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【インタビュー】解説者・平野孝が見たヴェンゲル監督…20年間、トップを走る名将の“人間力”とは

2016.04.19

 かつて自慢の左足を武器に数々のクラブを渡り歩いた元日本代表MF平野孝氏。現在はサッカー解説者や指導者として様々な場面で活躍している。そんな平野氏に名古屋時代の恩師でもあるアーセン・ヴェンゲル監督の“過去”と“現在”を、客観的な視点を持ちながら語ってもらった。そして平野氏が将来的に目指す“サッカー人”としてのあり方には、随所にヴェンゲル監督の掲げる“哲学”の影響が垣間見えた。

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インタビュー・文=細江克弥
写真=兼子愼一郎

■ヴェンゲルの指導はものすごくシンプル

――今日は解説者の視点で、平野さんの恩師とも言えるヴェンゲルさんのことを語っていただければと思います。

平野孝(以下、平野) 難しいこと言いますね~(笑)。

――その前に、まずは現役時代と解説者になってからの「サッカーの見方」の違いについて聞かせてください。

平野 現役時代は主にサイドの選手だったので、常にタッチラインを背にしてプレーしていました。視界は常に180度。サイドは“使われるポジション”だと思うので、「いかにうまく使われるか」に特化して考えていた気がします。でも、解説者としては、360度の視野を持ってサッカーを見ることが大切ですよね。だから、自分の経験にプラスするような形で、ボランチや司令塔のポジションの視界や感覚を持ちながらサッカーを見るようになった気がします。僕自身、それまでとは違う角度からサッカーを見ることで、とてもいい勉強になっていると思います。

――でも、やはりサイドの選手が気になるのでは?

平野 やっぱり、どうしても気になりますね。ただ、それが僕の個性でもあると思うので、解説者としての仕事にもうまく生かしたいと考えています。全体としては、相手に勝つためにどう戦うかという駆け引きを踏まえた“90分間の流れ”に注目しています。目の前の相手に勝つために、90分間という時間をどのようにマネジメントするか。そういうところに、サッカーの面白さが凝縮されている気がしますね。

――平野さんが清水市商業高(現・清水桜が丘高)を卒業してプロの世界に飛び込んだのは、日本プロサッカーの“元年”となった1993年でした。ヴェンゲルさんが名古屋にやって来たのは、3年目の1995シーズンでしたね。

平野 僕にとっては、プロとしての18年間のキャリアで最も印象に残っている監督です。サッカーはとてもシンプルで、ものすごく分かりやいというのが選手としての実感でした。ヴェンゲルさんは、選手個々のピッチ内での役割をかなり明確にするんですよ。1995年は開幕から6勝(PK勝3)10敗(PK敗1)という厳しいスタートだったんですが、中断期間中のフランス合宿では、ポジションごとに異なるトレーニングメニューを課すなどして個々の役割をはっきりさせました。で、帰ってからの10試合で9勝(笑)。トレーニングメニューを含めて、すごく印象に残っています。

――チームとしての急成長を体感されたんですね。

平野 トレーニングによって、ある程度のオートマティズムがいつの間にか刷り込まれる感じでした。「こうきたら、こう!」というのを感覚的に覚えてしまうので、迷いがなくなるというか。もちろん、攻撃の最後の部分は選手たちのアイデアに委ねられるんですけど、チームとしての土台がしっかりしているからとにかくプレーしやすい。チームメイトに対して「走っているかな?」ではなく「走っているだろうな」という感覚を持てるので、サッカーがスムーズで、安心感があって、すごく気持ちいいんですよ。

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■初日に見抜かれた心の内

――わずかな時間でチーム状態を改善したところに、ヴェンゲルさんのすごさを感じますね。

平野 おそらく、日本人の特徴をすぐに見抜いたんだと思いますね。それを踏まえて、選手が最高のパフォーマンスを出すために、日頃から選手の一挙手一投足を見ていましたし、一人の人間としても素直にリスペクトできる。いい監督って、考え方や伝え方がとてもシンプルであると思うんです。ヴェンゲルさんは常にオープンで、でも一定の距離感を保つ。そのバランス感覚が抜群にいい。ヴェンゲルさんの“ひとこと”で救われた選手は、たくさんいると思いますね。

――ヴェンゲルさんとの個人的な思い出はありますか?

