2019.08.10

幕が上がる“二冠”への戦い…プレミア王者・マンCに死角はあるのか?

[写真]=Getty Images
「フットボール」と「メディア」ふたつの要素を併せ持つプロフェッショナル集団を目指し集まったグループ。

 昨シーズンの開幕前、誰もが口を揃えて言っていた。「プレミアリーグでは、10年間も連覇するクラブが現れていない」と。だからリーグ連覇は一筋縄ではいかないと。選手や監督自身でさえ、まるで自分たちに言い聞かせるかのように、「優勝することと連覇は別物」と説いていた。その言葉通り、優勝争いは最終節までもつれたのだが、蓋を開けてみればやはりシティが栄冠を手にしていた。


 イングランドのトップリーグ130年の歴史において、3連覇したクラブは過去に4つしかない。だから3連覇は至難の技だと説くことができる。シティ包囲網が敷かれて彼らは苦しむはずだと。だが、そもそもシティは2017-18シーズンに“前人未到”の勝ち点100を稼いだチームである。だから3連覇しても驚きではないし、むしろ史上初の4連覇に期待すべきなのだ。

リーダーの不在は痛手になるのか?

キャプテンとして一時代を築いたコンパニはチームを去ったが… [写真]=Getty Images

 無論、2年先まで結果が分かってしまったら退屈極まりないので、無理やりにでも彼らの粗を探そう!

 主将であり精神的支柱だったDFヴァンサン・コンパニの退団は影響しないだろうか? 近年のコンパニは怪我の影響で出場機会が限られ、戦力としては貢献していなかった……とは絶対に言わせない。確かに一昨シーズンは精彩を欠くシーンも見られたが昨季は違った。何人たりとも通さない威圧感が戻り、高いDFラインを保ちながらボールを弾き返していた。何より、第37節のレスター戦で勝利を呼び込んだロングシュートが全てを物語っている。引き分けたら優勝を逃すような緊迫した状況下で、チームメイトに「打つな」と止められながら長距離砲を叩き込んで見せたのだ。昨季のシティとリヴァプールとの差は、直接対決時のボールがゴールライン上に重なった「11mm」と言われたが、個人的にはコンパニの「30m弾」が優勝の決め手だったと思う。

 だからキャプテンシーは不安要素だ。控え室で発言力があったMFファビアン・デルフまでも移籍してしまったのだ。もちろん頼りになるダビド・シルバは健在だ。だが昨季も腕章を巻くことがあったシルバは、確かに全選手から愛されているが仲間を鼓舞するような迫力に欠ける。とはいえ、シティにはMFケヴィン・デ・ブライネがいる。「自分はコンパニより気楽なタイプ」と認めつつ、リーダーの自覚があると明かしている。彼は誰とでも率直に意見交換するし、何より勝利に貪欲なところは同胞のコンパニに通ずる。そもそも今のシティが、「リーダーシップの不在」を痛感するような窮地に追い込まれるとは考えにくい。

適材適所の補強と好調なデ・ブライネ

フェルナンジーニョの後継者としてロドリを獲得。適材適所の補強でチーム力はさらにアップ [写真]=Getty Images

 戦力に関しては、故障の多い左SBと、MFフェルナンジーニョの後継者という課題がクリアされたので死角はないだろう。7000万ユーロ(約85億円)という大金でアトレティコ・マドリードから連れてきたMFロドリは、加入早々にファンを喜ばせた。シンプルで的確なプレーもそうなのだが、流暢な英語を披露してファンを笑顔にさせたのだ。新戦力が即座にペップのサッカーに馴染むことは皆無に等しいが、ロドリの知性とコミュニケーション能力ならば期待ができる。そしてロドリが中盤に君臨することで、昨季も何度か試したが、34歳になったMFフェルナンジーニョをセンターバックで起用できるのだ。さらに左SBには、度重なる怪我で計算が立たないメンディのバックアップとしてアンヘリーニョがクラブに戻ってきた。

 加えてプレミアリーグの移籍市場閉幕前日には、ユヴェントスにダニーロと2800万ユーロ(約33億円)を差し出し、超攻撃的右SBのジョアン・カンセロをトレードで獲得。適材適所の補強を敢行し、新シーズン開幕を前にチーム力はさらに強化された。

 何より楽しみなのは完全復活したデ・ブライネである。昨季は怪我の影響でリーグ戦2アシストに留まったが、今夏のプレシーズンでは低い位置からのロングスルーパスなど、右足から変幻自在なキックで決定機を演出している。

「プレミア」と「CL」の両立は…

CL制覇が悲願のマンCだが、グアルディオラ監督は常に「CLのレベルは特別だ」と言い続けている [写真]=Getty Images

 さらにシティの追い風となるのは新ルールだ。自陣ボックス内でゴールキックをつなげるルールにより、ビルドアップの幅が広がっている。そして何より、今季からプレミアでも導入されるVARである。昨季のチャンピオンズリーグ準々決勝のトッテナム戦では、そのVARに泣いたのだが、基本的にVARは“間違った結果”を減らすためのものだ。精密機器のようなプレーを繰り広げるシティにとっては心強い味方になるはずだ。ただし、これでラヒーム・スターリングのPK獲得数が増えるか減るかは、少し見守るしかないだろう。

 いずれにせよ、シティがいるからこそ、プレミアリーグでは欧州王者でさえ本命にならないのだ。だが同時に、この“欧州王者”のタイトルこそシティを惑わす霧かもしれない。グアルディオラ監督は常に「CLのレベルは特別だ」と言い続けている。そして過去2シーズンは変に意識しすぎるあまり、策に溺れた感は否めない。リヴァプールやトッテナムという勝手知ったる相手を警戒し、わざわざメンバーを弄ったことでしっぺ返しを食ったのだ。

 2021年夏までの契約となっているペップは、退任するまでにクラブ史上初となるCL制覇に固執するだろう。プレミアリーグの38戦だけならばシティが優勝するはずだ。だがシティは、否が応でもCLや他のカップ戦で勝ち上がってしまう。そうなると、若干だが選手層というか選手数で上回るリヴァプールにもチャンスが出てくる。その分リヴァプールは、クラブW杯という負担があるのだが。

 シティは、二冠も可能だし、昨シーズン同様に三冠も狙える。ただし「プレミア」と「CL」の両立は永遠の課題だ。CLで――無理な要求かもしれないが――イングランド勢と当たることなく勝ち上がれれば、もしくは……。

文=田島大(フットメディア)

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