2017.03.07

【コラム】スランプに苦しむアーセナルのエジル、原因は「あのセントラルMF」がいないから?

エジルは今季、昨シーズンのようなプレーを見せることができずスランプに陥っている [写真]=Getty Images
「フットボール」と「メディア」ふたつの要素を併せ持つプロフェッショナル集団を目指し集まったグループ。

 メスト・エジルが不振のトンネルを抜け出せない。12月頃からすっかり輝きを失い、アーセナルが強豪相手の大一番に敗れる度、現地メディアには「どこにいたの?」「無気力」などと容赦ない批判の言葉が並ぶ。

 アシストとチャンスメークの両方でプレミアリーグのトップに輝いた昨シーズン、サポーターはこんなチャントを歌っていた。

「オレたちにはエジルがいる。お前らには理解できないだろうが、ジダンよりも上なんだぜ……」

 そんな彼らも、最近では「もうオレにも理解できないよ……」と悲しそうな顔で街頭インタビューに答えている。

 アーセン・ヴェンゲル監督は彼が「自信を欠いている」理由を特定するのは難しいとしつつも、ある仮説を立てている。

「サンティ・カソルラを失ってから彼は苦しんだ。カソルラは中盤の深い位置でプレッシャーをかいくぐり、前の選手に正しいタイミングで正確なパスを通せるからだ」

 カソルラは今季、開幕戦から第8節までセントラルMFのレギュラーとしてプレーしていたが、10月19日のCLルドゴレツ戦で負傷交代したのを最後に一度もピッチに立てていない。中盤のオーガナイザーであるカソルラの存在はアーセナルにとって極めて重要で、それは過去4シーズンのデータを紐解けばよく分かる。彼が出場したプレミア85試合で1試合平均「2.15ポイント」の勝ち点は、逆に欠場した55試合になると「1.67ポイント」に急降下する。そして、中でもカソルラ不在で悪影響を被るのが、トップ下のエジルなのだ。

 今季序盤戦、カソルラが健在だった第8節までに、プレミアで最も多くパスを交換したペアがカソルラとエジルだった(187本、うちカソルラからが113本、エジルからが74本)。1試合単位で見ても、第5節ハル戦(4-1)、第6節チェルシー戦(3-0)、第7節バーンリー戦(1-0)で両チームを通じて最も多く通ったのが“カソルラ→エジル”のパスだった。この手のデータは、自陣で余裕を持てる最終ラインが関与したパスが上位にくるのが普通で、セントラルMFから敵の密集地帯にいるトップ下への縦パスが最多となるのは極めて珍しい。

カソルラ(左)はエジル(右)を攻撃に専念させるために不可欠な存在だった [写真]=Getty Images

エジルの長所を最も引き出せるのがカソルラ

 今季、エジルはカソルラと一緒にプレーした公式戦9試合で6ゴールを挙げ、チームも8勝1分けと負けなしだった。リーグ戦に限っても、カソルラと一緒にプレーした490分間で3ゴールを挙げているが、カソルラ不在時は1376分間で2ゴールだけ。つまり、ファイナルサードをフラフラと動きながら相手守備陣の“ギャップ”を見つけ、ボールを受けて攻撃に転じるエジルの長所を、最も引き出せるのがカソルラの縦パスだったのだ。

 カソルラがいた頃のエジルは、時に1トップのサンチェスと同じくらい高いポジションを取り、相手ゴールに近い位置を主戦場にしていた。だが、カソルラ離脱後はボールタッチ数が減少し、焦れて深くまで引いてきてボールを要求する場面が増えた。これは中盤から適切なくさびのパスが入らなくなったからに他ならない(同じことはサンチェスにも当てはまる)。グラニト・ジャカ、フランシス・コクラン、モハメド・エルネニー、アーロン・ラムジーなど現チームのセントラルMFは多士済々だが、カソルラほどクレバーかつスムーズにボールを前へと運べる選手はいないのだ。

 もちろん、スランプの原因をカソルラ不在でゴールから遠ざかってしまったことだけに求めるのは乱暴だ。彼自身がオン・ザ・ボールでのパフォーマンスを上げ、オフ・ザ・ボールでもより多くの熱意や意欲を示し、攻撃をリードする姿勢を見せなければいけないのは事実だろう。

 ただ、エジルだけをスケープゴートにすると、チームが抱える構造的な問題を見逃してしまうのも事実。残念ながらカソルラは負傷した足首の回復が思わしくなく、今シーズン中の復帰は絶望的と報じられている。エジル自身のプレー内容と同時に、カソルラの穴を埋めるべきセントラルMFたちが司令塔をどうサポートするかに注目することで、今のアーセナルの本質が見えてくるかもしれない。

(記事/Footmedia)

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