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“いるべき場所”に戻ってきたバルセロナ。カギを握るのは指揮官の采配か

2020.08.14

バルセロナはCL準々決勝でバイエルンと対戦する [写真]=Getty Images

 13シーズン連続のCL8強入り――。7日に行われたナポリ戦を勝利で飾り、バルセロナは“いるべき場所”に戻ってきた。しかし、優勝への期待感は過去数年と比べるとかなり低い。

 大手ブックメーカー『ウィリアム・ヒル』による優勝オッズ(8月11日現在)は8.0倍。グループステージ開幕時の6.0倍とそう変わらないが、当時はマンチェスター・C(4.0倍)に次ぐ2番人気だったのに対して、現在はマンチェスター・C(3.25倍)、バイエルン(4.0倍)、パリ・サンジェルマン(6.5倍)に次ぐ4番手まで落ちている。

 トーナメントの同じ“山”に、マンチェスター・Cやバイエルンなどビッグクラブが同居していることも影響しているのだろう。ただ今大会のグループステージもインテルドルトムントが同居する“死の組”だったことを考えれば、単純に評価が下がっていると言える。

 今シーズンはリーガ・エスパニョーラで3連覇を逃した。しかも、優勝したレアル・マドリードに逆転を許しての2位だった。6月の再開後は11試合で7勝3分け1敗。11戦無敗で走り抜けた宿敵とは対照的に、試合を重ねるごとにパフォーマンスが低下していった。とりわけ従来の“勝負強さ”に陰りが見え、第37節オサスナ戦(1-2)では2018年11月以来となるホーム黒星を喫した。その試合後、主将のリオネル・メッシが「僕らは不安定で脆いチーム」、「このままではCLで勝つのは難しい」と“警告”を発したことは記憶に新しい。

 気持ちを入れ替えて臨んだ7日のナポリ戦も、前半で3ゴールを奪って勝ち抜けを確実にした一方、後半は相手にゲームを支配され、特に終盤は防戦一方だった。残り45分間で放ったシュートは1本。一方、被シュート数は14本を数えた。ナポリの拙攻に助けられた面は否めない。

 後半のピッチに向かうトンネル内で、メッシは「力強く始めるぞ。間抜けになってはいけない。2点リードしているんだ。落ち着いていこう」とチームメイトに激を飛ばしたという。過去2シーズン連続で大逆転負けを味わっているバルサにしてみれば、3度目の失態を犯すわけにはいかない。それゆえ、リードを守り切って8強進出を手にしたことは評価されるべきだが、彼らならボールを素早く動かすことで、相手を消耗させられたのではないか――“ベタ引き”に近い戦術を採用したチームを見て、そんな疑問を感じたファンも少なくなかっただろう。

 敵将のジェンナーロ・ガットゥーゾは「勝てたゲームだった」と試合を振り返り、「今のバルサは7~8年前とは違う。プレスをしない選手が2、3人いる」とバルサの弱点まで明らかにした。また準々決勝の相手、バイエルンのOBであるローター・マテウスに至っては、「このバルサに負けるには、バイエルンが数多くの間違いを犯す必要がある」と言い切った。これらのコメントからも、今のバルサがこれまでのような恐怖心を相手に与えられなくなっていることが分かる。

 とはいえ、バルサはあくまでバルサだ。レギュラーの絶対的なクオリティーは他のどのチームにも見劣りしない。リーガ・エスパニョーラで25ゴール21アシストを記録し、今シーズンも欧州5大リーグで最も多くの得点を生み出したメッシは絶好調。6月の再開以降も、公式戦12試合で7ゴール10アシストを叩き出している。

メッシ

[写真]=Getty Images

 ナポリ戦ではゴラッソを叩き込んだだけでなく、相手DFへの素早いチェックからPKを奪取。その際に左足首を強く蹴られたものの、バイエルンへの出場は問題ない。何よりピッチ上では鬼気迫るプレーを見せ、ビッグイヤー獲得への並々ならぬ覚悟を示した。“本気”のメッシを止められる選手は世界中を探してもほとんどいない。さらに相棒のルイス・スアレスもケガからの完全復活を遂げ、6月以降の公式戦では6ゴール1アシストを記録。メッシと阿吽の呼吸を見せる彼もまた、バルサの大きな武器だ。

