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【CL展望】若者の“ノリ”はどこまで通用するのか|チェルシー

2020.02.25

[写真]=Getty Images

 2月15日に発売となった雑誌『SOCCER KING』3月号では、チャンピオンズリーグのラウンド16を完全プレビュー! 決勝トーナメントをより楽しむためのコンテンツをWebで一部公開します。

 こんなにも期待されずに、チェルシーがチャンピオンズリーグ決勝トーナメントを迎えるのはめずらしい。ロマン・アブラモヴィッチがクラブを買収して以降、16年間で16個もの主要タイトルを獲得してきたが、今シーズンのCLでは英国ブックメーカーから12番目の優勝オッズを付けられている。これほど下馬評が低いのは、彼らが悲願の欧州制覇を果たした2012年以来のことである。

 あのときだって、決勝トーナメント1回戦の1stレグでナポリに1-3の敗戦を喫した時点では、優勝など絵空事だった。しかしアンドレ・ヴィラス・ボアス監督の解任を機に快進撃が始まり、最終的には決勝でバイエルンを下して頂点に立った。そのファイナルで腕章を巻いていたのが、現在の指揮官フランク・ランパードだ。そしてチームの前には、再びバイエルンが立ちはだかる。

 しかし残念ながら、8年前との共通点はそれだけだ。当時のチェルシーには、ランパード以外にもアシュリー・コール、ペトル・チェフ、ディディエ・ドログバといった頼れるベテランがいた。だからこそ、決勝で出場停止となったジョン・テリーの穴は埋められた。一方で、現在のチェルシーは文字どおり若者の集団だ。タミー・エイブラハム(22歳)、メイソン・マウント(21歳)、カラム・ハドソン・オドイ(19歳)、リース・ジェイムズ(20歳)、フィカヨ・トモリ(22歳)といった“自前”の若手が名を連ねる。

 夏にエデン・アザールという絶対的なエースを失いながら、補強禁止処分により戦力補充も許されなかった。そんなチームを欧州ベスト16にまで導いたのは、間違いなく若い力だ。グループステージでは厳しい組に入り、初戦のバレンシア戦を落としたが、見事に昨シーズンの4強アヤックスを退けて突破してみせた。

 初戦の敗戦から立ち直れたのは、新顔の活躍があったからだ。第3節のアヤックス戦、終盤にミシー・バチュアイの決勝点をアシストしたのは新戦力のクリスティアン・プリシッチだった。続く第4節のリターンマッチでは、今シーズンにトップチームデビューしたばかりのジェイムズが同点ゴールを決め、4-4で引き分けた。最終節のリール戦では、すっかりエースに定着したエイブラハムが先制弾をマークした。

 ドルトムント時代にCLを経験しているプリシッチとは違い、昨夏までイングランドの2部に貸し出されていたジェイムズ、エイブラハム、マウント、トモリといった生え抜きにとってCLは未知の領域だ。そんな“まだ見ぬ世界への旅路”を、サポーターも一緒に楽しんでいる。先導役はランパードだ。彼は、昨シーズンのヨーロッパリーグ得点王であるオリヴィエ・ジルーや3度のCL制覇を誇るペドロをないがしろにしてまで若手を優先してきた。こんな冒険が許されるのは、彼がクラブの歴代最多得点を誇るレジェンドだからだ。

 ランパードの英断はイングランドフットボール界にとっては朗報だが、これで当分は欧州制覇を望めないだろう。勢いは、いつか止まる。新世代の選手たちは、前半戦を折り返したばかりだというのに、すでに好不調の波が見られる。「現役時代のランパードと同じように、若い彼らが肝心な終盤戦で存在感を発揮する」というストーリーは描きにくい。ほぼ全試合で起用されているマウントが最も躍動したのは体がフレッシュな秋口だった。エースのエイブラハムが一番ゴールを決めていたのは開幕から6週間だ。さらにエイブラハムは、12月のアーセナル戦でネットを揺らしたとはいえ大一番でのゴールが乏しく、バイエルン級の相手からゴールを奪った実績がない。

 現在のチェルシーには、8年前のような勝負強さは見られない。守備に目を向けても、10月下旬からの公式戦21試合で記録したクリーンシートはわずかに4回。セットプレーからの失点の多さも目につく。監督自身が「勝ち切る本能」の欠如を嘆いているが、その“本能”はそう簡単に備わるものではない。何度も言うが、相手はあのバイエルンだ。“ランパード・チルドレン”には、厳しい学びの場が待ち受けている。

【PLAYER FOCUS】GK 1 ケパ・アリサバラガ/13 ウィリー・カバジェロ

[写真]=Getty Images

 チェルシーが勝ち上がるためには、番狂わせが必要だ。だからGKの活躍は欠かせないのだが、今は誰がゴールを守るのかさえ分からない。これまでの守護神は2018 年夏に約100億円で加入したケパだった。しかし昨年のリーグカップ決勝で交代を拒んで非難を浴びて以降、不振に陥り、2月1日のレスター戦でとうとうスタメンの座を明け渡した。ケパのセーブ率「54 パーセント」はプレミアのレギュラーGKの中で最下位( 1月末時点)。さらに欧州7 大リーグで見ても全132名中、127 位だという。

 だからこそランパードは英断を下したのだが、今シーズン、プレミア初出場となったカバジェロもレスター戦で2失点。2点目は、ファーサイドに流れたクロスを中途半端に追ってゴールマウスを離れ、再びクロスを入れられてゴールを割られた。DF陣のマーキングの問題を指摘する声もあるが、ゴールが空になればマークよりもゴールマウスに意識が向くもの。だからカバジェロの判断ミスが招いた失点と言っていいだろう。結局、どちらが出場しても不安は拭えないが、GKが“当たって”いなければチェルシーに勝機はない。

文=リチャード・ジョリー
翻訳=田島 大

『SOCCER KING』2020年3月号

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By サッカーキング編集部

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