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プレミア終盤戦も“ヤング・ブルーズ”は全員がアピールを続けるのみ!

2020.06.15

プレミアリーグ4位につけるチェルシーの終盤戦の戦い方は…? [写真]=Getty Images

 今シーズンのチェルシーは、「ヤング・ブルーズ」と呼ばれる。元MFとしてはクラブのレジェンドだが、監督としてはプレミアリーグ初挑戦のフランク・ランパードは、若手の起用に積極的だ。

 プレミアでの初采配は敵地でのマンチェスター・U戦(0-4)だったが、いきなり、約8年ぶりにクラブ史上最年少となる平均年齢25.6歳のイレブンをピッチに送り出した。

 チャンスをつかんだ若手の代表格は、原稿執筆時点で22歳のタミー・アブラハムと21歳のメイソン・マウントだ。前者はU-8年代からチェルシーで育ったナンバー9で、アカデミー時代からチームメイトの後者は、指揮官が「単なる10番以上」と評する得点能力の高いMFだ。

 第12節クリスタル・パレス戦(2-0)では、ケガで出遅れたリース・ジェームズ(20歳)が初先発を経験。スピードに乗ったクロスが光る右SBを含むスタメンは平均24.3歳と、プレミアリーグでのクラブ史上最年少記録を更新した。辛口解説で知られるロイ・キーンが、「すべてを備えたMF」と絶賛するビリー・ギルモア(18歳)のプレミア初先発は、リーグ中断直前の第29節エヴァートン戦(4-0)で訪れた。

 4-3-3の基本システムも、攻めの基本姿勢も、マウリツィオ・サッリ前体制下と変わらないが、チームの攻撃には躍動が加わっている。パス自体のスピードが上がり、一気の「縦1本」も織り交ぜる新体制下では、ファンにも不評だった“遅攻”が影を潜めた。

 同時に、昨シーズンは前監督の「お気に入り」としてホームゲームでブーイングまで浴びたジョルジーニョは、スタンドから名前を連呼される人気者となった。中盤中央で横パスに終始するのではなく、高精度のロングパスをはじめ、まずは前方へのパスを狙う本来の持ち味がコンスタントに発揮されるようになったからだ。

 ただし、チームとしては不安定なパフォーマンスという問題も抱えている。例えば、アウェイでの第18節トッテナム戦は、相手監督のジョゼ・モウリーニョの意表を突く3バックの奏功からして、今シーズンのベストゲームと呼べる完勝(2-0)だったが、その前後のボーンマス戦(0-1)とサウサンプトン戦(0-2)で敗れている。いずれも、下位チームとのホームゲームだ。順当に勝利を収めていれば、1つ上のレスターに代わるリーグ3位でシーズン再開を迎えることができていた。

 もっとも、若さ故の問題は指揮官自身が覚悟の上だろう。攻撃姿勢の裏返しで、第29節終了時点でトップ6最多の39失点という守備の課題にも同じことが言える。ハイラインの果敢なスタイルと若手登用のスタンスは、監督1年目だったダービー・カウンティ(2部)での昨シーズンも確認されたランパードのポリシーだ。

 最終順位を意識して曲げる必要もない。昨夏の移籍市場では補強を禁じられ、FIFAによる処分が半減されたあとの今年1月も戦力を買わなかったチェルシーでは、トップ4圏外に終わっても、フロントがランパード体制1年目を「失敗」とみなすことはない。逆に、チャンピオンズリーグ出場圏の4位以内を維持すれば、それは例年のような「ノルマ達成」ではなく、「期待以上」と理解される。チームには、ケガにより2月から戦列を離れていた19歳のカラム・ハドソン・オドイと、開幕から欠場が続いていた24歳のルベン・ロフタス・チークという、生え抜きの攻撃タレント2名も戻る。

今季チーム内でリーグ得点ランキング1位のアブラハム(右)と2位のマウント(左) [写真]=Getty Images


 
 あえて再考を求めるとすれば、GKの人選だろうか? ケパ・アリサバラガには売却の噂が絶えないが、リーグ戦では前節が5試合ぶりだったゴールマウスに再開後も立つ資格はある。その前のリーグ戦4試合で7失点を喫したウィリー・カバジェロが、安定感で勝るとは思えない。

 一方、信頼されている若手はアピールを続けるのみ。リーグ戦13得点のアブラハムも、ライプツィヒに所属するティモ・ヴェルナーの獲得が濃厚とされるなかで、主砲の座は安泰とはほど遠い。

 アブラハムと同世代のクリスティアン・プリシッチには、再開後の本領発揮が望まれる。昨シーズン中に移籍が決まっていた今シーズン唯一の新戦力は、前線アウトサイドを持ち場に、ハットトリックを達成した第10節バーンリー戦(4-2)から、3試合連続のリーグ戦先発で5得点とリズムに乗り始めた。

 だが結果的には、外転筋の負傷で2カ月以上も戦力になれないまま、リーグ中断となった。来シーズンからは、アヤックスのハキム・ツィエクという新たな競争相手の加入が決定している。尻つぼみの移籍1年目は避けたいところだ。
 
 若い集団では、経験豊かなベテラン勢の存在も軽視できない。特に、31歳のウィリアンは在籍7年目も、鋭い緩急から瞬時に送るクロスやラストパスの威力は健在。今シーズンのリーグ戦でのチャンス創出は28試合でチーム最多の51回を数える。

 3年間の契約延長を望む彼には、今シーズン完結後にフリーでの移籍が見込まれるが、チームの年間最優秀選手としてチェルシーでの最終シーズンを飾る可能性は残されている。再開後も存在感を示して現実となれば、“プレミア1年生”が多いブルーズのトップ4フィニッシュも実現しているはずだ。

文=山中 忍

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