2019.09.12

栄光の“トリプレーテ”から10年…闘将率いる新生インテルが「刺激的なグループ」に挑む!

[写真]=Getty Images
1973年生まれ宮崎県出身。地元の出版社を経て、2001年に単身イタリアへ渡る。以降、セリエAやチャンピオンズリーグ、イタリア代表を中心に取材している。

 アルフレッド・ノーベルが、それまでの常識を覆す高性能爆薬ダイナマイトを発明したのは、1867年のことだ。ダイナマイトはその後の大戦に使用され、世界を一変させた。


 今季からインテルを率いる闘将アントニオ・コンテはスポーツ運動学の学位も持っているが、ノーベル賞には興味がない。コンテの興味はインテルをどう“爆発”させるか、という一点にのみ向けられている。

「我々は小っちゃな花火で終わってはならない。インテルはダイナマイトになるのだ」

 チャンピオンズリーグ(CL)という戦場に乗り込むインテルは、列強クラブの勢力図を塗り替える可能性を秘めている。

強豪揃いも“験担ぎ派”にとっては良いグループ?

インテルはCLグループステージで、バルセロナ、ドルトムントら強豪と同組に [写真]=Getty Images


「強豪揃いで刺激的なグループじゃないか」

 グループステージは、バルセロナやドルトムントと同組に入った。イタリア風に言うなら“鉄のグループ”と呼ぶべきタフな組合せだが、「厳しいのはうちにとってだけじゃない、あちらさんにとっても同じだ」とコンテはあくまで不敵だ。

 昨季もグループリーグで同居したバルセロナは、FWアントワーヌ・グリーズマンやMFフレンキー・デヨングらを補強し、今季も大会優勝候補の1つに数えられている。昨季大会得点王の座を取り戻したエースFWリオネル・メッシは健在だが、過去2シーズンでローマとリバプールから喫した大逆転敗退のトラウマは今もあり、付け入る隙はある。

“験担ぎ派”のインテリスタにとっては、ドルトムントは歓迎すべき相手かもしれない。欧州カップ戦での2度の対戦歴を辿ると、インテルはそのいずれのシーズンでも欧州タイトルを獲得しているからだ(※1963-64=旧チャンピオンズカップ、1993-94年=UEFAカップ)。

 残るスラビア・プラハは、12年ぶり2度目の大会出場。プラハからの2勝・勝点6は、決勝トーナメント進出への最低条件になる公算が高い。

 インテルが本拠地サン・シーロに優勝候補バルセロナを迎えるのは12月10日の最終節だが、最終的にスラビア・プラハとの得失点差が明暗を分ける可能性もある。

 昨季、名門インテルは7シーズンぶりに大会へ臨んだ。決勝トーナメント8強の常連だった時代は一昔前の話になり、ベスト16入りとなると2011-12シーズンにまで遡らなくてはならない。

大型補強と闘将は精神的脆さを克服できるのか

オフには約200億円を投資し、ルカクらを大型補強を敢行 [写真]=Getty Images


 智将ルチアーノ・スパレッティの指揮で戦った昨季の大会には大きな悔恨が残った。

 グループステージ最終節終了後、トッテナムと勝点8で2位に並んだインテルは、直接対決の結果で1勝1敗と互角ながら、アウェイゴール差で敗退の憂き目に遭った。さらに、そのトッテナムがファイナリストにまで上り詰めたものだから「あそこがいけたのならうちだって……」という、インテリスタたちの忸怩たる思いたるや相当なものだった。

 だからこそ彼らは、大舞台での精神的脆さを指摘され続けてきた幼稚なチームを闘将コンテが生まれ変わらせると期待せずにはいられないのだ。

 今夏の移籍市場では200億円近い資金をつぎ込み、FWロメル・ルカクやDFディエゴ・ゴディンなどワールドクラスのプレーヤーを集め、チーム戦力は一新された。若き張会長は太っ腹な分、野心も大きい。ミラノの名門は欧州最高峰の舞台での失地回復に挑む。

コンテ監督にとっても言い訳ができない大会に

新指揮官のコンテ監督はヨーロッパのコンペティションは得意としていない [写真]=Getty Images


 セリエAとプレミアを制したコンテは、インテルに“勝者のメンタリティ”注入を期待されている。ただし、彼が欧州カップ戦の舞台でそれを十分に発揮してきたとは言い難い。自らの指導力と結束力がモノをいう長丁場の国内リーグ戦と違い、“一発勝負の連続決戦”といった性格の強いCLやヨーロッパリーグ(EL)をコンテが得意としてきたわけではないことは闘将自身の戦績に現れている。

[Juventus 2011~2014]
2011-12 不出場
2012-13 CLベスト8敗退
2013-14 CLグループリーグ敗退/ELベスト4

[Chelsea 2016~2018]
2016-17 不出場
2017-18 CLベスト16敗退

 特に古巣ユーヴェでの3年目にあたる2013-14年シーズンは印象深い。大雪のイスタンブールで戦ったCLグループステージ最終節に、ガラタサライから残り5分で逆転敗退を喫した。

 その後に回ったELでは、ホームの「アリアンツ・スタジアム」がファイナル会場を招致していたこともあり、優勝の有力候補に挙げられた。だが、ベンフィカとの準決勝ではホームでの2ndレグで1ゴールも奪えずに大きな失望を味わった。この頃には、コンテの“欧州カップ戦アレルギー”が盛んに議論されたものだ。

 古巣ユヴェントスの経営体制が今ほどの高収益・高投資のサイクルになかった当時、欧州ビッグクラブとの資金力の差に苛立ったコンテが「財布に10€しかない者は客単価100€のレストランには入れない」と嘆いたこともあった。だが、今季は前述したように潤沢な資金の補強体制が約束され、チーム作りの障害だったFWマウロ・イカルディ(現 パリ・サンジェルマン)やラジャ・ナインゴラン(現 カリアリ)、イヴァン・ぺリシッチ(現 バイエルン)といったロッカールームの不穏分子たちの一掃にも成功した。国際舞台に挑む資金力や経験が不足している、という言い訳はきかない。今季のCLは、闘将にとって自分自身を越えるための大会でもあるのだ。

開幕戦は4-0で快勝。続く第2節も勝利し上々のスタートを切った [写真]=Getty Images

 ちょうど10年前のシーズンに、栄光の“トリプレーテ(3冠=CL、スクデット、コッパ・イタリア)”を達成した副会長ハビエル・サネッティは大会の展望をこう見据える。

「グループステージのライバルたちはどこも強豪だが、我々の大会での道のりを考えればよくぞ当たってくれたと言いたい。大会の主役を張ろうと思えば、これは越えるべきハードルだろう。CLは決勝トーナメント以降ガラリと性格が変わる特殊な大会。まずはグループ突破が目標だ」

 レッチェとのセリエA開幕戦には、サン・シーロに国内最多の6万4188人が詰め掛けた。17日に控えるスラビア・プラハとのCL開幕戦でも、インテリスタたちの圧倒的熱気はチームと闘将を後押しするだろう。広大なヨーロッパを横断するCL戦線に今季、ネラッズーロ(黒・青)の爆炎が上がるにちがいない。

 インテルの導火線は、もう着火している。

文=弓削高志

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