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【CL展望】万全の体制で体たらくに終止符を|パリ・サンジェルマン

2020.02.18

[写真]=Getty Images

 2月15日に発売となった雑誌『SOCCER KING』3月号では、チャンピオンズリーグのラウンド16を完全プレビュー! いよいよ始まる決勝トーナメントに向けて、一部コンテンツを公開します。

 2011年、QIA(カタール・インベストメント・オーソリティ)がクラブオーナーとなり、会長に就任したナセル・アル・ケライフィが「5年でビッグイヤーを手に入れる」と宣言してから、今シーズンでチャンピオンズリーグ参戦8年目を迎えた。

 ここまでの成績を振り返ると、最初の4年がベスト8、その後は3年続けてラウンド16で大会を去っている。会長は改めてこの挑戦がいかに厳しいものかを思い知っただろう。とりわけ16-17シーズンはバルセロナに、昨シーズンはマンチェスター・Uに、2ndレグで「ありえない」逆転劇をくらうという屈辱も味わった。

 そんな体たらくには終止符を打たねばなるまいと、今シーズンはインテルからFWマウロ・イカルディを獲得した。バルセロナに帰りたがっていたネイマールと引く手数多のキリアン・エンバペも残留し、この冬での移籍がほぼ確実と思われたエディンソン・カバーニまで必死に引き止めた。言わば万全の体制で決勝トーナメントに挑む彼らがまず戦うのは、指揮官トーマス・トゥヘルの古巣ドルトムントだ。

 12月に抽選が行われた時点で漂っていた楽勝ムードは、今年に入って変わってきている。敵陣にアーリング・ハーランドなる、とんでもないゴールマシンが加わったからだ。元ザルツブルクの超新星はグループリーグ8得点と、ロベルト・レヴァンドフスキに次ぐゴール数をマークしている。

 とはいえ、PSGの攻撃陣も決してヤワではない。イカルディ、ネイマール、エンバペにアンヘル・ディ・マリアを加えた攻撃ユニットにつけられた名前は、「ファンタスティック・フォー」。この4人を同時に生かす4-4-2が、ここ最近の定番システムだ。ディ・マリアはリーグ・アンのアシストランク首位につける好調ぶりで、中盤のマルコ・ヴェラッティ&マルキーニョスとホットラインを形成する。バックアップ要員には、クラブの歴代最多スコアラーのカバーニが控える。今シーズン加入した万能型MFパブロ・サラビアは、出場時間が限られながらも1月末時点で公式戦10ゴール5アシストと効率がいい。

 懸念は守備、特に中盤でのプレッシングが手薄になる点だろう。トゥヘルは、この布陣で攻撃システムを実現するには「ファンタスティック・フォー」の守備参加が絶対だと選手たちに言い含めているが、実際にはヴェラッティやマルキーニョス、イドリッサ・ゲイェらに相当な負担を強いている。決定力が高いストライカーが少ない国内リーグならともかく、CLではかなりの負荷がかかる。初戦の相手は前述のハーランドの活躍に触発され、チームの活気は増している。つまり、ドルトムント戦でのPSGの課題は、いかに守備を徹底するかだ。

 そんななか、要のマルキーニョスがクープ・ドゥ・ラ・リーグ準決勝戦でハムストリングを痛め、1stレグへの出場が微妙になった。チアゴ・シウヴァとアブドゥ・ディアロもコンディションが万全ではないという。マルキーニョスとT・シウヴァの2枚看板抜きでは、戦力は攻守ともにかなりダウンする。

 ただ、「ドローなら大金星」とばかりに守り一辺倒の相手と対戦することが多い国内戦と、ガチンコでぶつかり合うCLとでは、彼らの熱量はまるっきり異なる。CLでは「これが同じチームか?」と目を疑うほどのエネルギーを発揮したりもする。

 これまでベスト8より先に進めなかったのは、くじ運や采配ミスだけでなく、自分たちを信じ切る強さが欠けていたり、1stレグで勝利したことで気を緩めたりという未熟さが大きい。それを「経験不足」と呼ぶのだろうが、今シーズンの彼らにはビッグマッチ慣れしたネイマールがいる。途中で下げられると監督に食ってかかるほど負けん気の強いエンバペも、メラメラと闘志を燃やしているはずだ。次々と現れる、自分よりも若いストライカーに負けてなんかいられないと。

【PLAYER FOCUS】FW 10 ネイマール

ネイマール

 2月1日のモンペリエ戦で、突然頭を真っピンクに染め上げて登場した。そんなふうにしなくても、ピッチ上での彼はいつもキラキラと輝いているのに。今シーズンはケガの影響でスタートが遅れたが、完全復帰した12月以降は、出場したすべての試合でゴールかアシストをマークしている。

 最近定着している4-4-2の左サイドハーフが定位置だが、流動的な攻撃ラインで自在に動く。イカルディと並んでトップでプレーすることの多いエンバペに対し、少し深めの位置から送り出す極上のスルーパスは今シーズンの定番だ。本人も「コンディションは最高にいい」と話しているように、夏の移籍騒動からは完全に気持ちを切り替え、メンタル的にも充実している。

 ネイマールは、ピッチを離れると本当に子供っぽい。つい最近、バスケットボールの試合会場で見かけた彼は、マスコットを目で追いながらケラケラと笑っていた。その姿はとても28歳には見えなかった。だが、ひとたびピッチに立つと圧倒的なオーラを放つ。

 その強烈なカリスマ性は、かつて在籍したズラタン・イブラヒモヴィッチとも共通しているが、イブラはCLでは結果を残せなかった。では、ネイマールはどうか? 彼の真価は、リーグ・アンの舞台ではなく、これから始まる決勝トーナメントで試される。

文=小川由紀子

『SOCCER KING』2020年3月号

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