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躍進続くライプツィヒか、悲願の欧州制覇を狙うPSGか…/CL準決勝プレビュー

2020.08.18

CL準決勝で対戦するライプツィヒとパリ・サンジェルマン [写真]=Getty Images

 終盤の逆転劇、ジャイアントキリング、歴史的スコア――。波乱に満ちたチャンピオンズリーグ(CL)も、残すところあと3試合となった。それにしても、一体誰がこの両チームによる準決勝を予想しただろうか。

 ファイナルへの切符をかけて戦うのは、ライプツィヒパリ・サンジェルマン。ドイツの新興勢力は初のベスト4進出、フランス王者は25年ぶりのCL4強入りを果たした。

 ここに至るまでの歩みは実に対照的だ。ライプツィヒはクラブ創設が2009年。ジョゼップ・グアルディオラがバルセロナで初のCL優勝を成し遂げた年に、飲料メーカーのレッドブルがドイツ5部にいたSSVマルクランシュタットの経営権を取得して誕生した。それからわずか11年。2度目の出場となったCLで“トップ4”の仲間入りを果たした。異例の大出世である。

 一方、QIA(カタール・インベストメント・オーソリティ)が“欧州制覇”を目標に掲げてパリ・サンジェルマンのクラブオーナーになったのが2011年のこと。その翌年からCLに挑み続けているが、最初の4年はベスト8、その後は3年連続でベスト16敗退だった。今回8度目の挑戦にして、ようやく壁を乗り越えた。

「豊富な資金力をバックに成り上がった」と言われる両チームだが、チームの強化方法も大きく異なる。カタール資本を手に入れたパリ・サンジェルマンは、各国の一流選手たちを次々に獲得。FWネイマールの獲得に支払った2億2200万ユーロ(約280億円)は今もサッカー界の移籍金レコードであり、FWキリアン・エンバペの取引にも歴代4位となる1億3500万ユーロ(約170億円)を費やした(金額はいずれも移籍情報サイド『transfermarkt』を参照)。FWマウロ・イカルディ(27歳)、MFアンヘル・ディ・マリア(32歳)、DFチアゴ・シウヴァ(35歳)と、主軸を担うのも国際経験が豊富な中堅、もしくはベテランが多い。

 選手獲得のために惜しげもなく資金を投じているのはライプツィヒも同じだが、ターゲットになるのは20代前半のヤングタレントばかりだ。彼らは今シーズンの欧州4大リーグにおいて平均年齢が最も低いチーム(24.0歳)だった。アトレティコ・マドリードとの準々決勝でも、ピッチに立った15人のうち、30代はGKペーテル・グラーチ(30歳)ただ1人。スタメンの平均年齢は25.4歳だった。

 何と言っても、監督が若い。ドイツ人のユリアン・ナーゲルスマンは33歳(1987年7月23日生まれ)。リオネル・メッシと同い年(1987年6月24日生まれ)なのだ。もちろん、CL史上最年少で準決勝の舞台にたどり着いた指揮官である。

 そんな特徴を持つ両雄だけに、ピッチ上で展開するサッカーも正反対だ。パリ・サンジェルマンは“個の力”を全面に押し出すサッカー、個人能力の最大化を勝利への最短距離と考えてチームを設計している。

 象徴的なのは、「ファンタスティック・フォー」と呼ばれるカルテットだ。イカルディ、エンバペ、ネイマール、ディ・マリアを前線で同時起用する4-4-2(もしくは4-2-2-2)は、昨年末から定番システムとなった。その破壊力は申し分なく、リーグ・アンではチーム総得点(75)の7割近くを彼らが叩き出している。アタランタとの準々決勝では、エンバペがケガ明け、ディ・マリアが出場停止だったため、ネイマールをトップ下、イカルディとMFパブロ・サラビアを2トップ気味に並べた4-3-1-2でスタートしたが、ライプツィヒ戦では「ファンタスティック・フォー」の共演が期待されている。

 ただし、あまりに攻撃的すぎるために、守備の不安を抱えているのも事実。現にトーマス・トゥヘル監督はCLでこの4人を同時先発させたことがない。アタランタ戦では守護神のケイラー・ナバスがハムストリングを痛めて途中交代し、準決勝は欠場すると発表されている。またボール奪取能力に優れたMFイドリッサ・ゲイェも筋肉トラブルを抱えており、こちらも出場が微妙。本来ならレギュラーであるMFマルコ・ヴェラッティもケガからの回復途中にあり、先発出場は難しい。中盤より後方でベストメンバーを組めないため、指揮官はあえてリスクを犯さないかもしれない。

