2013.10.09

前マンU監督のファーガソンが明かす「成功する8つの秘訣」とは?

ファーガソン
昨シーズン限りでマンチェスター・Uの指揮官を勇退したファーガソン氏 [写真]=Man Utd via Getty Images
ロンドン在住のサッカーライター。

文=藤井重隆

 英国史上最も成功を収めた監督と言えば、昨シーズンにプレミアリーグ優勝と共に勇退した日本代表MF香川真司の所属するマンチェスター・Uの前監督、アレックス・ファーガソン氏の右に出る者はいないだろう。在籍した26年間では国内リーグ優勝13回と欧州制覇2回を含む主要トロフィー38個獲得。デイヴィッド・モイーズ新体制では今シーズンの開幕から不振に陥っていることから、前監督の復帰を叫ぶファンも出ているほどだ。

 ファーガソン氏がマンUの指揮官に就任した1986年、クラブはリーグ優勝から20年も遠ざかっていた。彼は4季目にしてFAカップ優勝をクラブにもたらすと、翌年には欧州カップウィナーズ杯を制覇。6季目から引退するまでの20年間、国内リーグで3位以上を保つ常勝チームへと変貌を遂げることに成功した。現在のマンUの総資産は31億ドル(約3000億円)にも上るという。

 そんな名監督が、アメリカの名門ハーバード・ビジネス・スクールの大学誌『ビジネス・レビュー』の「ファーガソン、成功の秘訣」と題された論文の中で、アニタ・エルバース教授から「指導者の技術」に関するインタビューに応え、自身の成功の秘訣について8つの要素を挙げた。

 ファーガソン氏は「自身の成功は再現不可能」としたうえで、要素別に回答を行った。

<1>「ゼロからの基盤づくり」
 チームを指揮する上で最初にすることは、短期間の成功を求めたベテラン選手補強ではなく、若手選手を加える事と、長期にわたる安定性をもたらすアカデミーづくり。現代サッカー界では3連敗でクビが飛ぶだけに、99%の新任監督は生き残るために経験豊富な選手を集めて勝利を目指すが、それは短期的な利益にすぎない。ゼロからの基盤づくりが安定性と一貫性をもたらす。

<2>「思い切ったチーム再建」
 将来を見越したチーム作りと状況判断は重要。成功するチームも4年で選手が入れ替わる。選手は30歳以上、23~30歳、23歳未満の3つに分類する。若手には先輩を見習って成長させる。どんなチームも4年で変化が必要となる。全盛期を過ぎた選手を放出し、若手を入れ、徐々にチームを進化させる。3,4年先を見越したチーム作りをし、決定を下す。

<3>「高い目標設定」
 意識の高さは伝染する。監督が朝一番に練習に姿を現せば、自然とスタッフも朝一番に来て仕事をするようになる。クラブが設定した基準を維持し続ける事は、チーム作り、試合に向けた準備、選手を奮起させる会話、戦術的会話に応用する。選手たちの可能性を高め、絶対に妥協させない。練習では常に質の高さと高い集中力を求める。スター選手からは必要以上の自発的努力を求める。

<4>「指導者の絶対的地位」
 不協和音を起こす者、指揮官から権力を取り上げようとする者は、たとえ世界一の選手であれ排除する。監督が選手に支配されればチームは終わる。監督は絶対的地位を築かねばならない。選手がチームの雰囲気やプレー、組織に悪影響を与えるような時は、それを断ち切る。選手よりもチームが重要。

<5>「状況に応じた意思疎通」
 監督が選手を批判し、褒めるべきタイミングに関してのルールはない。状況に応じて最善の言葉をチームに伝える。選手は褒めて伸ばし、ミスをした時は試合後であれ叱る。チームが負けている時は強烈なメッセージを与える。時には医者となり、先生となり、父となる。

<6>「勝つための準備」
 勝つためには危険を覚悟する。1-2で負けている場合、そのまま試合を終えるよりも、引き分けか逆転の望みをかけて攻撃的選手を投入する。最後まで決して妥協しない粘り強さを持つ事が重要。

<7>「選手を見極める洞察力」
 練習をコーチ陣に任せ、監督は遠くから個々の選手を観察する時間を作り、選手の状態を見極める。選手のクセの変化や急に不調になった選手を見つければ、彼らと話すことで解決できる 。

<8>「環境への順応」
 イングランドサッカー界は過去数十年で劇的な変化を遂げたが、変化を受け入れ、上手く対処することで順応できる。自分の部下たちを信頼し、進歩を止めない事が重要。時代ごとに変化する移籍市場、メディア、スポーツ科学、チームの資金源などの環境に順応する。

 このように語ったファーガソン氏は今のマンUを見て何を思うだろうか。今年72歳を迎える同氏は今シーズン、非常勤の顧問役としてモイーズ監督を後援することになるが、長年の経験と知恵を新体制にも伝承させる事ができれば、昨シーズンのリーグ覇者が再び息を吹き返す日も近いかもしれない。

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