2015.05.02

破産申請から奇跡の昇格へ…ボーンマス、創設125年で初のプレミア参戦が確定的に

プレミアへの昇格が確定的になり、喜ぶボーンマスの選手とサポーター [写真]=Getty Images
ロンドン在住のサッカーライター。

文=藤井重隆

 2008年、破産申請をしてイングランド4部へと降格し、その翌年にも再建の目途が立たずプロリーグからアマチュアへの降格の危機に瀕していたボーンマスが、たった6年でクラブ史上初となるプレミアリーグ昇格を手中に収めた(残り1試合で3位と勝ち点3差。得失点差で大量リードのため)。先に昇格を決めたワトフォードも2006年にプレーオフを経て昇格を決め、1年で再び2部へ降格して以来、来季8年ぶりにトップレベルでプレーする。

 今季の2部リーグは上位争いが終盤まで混戦状態だったこともあり、プレミアリーグと2部の間にできた格差が大きくなったことが指摘されている。この背景には2部のクラブにも適用されるようになったFFP(ファイナンシャル・フェア・プレー)ルールの存在もある。

 現に昨季2部で首位を快走し、優勝して今季プレミアリーグに昇格したレスターは、2位昇格のバーンリー、プレーオフ昇格のQPRらとともに2部へのとんぼ返りの危機に瀕している。逆に昨季の降格組(ノリッジ、フルアム、カーディフ)の中で、今季1部への返り咲きの可能性を残しているのは昨季18位で降格したノリッジのみだ。

 一方、昇格を決めたワトフォードが『実力が伴わない昇格』と言われる理由は、昇格争いを繰り広げた上位5チームを相手にした10試合の戦績が1勝6敗3分と負け越したことに起因する。シーズンを通して首位に立った回数も5回のみだったが、終盤戦にライバルチームが失速したため、『嬉しい誤算で手にした昇格』と言われても仕方がなかった。

 対照的に、ボーンマスへの賛辞の声が大きく聞こえるのは下馬評が低かった分、判官贔屓のファンや批評家から大きな期待が寄せられていたからだ。破産寸前を味わったゼロからの夢のサクセスストーリーはどんなファンにとっても前向きな話題だった。現役時代からボーンマスでプレーし、波瀾万丈に富んだクラブの変遷を現場で目にしてきたエディ・ハウ監督はまだ37歳。一躍メディアから脚光を浴びる時の人となっている。

「6年前、我々は崖っぷちに立っていたし、何もなかった。当時こんな成功は想像できなかったが、努力と投資が実を結んだ結果となった」とハウ監督が語ると、クラブ会長のジェフ・モスティン氏も「6年前、我々は奈落の底に立っていたが、そこからプレミアリーグへと這い上がってきた。ただただ信じられない。誰も予想しなかった不可能な成功を手にした」と喜びを爆発させた。

 財政難に瀕していた当時は路上でクラブ救済募金を行い、切手さえ買えないほど貧困だったことを明かしたモスティン氏は、ロシア人オーナーのマキシム・デニム氏の投資がクラブを救ったとし、「彼の力なしにこの夢の実現は不可能だった」と、激動の6年間を振り返った。

 ボーンマスの本拠地ディーン・コートの集客数は1万2000人とプレミアリーグ史上2番目に小さいスタジアム(最小はオールダムのバウンダリー・パークで1万638人) となる。ロシア人オーナーという響きは良く聞こえるが、チェルシーのように巨額の投資で補強などを行っているわけではない。

 現在、ボーンマスが支払った移籍金最高額は、昨年3部コベントリーから元U-21イングランド代表FWカラム・ウィルソンを獲得した際の300万ポンド(5億2000万円)となっており、その額は同時期にマンチェスター・Uがアルゼンチン代表MFアンヘル・ディ・マリアに支払ったイギリス移籍金史上最高額の5970万ポンド(約103億円)の約20分の1という計算になる。

 ハウ監督は900万ポンド(約16億円)で現在のチームを作り上げており、この額は『スカイスポーツ』が2016年から1試合に支払うプレミアリーグの放映料1000万ポンド(約18億4000万円)にも満たないというから驚きである。

 一方、ハウ監督は夏の間にチームを再編成することを示唆しており、「自然な流れだから仕方ない」と、昇格に貢献した主力選手にも大鉈を振るう覚悟があることを認めている。

 いずれにせよ、来季昇格する3チームが直面するであろう現実は、今季昇格した3チームが味わっている残留争いとなることは想像に難くない。そうした下馬評をどこまで覆すことができるか。彼らがこの夏に進める的確な補強と準備に注目が集まる。

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