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【コラム】セスク、我慢でつかんだチェルシーでの居場所は「ピルロ役」?

2017.03.08

新たな定位置を掴みつつあるセスク [写真]=Getty Images

 チェルシーを率いるアントニオ・コンテ監督が魔法を吹き込んだ「3-4-3」システムは、エデン・アザールやダヴィド・ルイスを甦らせ、ヴィクター・モーゼズを新たなスターに仕立てあげた。ただ、指揮官にキャリアを救われた選手たちがいる一方で、セスク・ファブレガスはずっと“蚊帳の外”に置かれていた。3-4-3に舵を切った昨年10月の第7節ハル戦から、セスクは負傷の影響こそあったが7試合連続で出番がなく、中盤センターはエンゴロ・カンテとネマニャ・マティッチの指定席となっていた。圧倒的な走力で中盤全域をカバーし、抜群のボール回収力を見せるコンビが活躍するのを、セスクはピッチの外から眺めていた。

 しかし、セスクはわずかな出場機会の中で、必ず結果を残してきた。今季ここまでプレミアの先発は7試合のみ、出場時間も全体の3割程度にあたる749分間に過ぎないが、それでもペドロと並ぶチームトップタイ、リーグ全体でも6位タイの7アシストを記録しているのだ。90分あたりで計算すれば、アシスト数(0.84)とチャンスメーク数(3.48)は依然としてリーグ最高レベルである。

 過密日程によるターンオーバーで4度の先発機会を与えられた12月には、その全試合でゴールかアシストをマークした。3-1で勝利した第14節マンチェスター・C戦では美しいロングパスでジエゴ・コスタのゴールをお膳立て。第16節サンダーランド戦では機を見た攻撃参加からフランク・ランパード顔負けの正確なミドルシュートを決めて1-0の勝利に貢献。第18節ボーンマス戦(3-0)ではパスワークに絡んでペドロの先制点をアシスト。4-2の撃ち合いになった大晦日のストーク戦でも、CKとスルーパスで2つのアシストを決めた。年が明けるとFAカップ要員となったが、プレミアでも古巣アーセナル戦(3-1)で途中出場からダメ押しゴールを決めるなど、好調を維持し続けた。

 ここにきて、そんな我慢の日々が報われつつある。2月25日の第26節スウォンジー戦(3-1)で、コンテはマティッチをベンチスタートにしてセスクを先発に抜擢したのだ。「スウォンジーはコンパクトなプレーが主体だから、ラインとラインの間にスペースを探るのが難しいと予想した」という指揮官の意図に、セスクは見事なパフォーマンスで応えてみせる。19分、ボックス内の狭いエリアに侵入して先制点をゲットすると、1-1のスコアで迎えた72分には、相手の4バックと中盤の“ラインの間”に顔を出したペドロに絶妙なタイミングで正確な縦パスを通し、決勝点を演出。自身の記念すべきプレミア300試合目を、文句なしの1得点1アシストで飾ったのだった。

結果を残し続けるセスクに、コンテ監督も信頼を口にする [写真]=Getty Images

 直近の第27節ウェストハム戦でも、セスクは先発の座を守った。2-1で勝利したこの試合では失点に直結するボールロストもあったが、それ以上に注目すべきはコンテの采配だった。指揮官はペドロに代えてマティッチを投入した65分から、システムを「3-5-2」にマイナーチェンジしたのだ。パサーのセスクがアンカーに入り、守備的なカンテとマティッチが両脇を支える中盤の構成は、ユヴェントス時代にコンテがアンドレア・ピルロを生かしたそれと類似していた。

 思えば、2月上旬にコンテはこうコメントしていた。

「セスクはフットボールの天才だ。ピルロと同様に語ることができる。100メートルを10秒で走れなくても構わない。彼はボール扱いの天才で、判断力のスピードがあるからね」

 同時に、結果を出し続けるセスクに報いるための「戦術は用意してある」とも言っていた。ウェストハム戦のラスト30分で、コンテはそれを試したのかもしれない。

 移籍の噂が絶えないセスクだが、確実に潮目は変わりつつある。“セスク=ピルロ”の3-5-2をオプションにできれば、チェルシーの戦いは大きく幅が広がる。安定感は抜群でも攻め手を欠いて1-1のドローに終わった第25節バーンリー戦のように、攻撃のアイデアが必要になる局面はこれからも必ずやってくる。そんなとき、ライアン・ギグスに次ぎ、ランパードと並んでプレミア歴代2位タイとなる「102」ものアシストを積み重ね、ロングパス1本で戦況をガラリと変えられるセスクはチームの切り札となるはずだ。

 今シーズンの優勝に向けたラストスパート、そしてチャンピオンズリーグとの並走が待っている来季以降の戦いにおいても、“チェルシーのピルロ”は影のキーマンになってきそうだ。

(記事/Footmedia)

By Footmedia

「フットボール」と「メディア」ふたつの要素を併せ持つプロフェッショナル集団を目指し集まったグループ。

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