2013.05.09

マンU新監督モイーズとはどんな人物か、関係者の言葉からその人物像に迫る

モイーズ
賢い補強と個の力を伸ばす指導法に特長があるモイーズ監督 [写真]=Getty Images

 8日、マンチェスター・Uのサー・アレックス・ファーガソン監督が今シーズン限りでの退任を発表。後任には、エヴァートンのデイヴィッド・モイーズ監督が就任した。ファーガソンと同じグラズゴーで生まれた指導者モイーズとは、どんな人物なのか。ワールドサッカーキング0117号に掲載された記事「モイーズ・イズム」から一部掲載。関係者の言葉からモイーズの人物像に迫る。

文=サイモン・ハート 翻訳=田島 大

■タフなチームを作る育成とスカウティング

 2012年12月9日、デイヴィッド・モイーズが率いるエヴァートンは上位争いのライバルであるトッテナムをホームに迎え、1点ビハインドのまま90分を迎えようとしていた。しかし、そこから立て続けに2ゴールを決めて、デイヴィッド・モイーズの不屈の精神を体現してみせた。劇的な逆転勝利を飾った試合後、DFのシルヴァン・ディスタンは興奮気味にこう話した。「信じることも、戦うことも決してやめない。これこそが、エヴァートンのメンタリティーだ。別に意識する必要はない。このクラブに2週間もいれば、誰だってそうなるよ」

 お金で成功を買うこの時代にあって、モイーズの古臭い仕事ぶりは異彩を放っている。賢い補強と個の力を伸ばすコーチング、そして結束の固いチームの構築。選手層は薄いかもしれないが、選手たちは熱烈なサッカー狂のスコットランド人指揮官と同様、全員が確固たる決意を持っている。

 近年のエヴァートンはサー・アレックス・ファーガソンと同じグラズゴーで生まれた指揮官の下、常に安定した成績を残してきた。モイーズが率いた10シーズンのうち、実に8シーズンが8位以内。2004-05シーズンには4位に躍進している。更に言うと、エヴァートンは限られた予算でこの好成績を維持してきた。03年以降、彼らが補強に費やした金額はおよそ1億2900万ポンド(約161億円)。だが、ウェイン・ルーニーやジャック・ロドウェルといった自前のタレントを売却して資金を工面しているため、純粋な支出は3分の1程度でしかない。これはプレミアリーグで10番目以下の予算である。

 そんなクラブの屋台骨となっているのが、リーグ屈指のアカデミーと移籍市場におけるモイーズの抜け目のなさだ。現在、ニューヨーク・レッドブルズに在籍するティム・ケーヒルは、ルーニーが約54億円でマンチェスター・ユナイテッドに引き抜かれた04年夏、わずか3億円でミルウォールから加入し、グディソン・パーク(エヴァートンの本拠地)の英雄になった。

 フィル・ジャギエルカやジョレオン・レスコット(現マンチェスター・C)も2部のクラブから加入し、エヴァートンでイングランド代表にまで成長した。07年にウィガンから加入したレイトン・ベインズは、今では国内屈指の左サイドバックとしてビッグクラブの関心を集めている。

 とりわけ、レスコットの補強はモイーズの注意深い仕事の代表例と言える。モイーズはスカウト陣にレポートを16度も提出させただけでなく、自らも8度にわたって同選手のスカウティングに出向いたという。

 80年代にエヴァートンで活躍したグレイム・シャープはこう話す。「モイーズは信頼の置ける選手、そしてピッチ内外での素行がしっかりした選手を集めてチームを作り上げる。このチームには腐ったリンゴがいない。勤勉な選手たちが、労を惜しまず働くのだ」

 エヴァートンは選手が成長する“コーチングクラブ”としても知られている。その顕著な例がMFレオン・オズマンの存在だ。ユース出身の彼は、特別目立つ選手ではないが、長年エヴァートンの主力として活躍。地道に成長を続け、31歳にして初めてイングランド代表に選出された。

 08年までチームの主軸を担ったリー・カーズリーも賛同する。「監督は選手たちと素晴らしい関係を築く。一か八かの選手は獲得しない。必ずエヴァートンになじむ選手しか連れてこないんだ」

 そうやって集められた選手に最初にたたき込まれるのは、走り続けること。カーズリーは「今の選手に聞いても同じだと思うが、みんなエヴァートンに来てからキャリアで最も体力がついたと言うはずさ」と笑う。

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