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【CL展望】対リヴァプールにはカラスコがハマる|アトレティコ・マドリード

2020.02.18

 2月15日に発売となった雑誌『SOCCER KING』3月号では、チャンピオンズリーグのラウンド16を完全プレビュー! いよいよ始まる決勝トーナメントに向けて一部コンテンツを公開します。

 今シーズンのアトレティコ・マドリードは、とにかくゴールが奪えない。ラ・リーガ開幕22試合で22得点。1試合平均1得点は、今大会の決勝トーナメントに進出した16チームの中で断トツの最下位だ。ワースト2位のバレンシアでも1.5得点で、リヴァプール(25試合60得点)とは実に2.4倍もの差がある。

 アルバロ・モラタはチーム最多の7ゴールを奪っているとはいえ、ビッグマッチでの存在感は薄い。新エースとして期待された20歳のジョアン・フェリックスと三十路を過ぎたジエゴ・コスタに至っては、2ゴールと完全に期待外れだ。だからこそ、この冬は点取り屋の確保に狙いを定め、パリ・サンジェルマンのエディンソン・カバーニに白羽の矢を立てた―はずだったが、移籍市場の最終日にやって来たのはヤニック・フェレイラ・カラスコ(前大連一方)だった。

 26歳のベルギー代表アタッカーにとっては2年ぶりの古巣復帰となり、ファンにはうれしいサプライズとなったが、本命(9番)を取り損ねたことへの失望の声も当然ある。ただ、リヴァプール戦に限っては、カバーニよりもむしろカラスコのほうが相手に脅威を与えるかもしれない。

 カラスコの最大の特長はドリブルだ。両足を自在に操り、技術だけでなく馬力があって、縦への推進力も備えている。局面の打開力ではカバーニよりもカラスコのほうが上だ。一対一の勝負で負けることはほとんどない。

 リヴァプールの堅守を支えるのは強度の高いプレッシングだが、網が張られているのはあくまでピッチの中央で、サイドの守備はそれほど強固とは言えない。3トップの両翼に位置するモハメド・サラーとサディオ・マネは、カウンター攻撃に備えるために“前残り”を許されているからだ。その代わりに自分の背後のスペースに入られない立ち位置を取っているが、ここを突破されると、両サイドバックは一対一の状況に陥りやすい。フィルジル・ファン・ダイクやファビーニョのサポートを受けることで致命傷になる回数は少ないものの、リヴァプールの数少ない弱点の一つだ。その穴を突く選手としては、中央を主戦場とするカバーニよりも、サイドを本職とし、突破力に優れるカラスコのほうがベターだろう。

“シメオネ・スタイル”を熟知しているのもカラスコの強みだ。守備も献身的にこなすカバーニは、アトレティコの9番に適した選手だと言われるが、どんなストライカーであっても新天地への適応には時間がかかる。一方でカラスコは、“計算の立つ選手”だ。アトレティコでは前回在籍した2年半で指揮官が求めるハードワークをこなしつつ、2年目(16-17シーズン)には公式戦で14ゴールを挙げるなど、ゴールゲッターとしての才能も開花させた。

 中国行きは「都落ち」と揶揄されたが、2019年はリーグ戦25試合で17ゴール8アシストを記録し、ベルギー代表との両立のなかで際立ったパフォーマンスを見せた。アトレティコ復帰初戦となった2月1日の“マドリード・ダービー”は、2カ月ぶりの公式戦だったこともあって消化不良に終わったものの、今シーズン前半戦のプレー時間が456分(うちチャンピオンズリーグは40分)、11試合に出場して3ゴールに終わったカバーニと比べて大きくレベルが劣るとも思えない。

 もちろん欧州王者リヴァプールを相手に、とりわけ中国リーグとのインテンシティの違いに圧倒される可能性はあるが、そこは鬼軍曹で知られるシメオネのことだ。本番までに戦える状態に仕上げてくるだろう。

 得点力不足解消の目途は立っていないが、この舞台ではたった一つのゴールで勝ち抜けられる。今回もホームでの1stレグを0-0、敵地での2ndレグを1-1で乗り切ればベスト8進出だ。2試合で1ゴールを決め、2試合で1失点に抑えればいい。それでも難易度は高いが、守らせたら今でも欧州屈指のチームであるだけに、ワンチャンスをモノにすることはできる。カラスコに期待されているのは、まさにそこだ。

文=北川紳也

『SOCCER KING』2020年3月号

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