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混戦模様のグループは天国か? 地獄か? ベンフィカは“黄金カルテット”の代役次第で…

2019.09.13

[写真]=Getty Images

「大変面白いチームが揃った、非常に拮抗したグループだ」

 チャンピオンズリーグ(CL)・グループステージの組み合わせ抽選会を終え、ベンフィカのブルーノ・ラージュ監督は、自らが戦うグループの印象を語った。

 ポット1から先んじてロシア王者のゼニトが入ったグループGは、ポット2の全クラブが望む格好の穴場となった。そして、ポルトガル王者のベンフィカは、この楽園に運良く滑り込む。ここまでは文句なしのドローだった。しかし、ポット3からリーグアン3位で大会常連のリヨンを引き当てると雲行きが怪しくなる。しまいには、ポット4からブンデスリーガ3位のライプツィヒが同組に。絶対的な勝ち抜け候補がいない楽勝ムードのグループが、一転、4チームの実力が拮抗する「死のグループ」へと変貌した。

 ここは天国か、はたまた地獄か――

 ポルトガル国民もメディアも、同じような印象を抱いたことだろう。現地メディア『GoalPoint』は、Twitterアカウントで、ドローのたびに対戦相手を実況していたが、ゼニトとの同組が決まった際には、ブルーノ・ラージュ監督がにんまりと笑みを浮かべる写真を投稿した。しかし、リヨンを引き当てると監督の顔は呆然とした表情に変わり、残り1枠の対戦相手がライプツィヒに決まると、投稿写真のブルーノ・ラージュは、ショックのあまり両手でその顔を覆った。

大混戦でもベスト8進出に向けては「天国」

昨シーズンはベスト8に進出するなど、ELでは目覚ましい結果を残している [写真]=Getty Images

 ベンフィカにとって、グループ首位通過も最下位での敗退も、可能性としては“50:50”といったところだろう。それをひとつ裏付けるデータとして、対ゼニト戦は過去3勝3敗、対リヨン戦は過去1勝1敗と、完全なる互角だ(ライプツィヒは初対戦)。ポルトガルクラブの例年の成績からすると、ベンフィカにとって現実的な目標はベスト8進出。もし、ベスト8以上に進めば「快挙」であり、ベスト16進出までなら「平凡」、グループステージ敗退であれば「失敗」と言えるだろう。

 ベンフィカは、ヨーロッパリーグ(EL)では近年目覚ましい成績を残してきたが、CLではグループステージ突破が大きな壁となって立ちはだかっている。ELでは、2012-13シーズン、2013-14シーズンに2年連続で準優勝を果たし、昨シーズンには大会史上最年少ハットトリックを記録したジョアン・フェリックスの活躍もありベスト8まで進出した。一方で、CLは下記の通り2年連続でグループステージ敗退中だ。特に、2017-18シーズンには、6戦全敗の勝ち点0で大会を後にする屈辱を味わった。

<EL2年連続準優勝以降、直近のCL戦績>
12-13 グループステージ敗退
13-14 グループステージ敗退
14-15 グループステージ敗退
15-16 ベスト8敗退(対バイエルン)
16-17 ベスト16敗退(対ドルトムント)
17-18 グループステージ敗退
18-19 グループステージ敗退

 ちなみに、CLではバイエルンやドルトムント相手に決勝トーナメントで敗退し、昨シーズンのELはフランクフルトに敗れるなど、近年はドイツ勢に苦杯を舐めるケースが目立っている。だからこそ、ポット4からライプツィヒを引いてしまったのは、何とも印象が悪かった。

 さて、グループ1位も4位もどちらも可能性としては50:50とは前述したが、それはつまり、6戦全敗の歴史を繰り返す可能性もあるし、6戦全勝で3年ぶりのグループステージ突破を果たす可能性も同様にあるということだ。

 グループを戦っている間は確かに「地獄」だろう。しかし、ベスト8以上を常連とする絶対的な強者がいないからこそ、グループステージの先を見据えると希望の光が差し込む「天国」でもある。グループ首位突破が叶えば、ベスト16の対戦相手は別グループの2位。ベンフィカと実力が近いクラブになる確率が高まり、ベスト8進出に望みを繋げる。

