2019.09.11

CL勝利へのカギは“プランB”?…昨季ベスト4・アヤックスが秘める再躍進への可能性

[写真]=Getty Images

 昨シーズンのアヤックスはチャンピオンズリーグ(CL)でベスト4進出を果たし、欧州を震撼させた。ここまでの好成績は誰も予想してなかったが、1年前のオランダでの下馬評は「グループリーグ突破の可能性は十分あり。ラウンド16の組み合わせに恵まれればベスト8もあり得るだろう」と高かった。それだけ昨季のCL予選・プレーオフでアヤックスが披露したパフォーマンスは圧巻だった。


 今シーズンもアヤックスは無事にCL予選、プレーオフを勝ち抜き、グループステージに駒を進めた。そこで明らかになったのは、「アヤックスはまだ、チームビルディングの最中である」ということ。今、エリック・テン・ハーフ監督は“プランA”の構築に知恵を絞っている。

難問に苦戦する様を象徴した一戦

昨シーズンの大躍進を支えたデ・ヨングとデ・リフトはともにチームを去った [写真]=Getty Images


 昨季の看板選手2人、フレンキー・デ・ヨング(現 バルセロナ)、マタイス・デ・リフト(現 ユヴェントス)を手放すことになるのは予め分かりきっていた。「さらに、どれだけ主力が抜かれるか?」というのが、この夏の移籍市場の不安材料だった。草刈場になることもありえた懸念を鑑みれば、レギュラークラスではラセ・シェーネ(現 ジェノア)、セミレギュラークラスではカスパー・ドルベリ(現 ニース)の放出に留まったのはフロントの努力の成果だろう。

 それでも、デ・ヨングとショーネが抜けたMF、デ・リフトが欠けたDFを、いかに再編成するか――という難問の答えはまだ出てない。そのことを象徴する試合が、CLプレーオフ1stレグ、敵地でのアボエル戦だった。アヤックスはなんとか0−0の引き分けに持ち込んだが、もらったイエローカードが実に7枚(うちノゼア・マズラウィは2回の警告で退場処分)に及んだほどの苦しい試合だった。

 4バック(マズラウイ、ジョエル・フェルトマン、デイリー・ブリント、ニコラス・タグリアフィコ)が5枚、コントロールMFを務めたラズヴァン・マリンが1枚と後方の選手だけで計6枚ものイエローカードが飛び交った。試合後、アヤックスの選手の口からレフェリーへの不満の声が口々に出たが、実際には…
・アヤックスのサッカーにとって根幹となるビルドアップが不安定であること
・個人的なボールロストから慌てて相手をファールで止めていること
・自チームの攻撃中、ないしはボールポゼッション時に、守備の備えが出来てないこと
といった技術的・組織的ミスが発端となって受けたカードだった。

 この試合のアヤックスは〈コントロールMF/マリン&ブリント、トップ下/ドニー・ファン・デ・ベーク〉という中盤だった。このときの反省を活かし、テン・ハーフ監督は2ndレグに向けて〈コントロールMF/ファン・デ・ベーク&リサンドロ・マルティネス、トップ下/ハキム・ツィエク〉という中盤に作り変えようとしていた。しかし、ファン・デ・ベークが故障したことから、実際の試合ではマルティネス&エドソン・アルバレスという、CBとしても能力の高い2人がコントロールMFとしてコンビを組むことになった。その結果、アヤックスはアポエルに枠内シュートを打たせることなく試合を有利に進め、2-0で完勝した。ちなみに奪った2得点は両方ともリスタート(FK、スローイン)から生まれたもので、手堅いサッカーが光る試合となった。

“プランB”を実現する多機能プレーヤーの質と量

タディッチ(左)、シェーネ(右)らをコンバートした“プランB”で結果を残してきた [写真]=Getty Images


 ヨーロッパリーグでアヤックスが決勝まで進んだ3シーズン前、当時のピーター・ボス監督(現 レヴァークーゼン)がヴィレムIIとのカップ戦でシェーネをコントロールMFに置いたことがチームの転換点となった。昨季はテン・ハーフ監督がCLグループステージのバイエルン戦で、左サイドのドゥシャン・タディッチを偽のストライカーにコンバートする“プランB”が生まれた。

「今季のアヤックスは、もしかしたらマルティネス&アルバレスの中南米コンビをコントロールMFとする策は、“シェーネのコントロールMF”“タディッチの偽ストライカー”に匹敵するプランになるかもしれない」――。アポエルとの2ndレグ後にはそうした声が挙がっていた。

 今のアヤックスは、なるべく早く最適解の11人を定めてオートマティズムを作りたいところ。確かに、アポエル戦の成功体験から、マルティネス&アルバレスをコントローラー役とするチームビルディングを進める可能性はある。加えて今季のアヤックスは多機能プレーヤーの質・量がともにすごい。新加入組のうち、マルティネスはCB、左SB、MF、アルバレスはCB、右SB、MF、セビージャから加入したクインシー・プロメスは左右ウイング、MF、右SBをなんなくこなす。アカデミーから昇格したセルジーニョ・デストは左SBでデビューし、今は右SBとして貴重な戦力になっている。

 さらに、フェルトマン(右SB、CB)、ブリント(CB、MF)、ノゼア・マズラウィ(右SB、MF)、ファン・デ・ベーク(MFの全ポジション)といった選手や、タディッチ、ツィエク、ダヴィド・ネレスといったひっきりなしにポジションチェンジを繰り返すアタッカー陣がいる。こうした選手たちに囲まれてFWクラース・ヤン・フンテラール、GKアンドレ・オナナらの技がさらに引き立つのである。

 今季のアヤックスは“プランA”からシステムをどんどん発展させることができるポテンシャルを秘めている。だが、プラン構築が中途半端に終われば、アポエルとの1stレグのような喧嘩ファイトになる試合も出てくるだろう(もしかしたら今季のアヤックスは喧嘩ファイトも“プランX”と呼べるかもしれない)。

 チェルシー、バレンシア、リールと同じグループに入ったアヤックスは「グループウィナーになる可能性がある」という声が挙がる一方で「最下位もあり得る」と見る向きもある。昨季のような「グループウィナーはバイエルン決まり。AEKアテネは力が劣る。アヤックスは2位をベンフィカと競う」といったハッキリした予想がたてにくい。現時点で未知数なアヤックスのサッカーは、実行される“プラン”によっては再躍進の可能性も秘めているのだから。

文=中田徹

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