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【CL展望】CL初挑戦の闘将が混乱に陥るチームを救う|ナポリ

2020.02.25

[写真]=Getty Images

 2月15日に発売となった雑誌『SOCCER KING』3月号では、チャンピオンズリーグのラウンド16を完全プレビュー! いよいよ始まる決勝トーナメントに向けて、一部コンテンツを公開します。

 

 混乱のシーズンを送るナポリを立て直すべく呼ばれたジェンナーロ・ガットゥーゾは、昨年12月11日の就任以来、選手たちに再結束を訴えてきた。昨秋の合宿ボイコットに端を発する選手たちの会長への反目と、それに伴う高額罰金騒動や前監督カルロ・アンチェロッティの契約解除によって生まれた亀裂は、まだ完全に埋まったわけではない。

 それでも、現場を預かった闘将には覚悟がある。「バルセロナは偉大なチームだ。素晴らしい2試合になるだろう。ビビらずに立ち向かいたい」。かつて世界最高の守備的MFだったガットゥーゾは、本格的に指導者キャリアをスタートさせた下位カテゴリー時代から、一貫して守備フェーズの構築が評価されている。

 カギとなるのは中盤だ。前任者アンチェロッティが愛用した4-4-2は、彼の退任とともに倉庫送りになった。代わりに4-3-3を愛用する新指揮官は、ピッチ全体に秩序を与えながら最終ラインとのつなぎ役になれるレジスタを中盤の中央に置く。最初はMFアランが、次に昨夏のU-21ユーロでMVPに選ばれたファビアン・ルイスが試されたが、2人とも不適格とされ、冬の移籍市場でライプツィヒからディエゴ・デンメ、セルタからスタニスラフ・ロボツカが合流してきた。

 さらに最終ラインの整備だが、太ももの肉離れで40日近く離脱していた守備の大黒柱カリドゥ・クリバリが2月3日のサンプドリア戦でベンチに復帰し、バルセロナ戦で起用できる目処が立った。らしからぬミスが続いた序盤戦の不出来を挽回すべく闘志を燃やす本人も、大一番にコンディションを合わせてくるだろう。やはり欠場が続いていたセンターバックのニコラ・マクシモヴィッチも復帰し、センター起用を余儀なくされていたジョヴァンニ・ディ・ロレンツォも本職の右サイドバックに戻す目星がついた。

“攻撃は最大の防御である”とは、言い尽くされている言葉だが、真理だ。FWマッテオ・ポリターノ(前インテル)の加入は、攻撃の層に厚みをもたらしてくれるだろう。

 ガットゥーゾは就任から逆風にさらされた。1月18日にフィオレンティーナに敗れ、ホーム4連敗を喫した日には「どん底だ。このチームには魂がない。やっちゃいけない火遊びをしているガキと同じだ」と厳しい言葉で叱責した。発奮した選手たちは自主的に合宿に入り、3日後に行われたコッパ・イタリア準々決勝で好調のラツィオを1-0で下すと、さらに5日後のセリエA第21節ユヴェントス戦で苦戦必至の下馬評を覆しながら見事な完勝を収めた。チームは気勢も闘志も新たにし、選手たちには自信が戻ってきた。主将のロレンツォ・インシーニェは「俺たちは何かが大きく変わったわけじゃない。ただ、大人の男として選手同士でよく話し合ったんだ。今からならまだシーズンをいいものに変えられる」と言う。

 ナポリは2月3日のサンプドリア戦を皮切りに、27日間で国内外7試合を戦わなくてはならない。強行日程を前に、ようやく戦力が整ったというのが指揮官の本音だろうが、それだけ強い危機感を抱いている。

 DFコスタス・マノラスは決勝トーナメントの組み合せ抽選があった日の練習が始まる前、ロッカールームに集まった同僚たちを前に語りかけた。わずか2年前の春、ローマの一員だった彼が準々決勝で圧倒的有利な立場にあったバルセロナを下した、奇跡の夜のことを。自ら突き刺した3点目の決勝ゴールの興奮を。

“マラドーナの神殿”と呼ばれる聖地サン・パオロへ初めて足を踏み入れるリオネル・メッシや、就任して間もない新指揮官キケ・セティエンに、ナポリっ子たちは容赦ないブーイングを浴びせるだろう。迎え撃つ闘将ガットゥーゾはほくそ笑む。「ようやく俺好みの毒あるチームになってきた」

【PLAYER FOCUS】MF 20 ピオトル・ジエリンスキ

[写真]=Getty Images

 無名で怖いもの知らずだったエンポリ時代、「俺はいつかレアル・マドリードでプレーする」と豪語したことがある。ジエリンスキは恩師サッリに鍛え上げられ、リーグ屈指の技巧派インサイドハーフに成長した。アンチェロッティ政権時の4-4-2が肌に合わず調子を落としたものの、監督交代を機にポジションを修正されると、第21節のユヴェントス戦で貴重な先制点を奪うなど得点感覚と往時のキレを取り戻した。

「ラストパスの精度も上げろ」と注文は厳しいが、現監督ガットゥーゾの信頼は厚い。近年、ナポリのロッカールームからは前主将ハムシクや守護神レイナといった重鎮が次々と離脱した。入団4年目のジエリンスキは、現主将インシーニェとの連係を深めつつ、自分もリーダーシップを見せるときだと感じている。

 バルセロナとのカードが決まったあとには、こう豪語した。「勝てないと思うほうがおかしい。俺たちはリヴァプールを破っている。たとえバルサであろうが、恐れる必要なんかない」

文=弓削高志

『SOCCER KING』2020年3月号

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