「黄金のカルテット」を脅かすアタッカーの頭角がポイントに

元鹿島アントラーズのカイオをはじめ、新たなアタッカーの台頭が求められる [写真]=Getty Images

 ポルトガルリーグでも2連覇を狙うベンフィカにとって、CLとの両立はシーズンを通じた課題となるだろう。成功の鍵と言えるのは、もちろんスカッドの厚さだ。そして幸いにも、選手層の厚さは今季のベンフィカにとって強みとなりつつある。

 U-21ポルトガル代表にも選出された右サイドバックのヌーノ・タバレス、ボランチのフロレンティーノ・ルイス、ストライカーのジョアン・フィリペ(通称:ジョッタ)ら3選手、また、ぺぺの負傷離脱によってポルトガル代表にも選出されたセンターバックのフランシスコ・フェレイラ(通称:フェロ)など、1人や2人ではとどまらない多くのユース出身選手が、今季からトップチームのレギュラー格に成長。シーズン序盤にしてすでに長い1年を戦う戦力が整いつつあるのだ。

 しかし、未だ選手層が厚くなり切っていない「泣き所」があるのもまた事実だろう。

 4-4-2を基本布陣とするベンフィカにとって、最大のストロングポイントは前線の4枚。その中で、新シーズン開幕から1カ月が経過して、組み合わせの最適解は徐々に固定されてきた。昨季23得点を挙げてリーグ得点王に輝いたスイス代表ハリス・セフェロヴィッチ。エースとツートップを組む相棒は、レアル・マドリードから加入した新9番ラウール・デ・トマス。右サイドは、昨季のリーグアシスト王であり、今季は開幕から5試合で7ゴールと得点力にも年々磨きがかかる絶対的司令塔ピッツィ。そして左サイドは、21歳でブラジル・ワールドカップのポルトガル代表メンバーに選出され、昨季は17ゴールでリーグ得点ランキング3位に輝いた早熟のアタッカー、ラファ・シウバ。彼ら前線の4枚は、まさに“黄金のカルテット”とでも呼ぶべき、ブルーノ・ラージュ率いるベンフィカの顔だ。実際にポルトガルリーグ第4節終了時点で、チームが挙げた全11ゴールのうち、約6割にあたる7ゴールが4選手の得点によって生み出されている。

ラファ・シウバ、ラウール・デ・トマス、セフェロヴィッチ、ピッツィは攻撃の中心を担う“黄金のカルテット”だ [写真]=Getty Images

 このカルテットを脅かすほどの選手が登場しなくては、ただでさえ過密日程の中で、4チームの実力が均衡するグループステージを戦い抜くのは過酷だろう。だからこそ、今季手放したレギュラーポジションの奪還を狙うフランコ・セルビやジェドソン・フェルナンデス、選手としての再起を誓う元ミランのアデル・ターラブト、新天地での活躍に燃えるシキーニョ、カルロス・ヴィニシウスなど、各々異なるモチベーションを胸に秘める控えアタッカー陣の爆発が不可欠だ。特に、元鹿島アントラーズのカイオは、かつて2年連続EL準優勝に貢献したオスカル・カルドソの7番を継承した選手。欧州の大会で数々のゴールを挙げてきたレジェンドの活躍を思い起こし、新7番に期待するベンフィキスタも多いことだろう。

 ベンフィカは、昨季途中にブルーノ・ラージュが監督就任し、今季ポルトに敗れるまでリーグ22戦無敗と圧倒的な強さを発揮した。プレシーズンに行われたインターナショナルチャンピオンズカップでも、フィオレンティーナやミランなど、CL・ELクラスの強豪相手に白星を重ねるなど、国際大会での成功体験も着実に積み上げた。昨季のポルトガルリーグとELにおける好成績により、にわかに注目を集めてきた新進気鋭のポルトガル人監督が、いよいよ世界にその名を轟かせるのか。

 自身の監督キャリアで初となるCLへ。まずは今回大会で最も実力が拮抗するグループを足がかりに、ブルーノ・ラージュ率いるベンフィカの挑戦が始まる。

文=FutePor-ふとぽる-

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