョは「4-2-3-1」の生みの親として知られ、ペップの恩師でもある。

リージョ

リージョが教え子ペップとタッグを組むことに [写真]=Getty Images

 二人にはこんなエピソードがある。ペップはバルセロナの選手だった1990年代に、対戦相手のレアル・オビエドの控え室のドアをノックし、敵チームを率いていたリージョのもとへ歩み寄った。そして「あなたのチームが大好きです。いろんな噂を聞いています。友達になってくれませんか?」と頼んだという。

 さらに現役最後の2005-06シーズンには、リージョが監督を務めるメキシコのドラドス・シナロアで半年間プレーしている。リージョは過去のインタビューで「練習のあと、毎日のように戦術やプロ意識について何時間も語り合った」と、ペップとの日々を振り返っている。

 積極的に声を出し、時にはペップと熱い戦術論をぶつけ合ったアルテタの不在は少なからずチームに影響を与えたと思う。しかし、こうして恩師リージョが加わったことで、再開後のシティには戦術のバリエーションを期待できるはずだ。

 さて、残りのゲームはすべて無観客となり、夏の過酷なコンディションも避けられない。これらの悪条件は、意外とシティには有利に働きそうだ。彼らのポゼッションサッカーにブーイングを送る敵はいないわけだし、気温が上がれば上がるほど、支配率の高いチームが有利になる。

 そんな奇妙な雰囲気の中で行われる試合について、レイクは違った楽しみ方もあるとDAZNの視聴者にメッセージを送る。「試合中は選手たちの声が聞こえるだろう。そうなると、ピッチ上での真のリーダーが見えてくる。ケヴィン・デ・ブライネなのか、ダビド・シルバなのか、はたまたケガからの復帰を目指すアイメリク・ラポルテなのか。誰が主役になるのか楽しみだ」

 再開後は、進化を遂げたシティの戦術とリーダーシップに注目したい。

文=サイモン・ハート
翻訳=田島 大(Footmedia)

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