 そもそも146秒でアタランタを逆転したように、パリ・サンジェルマンにはわずかな時間で試合を決め切る力が備わっている。その試合では、今季CL最多のドリブル成功数(16回)を記録したネイマールがキレッキレのパフォーマンスを披露。ライプツィヒ相手にも一人で違いを生み出せる存在だ。彼を中心に攻守のバランスを重視したスタメンを採用するのか、あるいは試合開始から「ファンタスティック・フォー」を起用して勝負に出るのか。トゥヘル監督の選択は注目すべきポイントのひとつだろう。

ネイマール

[写真]=Getty Images

 そんなパリ・サンジェルマンとは対照的に、細部にまで戦術にこだわり、チームという“集団”で戦いに挑むのがライプツィヒである。

 アトレティコとの準々決勝では、2つのシステムを採用。攻撃時は3-1-5-1、守備時は4-2-3-1の陣形を敷いて、ディエゴ・シメオネ監督率いるチームの良さを徹底的に消した。ボールを保持しているときには、アトレティコのプレスを正面から受けないよう、選手間、及びライン間に人を立たせることでパスコースを確保。そしてDFアンヘリーニョとMFコンラッド・ライマーの両ウイングバックがサイド深くまでボールを運んだら、クロスを放りこみ、相手の死角からゴールを狙った。得点に結びついた2つのシーンはいずれも狙い通りの形だったと言える。

 決定力という点では、チーム総得点の3割以上を叩き出していたFWティモ・ヴェルナー不在の影響を感じさせたが、理詰めのサッカーで数多くのチャンスを創出。シュートの数もアトレティコ(9本)を上回る10本を記録し、敵陣ペナルティエリアへの侵入回数でも相手を凌駕した。

 とはいえ、可変システムには明確な弱点がある。攻守が入れ替わるたびにポジションを調整する必要があるため、選手の移動が間に合わなければズレが生じやすい。そこでカギとなるのがチーム“全員”のハードワークである。ライプツィヒが凄いのは、一人としてサボる選手がいないこと。準々決勝の走行距離は115.6kmと、欧州屈指の戦闘集団であるアトレティコ(115.9㎞)にも走り負けることがなかった。ちなみに、同ラウンドのパリ・サンジェルマンの走行距離は104.9㎞。対戦相手や試合展開に応じて数値は変化するため、単純比較はできないが、走り切る“足”を持っているのはライプツィヒの強みである。

 アトレティコ戦後に「延長戦にならなくて良かった」とナーゲルスマン監督がコメントしたように、試合間隔が1日短いライプツィヒは90分でゲームを終えられたのも大きい。個の力で上回るパリ・サンジェルマンを止めるには「100%のパフォーマンスをしなければならない」(ナーゲルスマン監督)からだ。

 そのうえでキーマンとなるのは、21歳のDFダヨ・ウパメカノだろう。イギリスメディア『Squawka』によると、アトレティコ戦でマン・オブ・ザ・マッチに輝いた同選手は、クリア数(5)、タックル数(2)、インターセプト数(2)など守備スタッツが軒並みチームトップを記録。またボールタッチ数(99)もチーム最多で、パス成功率は92%を叩き出した。速さ、強さ、高さ、巧さ、そして賢さを兼ね備える彼は、個の力でパリ・サンジェルマンに対抗できる数少ない選手。ネイマールやエンバペとの“1対1”で優勢に立つことができれば、試合を優位に進めることができるはずだ。

ウパメカノ

[写真]=Getty Images

 なお今回の一戦は、“師弟対決”でもある。2008年、アウクスブルクのセカンドチームでDFとしてプレーしていたナーゲルスマンは、ヒザのケガで選手生命を絶たれた。そんな折に手を差し伸べたのが同チームで監督を務めていたトゥヘルだったのだ。アシスタントコーチとして対戦相手のスカウティングを任せられたナーゲルスマンは、それ以降、指導者としての才を発揮。前例のないスピードでステップアップを果たしてきた。

「彼との対戦では、ほとんど勝ったことがない」と話したように、ブンデスリーガ時代の直接対決の成績はトゥヘルの2勝1分け。ナーゲルスマンが当時率いたのは中堅クラブのホッフェンハイムで、トゥヘルが指揮するドルトムントとの戦力差は明らかだったとはいえ、今回のゲームも構図としてはよく似ている。ただ今回は中立地での一発勝負。勝ち上がりの確率はまったくの五分だ。「今こそ、過去を変えなければならない。我々が勝てば、たとえ悪い内容であっても満足するだろう」と話す33歳の指揮官は、13歳年上の師匠からの初勝利を虎視眈々と狙っている。

 勢いの止まらないライプツィヒが若き智将に導かれて、さらなるサプライズを提供するのか。あるいは、長い沈黙を経てCL4強にたどり着いたパリ・サンジェルマンが悲願の欧州制覇へ王手をかけるのか。お互いをよく知る指揮官同士の駆け引きを含めて、目の離せない90分となりそうだ。

(記事/Footmedia)

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