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またとないチャンスが巡ってきた“ペップ・シティ”…悲願のCL制覇へ視界良好

2020.08.15

悲願の欧州制覇を目指すマンチェスター・C [写真]=Getty Images

 悲願の欧州制覇へ。マンチェスター・Cにとって、またとないチャンスがやってきた。

 2008年にアブダビ・ユナイテッド・グループがクラブを買収して以来、急成長を遂げたシティは4度のリーグ制覇を成し遂げ、昨シーズンはイングランド史上初の国内3冠を達成した。しかし、彼らが4年前にジョゼップ・グアルディオラを招聘し、大型補強を繰り返してきた最大の理由は、チャンピオンズリーグ(CL)で頂点に立つためなのだ。

 一時は、その野望に黄色信号が灯った。ファイナンシャル・フェアプレーに抵触したとしてUEFAから今後2年間の出場禁止処分を受けたのだ。これで近いうちにペップが去り、チームも思い通りの補強ができず、主力選手を流出――そんな報道が飛び交った。そして今シーズンのCLでは、ペップ政権の“ラストチャンス”という重圧が選手たちにのしかかる……はずだった。しかしスポーツ仲裁裁判所(CAS)が出場停止処分を撤回する判決を下し、立ち込めていた暗雲が一瞬にして消え去った。これで選手たちは何の不安もなく、決戦の地、リスボンに乗り込める。

 それだけではない。出揃った8強の顔触れもシティを後押しする。シティは過去2シーズン、いずれも準々決勝で英国勢(リヴァプールトッテナム)の前に涙を飲んでいた。同国対決とあって、必要以上に敵の戦術を意識して自分たちのスタイルを崩していたのだ。だが今回は、シティ以外のイングランド勢は全滅。もう怖いものはない。だから8強が出揃った時点でイギリスのブックメーカー『ウィリアム・ヒル』も、バイエルンを抑えてシティを優勝候補筆頭に据えている。

 準備も万端である。今シーズンのシティは、シーズン序盤のDFアイメリク・ラポルテの離脱が尾を引き、リーグ戦では格下相手に取りこぼして結局リヴァプールにリーグ3連覇を阻止された。だが、早々に優勝を諦めることができたため、シーズン終盤はCLだけに照準を合わせ、監督もことあるごとに「CLで戦う準備」と繰り返してきた。

 変化が見られたのは20歳のMFフィル・フォーデンの起用法だ。

 それまではインサイドハーフの控えだった同選手を3トップの一角で起用するようになった。指揮官は「生粋のウィンガーではないが、ゴールの嗅覚のような何か特別なものがある」と起用の理由を説明。このフォーデンの成長がシティの進化につながった。

フォーデン

[写真]=Getty Images

 決してスピードに秀でたわけではないが、ゼロからの加速で一対一を仕掛ける。そんなフォーデンの積極性がチームに推進力を与えている。テクニックとパスセンスは相変わらず一級品で、前線からの守備もサボらない。そして、彼の流動的な動きと献身性に共鳴するチームメイトがいる。それがFWガブリエル・ジェズスだ。

 エースのセルヒオ・アグエロはひざのケガのため、たとえチームが決勝まで勝ち進んでも間に合わない可能性が高い。決定力という点でアグエロの不在は痛手だ。というのもジェズスは、今シーズンのプレミアリーグで最多となる21.02ゴールの「xG(ゴール期待値)」を記録しながら、実際には14ゴールしか奪えなかった。「xG」を7.02ゴールも下回ったのはリーグワースト2位だった。だが彼は、動きの中でこそ活きるストライカーである。7日のレアル・マドリード戦では積極的なプレッシングで先制ゴールをアシストすると、後半はバックパスを追いかけて追加点まで奪ってみせた。

 同試合ではセンターフォワード(偽9番)に抜擢されたフォーデンが幅広く走り回ったことで、左ウイングに入ったジェズスも思い通りに動けた。だからフォーデンの前線起用にはジェズスを活かすという目論見もあるように思う。実は、フォーデンは今シーズンのCLで出場分数に対する運動量がチーム1位(1分間に140m)なのだ。若いフォーデンが試合序盤から積極的にプレスをかけ、疲れが出始めた後半途中からは、レアル戦のようにMFベルナルド・シルヴァと交代して試合コントロールを任せればいい。交代枠が5枚もあるので、そういう戦術が取りやすくなっている。

 おかげでレアルとのセカンドレグは、2月に行われたファーストレグから16度も気温が高かったにもかかわらず、チーム走行距離は112.2㎞で第1戦から「0.7㎞」しか減らなかった。2戦合計で2点差がつき、ゲームコントロールを重視して省エネになる時間帯もあったことを考えれば、むしろ第1戦よりも軽快に動けていた。そう考えると、シーズン終盤のこの時期でもフィジカルコンディションは問題なさそうだ。リスボンの気候も、今のところは心配するような暑さではないため急激に足が止まるようなことはないだろう。

 そんなシティでチームの命運を握るのは、やはりMFケヴィン・デ・ブライネとFWラヒーム・スターリングだろう。今シーズンのプレミアリーグで最多記録に並ぶ20アシストを達成したデ・ブライネは、世界一のキック技術を活かして中・長距離でもラストパスを通してしまう。それだけに留まらず、プレミアリーグ最終節のノリッジ戦で決めたような正確無比のミドルシュートもあり、キャリアハイとなる13ゴール(リーグ戦)を叩き出した。

 そしてすっかりチームの得点源となったスターリングは、自身初のリーグ戦20ゴールを達成し、今シーズンここまで公式戦51試合で31ゴールの活躍。コロナ禍による中断以降はさらに調子を上げ、同期間でリーグ最多となる9ゴールを奪った。そしてVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の導入も追い風になっている。ペナルティエリア内に侵入すれば躊躇なく仕掛け、少しでも接触があればPKを獲得する。先日のレアル戦では不用意に転倒する場面もあったが、相手にとってこれほどの脅威はないだろう。

 では、今のシティに死角はないのか? そうとは言い切れない。レアル戦でカリム・ベンゼマにヘディングシュートを決められたように、本職が守備的MFのフェルナンジーニョがCBを務めるディフェンスラインは空中戦で後れを取ることがある。その点は、今夏の移籍市場でDFネイサン・アケを獲得したことが全てを物語っている。それから準々決勝以降は“一発勝負”となる大会フォーマットも、シティからすると不安材料だ。現にシティは、リーグ戦で2試合とも3-0で完勝していたアーセナルを相手に、一発勝負のFAカップ準決勝では守備を固められて0-2で敗れた。絶対的有利と見られるリヨンとの準々決勝も決して気を抜けない。

 モチベーションはどうだろうか? 一度は諦めた来シーズンのCL出場権が舞い込んできたことで、気が緩んだりしないだろうか。恐らく、その心配はないだろう。スターリングはレアルとのセカンドレグを前に、イギリスの放送局に問い合わせて自分たちが敗退した昨シーズンの試合映像を取り寄せたという。コロナ禍による中断やフォーマットの変更などで緊張の糸が切れやすい今シーズンだが、今一度悔しさを思い出して欧州の頂を狙おうというのだ。さらに、今シーズンいっぱいでの退団を発表している最古参のダビド・シルバと、1試合でも多く一緒に戦いたいという気持ちがあるはずだ。

 悲願の欧州制覇まで、あと3試合。果たしてシティは、史上23クラブ目の欧州王者となれるのだろうか。

(記事/Footmedia)

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