イングランドの選手育成案にヴェンゲルが猛反発「二流のルール」

ヴェンゲル

イングランドの育成問題について持論を展開したヴェンゲル監督 [写真]=Getty Images

文=藤井重隆

 アーセナルのアルセーヌ・ヴェンゲル監督が27日、FA(イングランドサッカー協会)のグレッグ・ダイク会長が自国選手育成計画の一環として外国人選手の流入を規制する案があると明かしたことについて、「後退的で二流のルール」と大手メディア『beIN SPORTS』のインタビューで批判した。

 ダイク会長はプレミアリーグにおけるEU(欧州連合加盟国)外からの選手流入を規制し、各クラブにイングランド人選手を最低12名(現在は8名)、トップチームに登録することを義務付ける案を打ち立てている。これに対して同リーグで史上初めて公式戦のチームシートを非イングランド人選手で埋めた経験のあるヴェンゲル監督は、「選手は実力に基づいて評価されるべき」としてFAが提唱する規制案を牽制する一方、イングランドで自国選手が育たない要因としてイングランド国内のコーチング体制が未発達であることを挙げた。

「私はサッカー界が競争の場であると信じている。競争とは、最強を決める大会を意味する。我々はそれを認めなければならない。競争が意味するのは、試合におけるルールは最強を決めるために構成されなければならないし、そうでなければ競争の場ではなくなってしまう」

「そこで問われる二つに一つの事柄は、我々が二流を守るのか、最強の選手を生み出すのかということ。個人的には、間違った二流のルールを通して自国選手たちを守るよりも、5歳から20歳まで選手の実力を最大限に成長させることを考えている超一流のコーチに投資する方を支持する」

「二つの例として、かつてユーゴスラビアでは21歳以下の選手を3人チームシートに入れなければならなかったが、その結果、その3選手は万年サブの選手になった。フランスでも同じことが起こった。その後、彼らは21歳以下の3選手を先発させることを義務付けたが、結果として開始5分でその3選手を交代させるという事態が起こった」

「プレミアリーグを世界に売り込みたいのであれば、我々は世界一であることを証明しなければならないし、質の低下を求めてはならず、サッカーの本質である競争意識を求めなければならない。ベストはベストでなければならない。だからこそ、私はFAの規制案に反対する。私は非力だが新案が正しいとは思わない」

 一方、この新案はUEFA(欧州サッカー連盟)のミシェル・プラティニ会長の支持を受けており、UEFAが正式に採用することになれば、プレミアリーグは強制的に受け入れなければならなくなる。

 なお、世界一の収益金を誇るプレミアリーグのクラブは今シーズン、チャンピオンズリーグとヨーロッパリーグで22年ぶりとなる16強で全滅。今シーズン終了時にプレミアリーグはUEFAリーグランキングにおいてドイツのブンデスリーガに抜かれて3位に後退することが確定しており、これに加えて新たな規制案が失敗の方向に進めば、プレミアリーグは暗黒期に突入するかもしれない。

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