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【CL展望】守備の主力を欠くも埋めうる策はある|バレンシア

2020.02.19

[写真]=Getty Images

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 トッテナム、ナポリ、ドルトムント、リヨン、そしてアタランタ――。バレンシアが決勝トーナメント1回戦で対戦する可能性があったクラブだ。その中から引き当てたアタランタは、今大会屈指の攻撃力を誇る。

 セリエAでは、第22節を終えて最多の59得点をマーク。リーグ戦の平均得点(2.68)としては、今大会の決勝ラウンドに進出した16チームの中でバイエルン(2.9)、ドルトムント(2.8)に次いで3番目に多い(2月5日時点)。平均得点で1ゴール以上下回るバレンシア(1.5)がまともに打ち合っても勝ち目は薄く、セリエA最強との呼び声高い攻撃をいかに封じるかがカギとなる。

 しかし、彼らは戦う前から大きなハンデを負っている。DFガブリエウ・パウリスタがアヤックスとのグループステージ最終戦で一発退場となり、決勝トーナメント1回戦は2試合とも出場停止。さらに2月1日のラ・リーガ第22節でDFエセキエル・ガライがヒザに重傷を負い、シーズン絶望となった。大一番でレギュラーのセンターバック2枚を欠くことが決まり、アルベルト・セラデス監督は“プランB”の発動を余儀なくされている。

 トップチーム登録選手でセンターバックを本職とするのは、ほかにムクタル・ディアカビとエリアカン・マンガラの2人だけ。しかし今シーズン、彼らが同時にプレーしたのは、コパ・デル・レイのログロニェス戦(1-0)と前述のアヤックス戦(1-0)の2試合に過ぎない。前者は3部のクラブが相手であったし、後者に至ってはガブリエウが後半アディショナルタイムに退場したあとの、わずか1分間の共演にとどまった。連係を深める時間はほとんど残されていないため、彼らの同時起用は大きなリスクを抱えることになる。今シーズンはここまで公式戦4試合、計270分しかピッチに立っていないマンガラを、チームメートが信頼できるのかという疑問もある。

 そこで考えられるのが、フランシス・コクランのセンターバック起用だ。ボランチを本職とするものの、前所属のアーセナル時代、さらにバレンシア加入後もセンターバックとしてプレーした経験がある。その相手はバイエルン(CL)、マンチェスター・C(プレミアリーグ)、レアル・マドリード(ラ・リーガ)と強豪クラブばかりで、アタランタ戦で最終ラインに入ったとしても戸惑いはないだろう。

 身長は180センチ足らずとセンターバックとしては高さが足りないものの、フィジカルの強さとボール奪取能力の高さはチームトップクラス。リーダーシップもあり、最終ラインの統率者としても期待できる。ダブルボランチに入ることが濃厚なジョフレイ・コンドグビアとダニエル・パレホとは普段からプレーをともにしており、ディアカビ&マンガラのコンビに比べれば連係に不安がないのも大きなメリットだ。

 そもそも、守りに入ったときのバレンシアを崩すのは簡単ではない。中盤をフラットにした4-4-2の守備ブロックはスペイン屈指の強度を誇り、今シーズンのラ・リーガでは、第4節のバルセロナ戦こそ大敗を喫したものの、その後はアトレティコ・マドリード(1-1)、レアル・マドリード(1-1)、バルセロナ(2-0)と3強を相手にわずか2失点。主力センターバックの欠場というアクシデントを機に守りの意識が高まれば、アタランタといえども攻略は難しいはずだ。

 今シーズンを振り返ってみれば、バレンシアは今大会の開幕1週間前に監督交代を実施。セラデス監督は“ぶっつけ本番”に近い形でチェルシーとの初戦を迎えたが、敵地で1-0の完封勝利を収めてみせた。ベストメンバーを組めない今回も、限られた選択肢の中で最良の答えを導き出すことだろう。それがコクランのセンターバック起用であるかどうかはフタを開けてみないと分からないが、トライする価値は十分にあるはずだ。

文=北川紳也

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