平野 2000年は京都でプレーしていたんですが、降格してしまったんですね。チームに残るか、移籍するかを悩んでいる時に、シーズンオフを利用してヴェンゲルさんがいるロンドンのクラブを訪ねました。世界的なビッグネームがたくさんいる中で、2週間ほど一緒にトレーニングさせてもらったんです。

――元フランス代表のティエリ・アンリやオランダ代表で10番を背負っていたデニス・ベルカンプなど、そうそうたるメンバーがいた頃のチームですよね。

平野 そうそう(笑)。アンリは当時22歳で、僕は25歳だったかな。あれは本当に、宝物のような経験でした。その初日に、ヴェンゲルさんに言われたんですよ。「自分らしさがなくなっているぞ」と。きっと、僕が悩んでいることも分かっていたんだと思います。その言葉だけで、自分のプレーに関してハッと気づくことがたくさんありましたね。

――そうした経験も踏まえて、監督としてのヴェンゲルさんのすごさをどのあたりに感じていますか?

平野 やっぱり、人間性だと思いますね。誰に対しても態度を変えないし、サッカーに対する真摯さがものすごく伝わってくる。それから、冒険心も強くて、自分と違う考え方に対してもちゃんとリスペクトするというか……。

――ちなみに、怒られたことはありますか?

平野 一度だけ。冷静な感じで「次はないぞ」と言われたんですが、内心ではめちゃくちゃ怒っていることが分かったので二度と同じミスはしませんした(笑)。

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■サッカー観はブレていない

――ヴェンゲルさんがロンドンのクラブを率いて、今年で丸20年ということになります。これは本当にすごいことだなと思うのですが、解説者として、ヴェンゲルさんが率いる現在のチームについてどう思いますか?

平野 そうですね……ぜひモノ申したいことが、ひとつだけあります!

――おお!(笑)

平野 ケガ人が多すぎる! シーズンを通してヴェンゲルさんが考えるメンバー構成で戦うことができたら、間違いなく優勝すると思うんです。それができない状況を作り出しているのはケガ人で、それだけはヴェンゲルさんにモノ申したい(笑)。ヴェンゲルさんは単なる監督ではなく、なんでも自分でやってしまう人なので、ぜひそれについても早急に改善していただきたいなと。

――その勢いからすると、他にも言いたいことがあるのでは?

平野 ありません! あとはパーフェクト! むしろ年々良くなっていると思いますし、ヴェンゲルさんはクラブのほぼ全権を握る監督として、クラブハウスをプロデュースしたり、どんどん環境を整えていますから。クラブハウスではフランス人シェフが作るランチを食べられるんですけど、あれはもう、今まで僕が食べた中でナンバーワンのランチですね(笑)。

――なるほど(笑)。それにしても、20年間も同じクラブの指揮を執るというのはすごいことだと思うのですが、名古屋時代からの“変化”について感じられるところはありますか?

平野 もちろんその時代に対応したサッカーを表現していると思うんですが、昔からある“哲学”は変わらない気がしますね。そこはブレていないと思います。

――どういうところから感じられますか?

平野 あくまで主観ですが、名古屋時代は(ドラガン)ストイコヴィッチという絶対的なタレントを中心とするサッカーを作っていましたよね。おそらく、ヴェンゲルさん自身もストイコヴィッチから多くのことを学び、イマジネーションを刺激されたんだと思います。僕の感覚では、当時のストイコヴィッチは10年くらい先をいっていました。彼は右利きですが、当時から左サイドに流れることが好きで、左サイドにいた僕とカブることが多かったんです。

――あの時代は右利きは右サイド、左利きは左サイドというのが当たり前でしたが、今はむしろ“逆”が主流ですよね。ストイコヴィッチは、当時からその感覚を持っていたということですか。

平野 はい。おそらくヴェンゲルも彼に触発されて、ロンドンのクラブでは、アンリに同じプレースタイルを叩き込んだんだと思います。

――なるほど。アンリはイタリア時代は右でプレーしていましたよね。

平野 はい。彼はあのプレースタイルを体得したことで、一気にブレイクしましたよね。つまりヴェンゲルさんは、チームの軸になる選手を常に探し求めていて、それをベースとしてチームを作る。それから、サイドには機動力のある選手を置いて、センターバックとボランチでは“人に強い選手”と“足下の得意な選手”を組み合わせている。そういう部分は、今も全くブレていないですよね。

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■平野にとっての「理想のクラブ」

――お話しを聞いていると、平野さんがヴェンゲルさんから強い影響を受けていることが分かるのですが、例えば、ヴェンゲルさんのように、大きな権限を持ってクラブを作ることができたら、どんなクラブを作りたいですか?

