逆転突破を狙うビルバオイレブン [写真]=Getty Images
ヨーロッパリーグ(EL)・準決勝2ndレグが8日に行われ、アスレティック・ビルバオはマンチェスター・ユナイテッドと対戦する。
1日夜、“ラ・カテドラル”に響いたのは勝利の讃美歌…ではなく、審判団に対する怒りと不満を押し殺した上での激励だった。昨シーズンに、40年ぶりのコパ・デル・レイ優勝を成し遂げたアスレティック・ビルバオが次に掲げるのは、クラブ史上初のヨーロッパリーグ制覇だ。それも2024-25シーズンの決勝戦は、地元『サン・マメス』で行われることが決まっているだけに、クラブもサポーターも、そしてビルバオの街全体が高揚感と期待に満ち溢れている。
そうした中で始まったELでの冒険は、リーグフェーズを6勝1分1敗の2位と順調に通過。ノックアウトフェーズのラウンド16ではローマを、ラウンド8ではレンジャーズを苦しみながらも退け、アスレティック・ビルバオはベスト4にまで勝ち上がった。が、その準決勝の1stレグは、予想だにしない結末となった。ここまで同大会6戦全勝の本拠地に、マンチェスター・ユナイテッドを迎え入れたチームは、序盤戦から決定機を作るなど手応えを得ていた中で30分に先制点を許してしまう。さらに、CBダニエル・ビビアンのPK献上に付随する1発退場と、ハンドの見逃しがゲームを壊し、立て続けに失点を重ねることに。持ち直した後半こそ無失点に抑えたが、絶対的な自信のあった『サン・マメス』での一戦を0-3で落としたという事実は、敗退の2文字を脳裏に浮かばせるには十分すぎるほどだった。
重くのしかかる3点ビハインド。しかも2ndレグは、敵地『オールド・トラッフォード』で完全アウェイの試合となる。それでも、スペイン紙『マルカ』は、「アスレティックはヨーロッパで歴史的な逆転勝利を成し遂げる道を知っている」と銘打ち、欧州大会での語り継がれる名勝負を紹介。チャンピオンズリーグにおいては、同大会史上最大の逆転劇となった2016-17シーズンのバルセロナ(ラウンド16・PSG戦)と、2003-04シーズンのデポルティーボ(ラウンド8・ミラン戦)を挙げ、前者は0-4で落とした1stレグから、2ndレグで6-1とカムバック(2戦合計スコア6-5)。“スーペルデポル”の代名詞として知られている後者は、ガリシアの中堅クラブが、強豪国の主力選手を揃えたミラン相手に1-4から4-0(2戦合計スコア5-4)と信じがたい展開を演じたことを振り返った。
また『マルカ』は、現在チームを率いるエルネスト・バルベルデ監督は「自身のキャリアにおいて何度も逆転を経験し、そのまた、逆転を食らう辛さも知っている」とし、バルセロナ時代に許した2度の逆転負けにも言及。とくに、“アンフィールドの奇跡”とも呼ばれる2018-19シーズンのベスト4のリヴァプール戦は、1stレグを3-0で先勝しながらも、敵地での2ndレグで0-4の敗北。対するリヴァプールは、これで勢いづいたこともあり、このままビッグイヤーを手中に収めている。
ただし上記の3つは、逆転勝利を成し遂げた側が、2ndレグを本拠地で戦えていたという点を忘れてはならい。加えて、アスレティック・ビルバオは、ここまで公式戦17得点を記録しているMFオイアン・サンセトが引き続き欠場となる他、コンディション不良が懸念されていたFWニコ・ウィリアムズとFWイニャキ・ウィリアムズも間に合わず。出場停止のビビアンも含め、代表クラスの4選手が不在という状況だ。
だが、前述した“アンフィールドの奇跡”を起こしたリヴァプールも、同試合においてはFWロベルト・フィルミーノとFWモハメド・サラーの大黒柱を欠いていた。前日会見に出席したバルベルデ監督は「これから出場する選手たちのことを考え、集中している。出場しない選手のことなど考える暇はない」とし、「全力を尽くして、ファイナルへと進むためにここにきた。確かに、状況は厳しいね。でも、それはシーズンを通して目指してきたことだ。何が起こるかを見てみよう」と限られた戦力を最大限に活かすことを口にした。
続けて、CBイェライ・アルバレスは「ファンの皆んなが、反撃の意思を呼びさましてくれた」と失意に暮れた1stレグ終了直後に、サポーターがチャントで励ましてくれたことに触れ、「この1週間、チームはフットボールでは何が起きてもおかしくない、という現実を意識しながら、ずっとトレーニングに取り組んできたんだ」と強調。そして「1stレグで、ユナイテッドが3-0でハーフタイムを折り返すことを誰が想像できただろうか? いつチャンスが訪れるかはわからない。だからこそ、僕たちはどんな状況でもそれを活かす準備をしてきた。まだこの夢から覚めたくない。今夜は、ファイナルへの夢を見よう」と決意を示している。
本拠地『サン・マメス』での初戴冠と、シーズン終了後に引退する主将DFオスカル・デ・マルコスの有終の美を飾る、という美しすぎるシナリオは崩れかけている。それでも、今大会の“主人公”が自分たちと言うのならば、バルセロナやリヴァプールのように、大会史に刻まれる奇跡を起こしてみせろ。
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By サッカーキング編集部
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