 一方、2人ほど“数字”を残せていないアントワーヌ・グリーズマンだが、ケガからの復帰戦となったナポリ戦ではまずまずのパフォーマンスを披露。頻繁にトップ下のポジションに入って、中盤と前線をつなぐ“リンクマン”の役割を全うした。メッシとスアレスはかなり自由に動くが、シーズン開幕当初に比べればポジションが重なる回数も減り、連携もスムーズになってきている。負傷前のリーガ第34節ビジャレアル戦では、メッシらと絶妙な連携を見せて、わずかながら共存への希望も見えていた。守備のタスクもこなさなければならず、その仕事量は半端ないが、“気の利く”グリーズマンも欠かせない存在だ。この“MSG”の出来がバルセロナのCL優勝を左右するのは間違いないだろう。

 また中盤に関しては、セルヒオ・ブスケツアルトゥーロ・ビダルが出場停止から帰ってくる。特に後者はバイエルン戦でキープレーヤーとなる選手だ。今のバルサは攻撃から守備への切リ替えが遅く、とりわけ“ボールを奪い返す力”が弱まっている。その欠点を補うのがビダルであり、ピッチ上を広範囲にカバーできる運動量を備え、強烈なタックルで相手を威嚇することができる彼の存在は貴重だ。古巣バイエルンの選手たちの特徴を把握しているのも大きい。

 セルジ・ロベルトネルソン・セメドか、右サイドバックの人選こそ不透明だが、ジョルディ・アルバクレマン・ラングレジェラール・ピケが並ぶ最終ラインも大崩れはしない。そして最後尾に君臨するマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンが、同胞のライバルであるマヌエル・ノイアーに一歩も引けを取らない実力の持ち主であることは、ここ数年のパフォーマンスを見ても明らかだ。

 レギュラークラスの彼らのコンディションが万全であれば、CL制覇は決して手の届かない目標ではない。下馬評ではバイエルン優勢と見られているが、ここからは中立地での一発勝負。S・ロベルトが「本命不在」と指摘するように、どこが勝っても不思議ではない。

 それでもなお不安を拭えないのは、やはり指揮官の采配力に疑問符がつくからだろう。今年1月から指揮をとるキケ・セティエンは、決断力に欠けるきらいがある。ナポリ戦では、最初の交代カードを切ったのが84分のこと(グリーズマンに代えてMFモンチュを投入)。それも、アシスタントコーチのエデル・サラビアと何度も話し合い、投入するタイミングをやや迷った末の交代策だった。

 その試合は主力のケガや出場停止などで、ベンチに控えるトップチーム登録のフィールドプレーヤーがDFジュニオル・フィルポ1人だけだった。容易に交代できない事情があったにせよ、決断をためらうシーンが見られるのは一度や二度ではない。結局、これまで重用してきたアンス・ファティリキ・プッチは使われなかった。

 6月27日のセルタ戦後には、指揮官が採用する戦術や交代策を巡って一部の選手たちと衝突があったと報じられた。その事件が今も尾を引き、指揮官の決断に迷いを生じさせている面はある。ただし、一発勝負では一つの采配が命取りとなる。ビッグクラブで初めて指揮を執り、CLデビューを果たしたばかりの61歳が不測の事態に見舞われたとき、即断即決できるのか。“勝負師”としての力が強く問われることになるだろう。

 過去を振り返れば、バルサが最後に欧州制覇を成し遂げた2014-15シーズンも、就任1年目のルイス・エンリケ監督とメッシがシーズン途中に衝突。その後、指揮官の方が一歩引き、選手主体のチーム作りを進めることで結束力を取り戻して、3冠を成し遂げた。柔軟だが、妥協ともとれるそのマネジメントがカギとなり、最高のフィナーレを迎えた。

 その当時の再現を期待する声も少なくないが、今のチームに5年前ほどの一体感や勢いは感じられない。それでも、同じようにビッグイヤーを掲げることはできるのか。選手のポテンシャルやクオリティーに不足はないだけに、チームとしてのまとまり、指揮官の舵取り、そしていくらかの運が命運を分けることになりそうだ。

(記事/Footmedia)

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