平野 難しいなあ(笑)。サッカーって、本当にたくさんの人を惹きつけるスポーツじゃないですか。ヨーロッパに行くといつも感じますが、向こうでは本当に、サッカーが生活の一部として根付いている。そういう町作りを含めたクラブ作りに関わってみたいという思いはありますね。

――どんな役職に就きますか?

平野 僕はもう、どんな役職でもいいんです。ヴェンゲルさんみたいにすべてを見渡せるようなポジションもいいけど、GM(ゼネラルマネージャー)でも、地域担当のような立場でもいい。むしろいろいろな仕事をしてみたいという思いがありますね。サッカー文化を根付かせるためなら、なんでもやってみたいです。

――ちなみに、弱くてもOKですか?

平野 全く問題ありません(笑)。もちろん強いチームであることに越したことはありませんけど、それよりも大切なのは、その地域に暮らす人たちに心から愛されるクラブになること。僕は日本では有数のサッカーどころと言われる清水市(現・静岡市清水区)で生まれ育ったんですが、改めて振り返ると、あの町は僕が言う理想的な町の姿に近いのかもしれませんね。

――うーむ、なるほど。ホントにそうですね。

平野 そういう町作りを始めることができたら、きっと楽しいだろうなあ(笑)。その地域に暮らす人にとって、クラブに関わることが大きなステータスとなるような、そんな存在になれたら素敵ですよね。

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■ヴェンゲルさんのように……

――ところで、平野さんはこの4月からプロスポーツ界の経営を担う人材開発・育成を目的とするコースを受講されるとお聞きしました。

平野 お話ししたとおり、サッカーを通じた町づくりという分野に興味を持っていて、それを勉強してみたいという気持ちから受講することを決めました。子供の頃からサッカーをやってきて、少しでも恩返ししたいという気持ちが強いんです。だから、少しでも多くのことを学べたらいいなと。

――ヴェンゲルさんの影響も強いのでは?

平野 もちろんです。ヴェンゲルさんはイングランドのリーグで初めてのフランス人監督という状況からスタートして、あそこまでのクラブを作り上げ、地域にも受け入れられたわけですから。本当に前例のないことをやっていると思うので、そういうところに触発された部分は間違いなくあります。監督というより、人間としての魅力ですよね。彼のようにはなれなくても、勉強することはいくらでもできますから(笑)。

――具体的には、どのような勉強を?

平野 正直なところ、ピッチ外のことはほとんど何も知らないので、まずは“知る”ところからのスタートです。クラブがどのように運営されているのか、チケットがどのようにして売られているのか、そういう部分を学ぶことも大事ですよね。

――となると、どうしてもヴェンゲルさんのようにクラブ全体をマネジメントするようなお仕事をされることも期待してしまいます(笑)。

平野 いやいや、そこまでは(笑)。ただ、ヴェンゲルさんのように一人ですべてできないとしても、クラブを構成するいろいろな要素をマネジメントするというのは、すごく面白いでしょうね。元プロ選手として、ピッチ内のことだけでなく、ピッチ外のことにも積極的に関わることができたら、サッカーに対する見方も変わってくるんじゃないかと思います。

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■インタビューや『ウイクラ』情報が詰まった特集ページ

【特集ページ】ゲームの詳細はこちら
【第1弾】望月氏が語るヴェンゲル“経営編”はこちら
【第2弾】中西氏×戸塚氏が著書の舞台裏を明かす“ベンゲル・ノート編”はこちら
【第3弾】平野氏がヴェンゲル監督を分析した“解説者編”はこちら

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By 細江克弥

1979年生まれ。神奈川県出身。サッカー専門誌編集部を経てフリーランスに。サッカーを軸とするスポーツライター・編集者として活動する。近年はセリエAの試合解説などでもおなじみ。

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