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インテル撃破でEL8強、公式戦15試合無敗…長谷部誠擁するフランクフルトはなぜ強い??

2019.04.11

開幕当初不調だったフランクフルトが強い理由とは? [写真]=Getty Images

 フランクフルトが絶好調だ。昨年のラストゲームとなったバイエルン戦での黒星を最後に、公式戦15試合無敗を誇っている。ブンデスリーガ後半戦の勝点は首位・バイエルンに次ぐ25(7勝4分け)で、ヨーロッパリーグ(EL)では欧州カップ戦の常連・シャフタールとタレント力で上回る名門・インテルを撃破。ベンフィカとの準々決勝まで駒を進めている。

ELではインテルを撃破してベスト8進出を果たした [写真]=Getty Images

好調をキープできる4つの理由

[写真]=Getty Images

 昨季のDFBポカール制覇に導いたニコ・コヴァチ監督をバイエルンに引き抜かれながら、国内外で大健闘している歩みは称賛に値する。リーグ開幕前のDFLスーパーカップでバイエルンに0-5と完膚なきまでに叩きのめされ、続くDFBポカール1回戦で4部クラブのウルムに1-2と不覚をとった頃、これほどの躍進を想像できた者はほとんどいないだろう。

 かく言う筆者も完全に読み違えた一人だ。リーグ開幕5試合で3敗を喫した時には、残留争いに巻き込まれる予想を立てていた。コヴァチの流出に加え、中盤のボスだったケヴィン・プリンス・ボアテングの退団による構成力の低下が大きな痛手となり、さらにELとの掛け持ちに耐え得る選手層がないと考えていたのだ。

 それでもチーム力が上がった理由は大きく分けて4つある。コヴァチの跡を継いだアディ・ヒュッター監督の手腕、ルカ・ヨヴィッチセバスティアン・ハラーアンテ・レビッチら攻撃陣のスケールアップ、フィリップ・コスティッチケヴィン・トラップら新戦力がハマった補強の成功、そしてチームリーダーである長谷部誠の充実だ。

最も旬な“セルビアのファルカオ”

躍進の原動力となっているルカ・ヨヴィッチ [写真]=Getty Images

 コヴァチ時代の3バックシステムを踏襲し、いきなり躓いたヒュッター監督はリーグ開幕当初、自身の前職場であるヤングボーイズで用いていた4バックシステムへの切り替えを図った。しかし、これがむしろチームの混乱を招いてしまう。ブンデスリーガ初挑戦の新監督が非凡だったのは、ここで自身のやり方に固執せずに“原点回帰”を図ったこと。すぐさま慣れ親しんだ3-5-2に戻し、徐々に独自のエッセンスを加えていった。

 その一つが2トップの一角だったレビッチのトップ下起用だ。昨季のチーム得点王であるハラー、第7節のデュッセルドルフ戦で5得点と覚醒したヨヴィッチを共存させる最適なソリューションを見出し、ここまで公式戦で計53得点と凄まじい破壊力を誇示しているアタッキングトリオの爆発を促した。いずれもキャリアハイのゴールを記録し、今夏の移籍マーケットではビッグクラブからオファーが殺到しそうだ。

 中でも最も“旬”なのがヨヴィッチ。左右両足を遜色なく使いこなし、華麗なボレーやループシュートなど多彩なフィニッシュワークを見せるだけでなく、“セルビアのファルカオ”の異名に違わぬゴール前での秀逸な動き出し、ラストパスの精度などにも優れている。レンタル元のベンフィカが保有権を持っているが、フランクフルトの取締役ボビッチは「700万ユーロ以下で買い取る権利がある」と明言。いまや4000万ユーロは下らないという推定市場価格を考えれば、フランクフルトが保有権を得るのは時間の問題になっている。

 セルビア国内では知られた存在だったものの、2017年夏の加入前までほぼ無名だったヨヴィッチを発掘したのに続き、昨夏の補強も素晴らしい成果をもたらしている。特に目立つのがコスティッチとトラップの活躍だ。生粋のウインガーだった前者はウイングバックへのコンバートに応え、無尽蔵のスタミナと高い局面打開力を誇る“疲れ知らずのクロスマシン”として前線の3人にビッグチャンスを供給している。パリ・サンジェルマンで出番を失っていた後者は3年ぶりに復帰した古巣で見事な復活を果たした。

戦術上のキーマンは長谷部誠

高い勝率を誇るツヴァイカンプフ(1対1)や攻撃の起点になるパスなど、長谷部誠はリベロとして異彩を放っている [写真]=Getty Images

 そして長谷部誠の充実だ。ロシア・ワールドカップ後に代表を引退し、クラブでの戦いに集中できるようになった35歳は、『キッカー』誌選出の前半戦における最優秀DFに選ばれるなど、キャリア最高のシーズンを送っている。壺を押さえたカバーリング、的確なコーチングで守備を引き締めているほか、長短を織り交ぜた正確なパスで攻撃の起点としても機能。ドリブルで敵陣深くまで持ち上がるような古典的なリベロ(ベッケンバウアーやバレージ)とは異なるが、戦術上のキーマンとして異彩を放っている。

 ボアテングの退団とレビッチのトップ下起用で下がった中盤の構成力を補填できているのも、長谷部による組み立てがあればこそ。両サイドへの散らしに加え、空中戦の勝利数がリーグトップのCFハラーを目がけたロングフィードも冴えている。技巧派が少ない中盤での組み立ての省略を可能にし、縦に速いチームアタックを演出している長谷部とハラーは、今季のフランクフルトで最も欠かせないプレーヤーだろう。

 長谷部の充実でもう一つ見逃せないのはツヴァイカンプフ(1対1)の勝率で、昨シーズンの57%から63%までアップしている。代表引退に伴う負担の軽減がその背景にあるかもしれない。いずれにしても、当サイトが行った開幕前のインタビューで「これまでのキャリアの中でも自分の価値を示せるかどうか、最も重要なシーズンになる」と語っていた長谷部の価値が、かつてない水準まで高まっているのは確かだ。

かつてのレジェンドと重なる姿

[写真]=Getty Images

 ブンデスリーガ勢は今シーズン、すでに7チーム中6チームがヨーロッパカップ戦で敗退した。“最後の砦”であるフランクフルトに懸かる期待は大きい。ブンデスリーガ勢が最後にELを制したのは、まだ前身の「UEFAカップ」だった1996-97シーズンが最後。当時のシャルケには170cmと小柄なオラフ・トーンがリーダーとして最後尾に君臨していた。そう、長谷部と同じくMFからリベロへの転向をハイレベルに実現した元ドイツ代表の名手だ。

 トーンのようにチームをEL制覇に導くようなら、長谷部はそれこそフランクフルトのレジェンドとして歴史に名を刻むことになるかもしれない。

文=遠藤孝輔

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