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【コラム】悲願の欧州制覇を狙うユーヴェ。カギを握る“守備のエース”キエッリーニ

「ボヌッチとキエッリーニは、ハーバード大学で授業を持つことができるはずだ」。チャンピオンズリーグ・グループステージ第3節のユヴェントス戦終了後、マンチェスター・Uの指揮官、ジョゼ・モウリーニョがこう舌を巻いた。当然、アメリカ最古の名門大学で講義するのは、経営学でもなければ、医学でもない。サッカー、それも守備のイロハについてだ。

 イタリア人のこの2人、とりわけジョルジョ・キエッリーニは、マンチェスター・U戦でこれ以上ないパフォーマンスを披露した。対峙したベルギー代表のロメル・ルカクを完封。ゾーンディフェンスでありながら、マンツーマンであるかのように、巨漢FWをほぼ完全に無力化した。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』もこの試合のキエッリーニをこう評価。「スイス特急よりも速かった。マタのパスをインターセプトし、―難しいミッションであった―ルカクとのフィジカル・バトルに勝利した」とし、MOMのクリスティアーノ・ロナウドと並ぶ「7.5」の高い採点を付けている。

キエッリーニ

集中したディフェンスで相手FWルカクに仕事をさせなかった [写真]=AMA/Getty Images

 そのキエッリーニは試合後、「前半は相手に攻撃の起点を作らせなかった。悔やまれるのは1-0に終わったことだけだ。後半は足が止まってしまい、あまりにも多くのミスを犯した。相手はカウンターで威力を発揮してきた。この点について改善する必要がある」と反省の弁を忘れず、謙虚な姿勢を見せていた。

 モウリーニョが、レオナルド・ボヌッチとキエッリーニはハーバード大学で教授になれると称したのは、特別な意図があったわけではなく、単なる称賛であったのだろう。しかし、キエッリーニは実際、トリノ大学で経営学を学び、見事に卒業を果たした秀才でもある。ピッチの上では、荒々しく、狡猾で、無骨なイメージしかないキエッリーニが大学卒業資格を有しているというのは驚きかもしれないが、「国際基準におけるユヴェントスのビジネスモデル」を論文とし、110点満点で2010年に卒業している。

 イタリアで大学を卒業するのは極めて難しい。日本のようにスポーツ推薦で入学できるような枠もなく、普通高校ですら卒業したサッカー選手は非常に珍しいのだ。最近のイタリアでは、ラツィオやアタランタで活躍し、ユヴェントスでもプレーした経験を持つグリエルモ・ステンダルドが2014年にマルタ大学でスポーツ法学を学び、法学部を卒業しているが、これもレアケースだ。

 昨シーズンまでユヴェントスでチームメイトだったクラウディオ・マルキージオはキエッリーニについてこのように回想している。「通常の社会人学生よりも多くの時間を割いたが、たくさんの犠牲を払って見事に卒業した。移動のバスや飛行機の中だけでなく、チャンピオンズリーグの試合の前にも本をめくり、勉強している彼を見たよ」。マルキージオは17歳の時にサッカーとの両立が難しく、測量技師の専門学校卒業を志半ばで断念しいる。それだけに、キエッリーニの弛まぬ努力と強い意志に感服したのだろう。

 今シーズンからジャンルイジ・ブッフォンの後継者として主将を担うキエッリーニは、今年8月に34歳の誕生日を迎えている。それでも、チームメイトのボヌッチと並び、イタリア最高のDFであることは間違いない。ボヌッチはとりわけ足元の技術に秀でるが、対人能力の面だけを考えれば、キエッリーニがイタリアの“ヌメロ・ウーノ(ナンバー・ワン)”であることは揺るがない。

キエッリーニ

今シーズンはキャプテンとしてチームをけん引 [写真]=Juventus FC via Getty Images

 元々は左サイドバックで豪快な攻め上がりを持ち味としていた。お世辞にもパオロ・マルディーニのような華麗な選手とは言い難く、攻撃参加する姿はまるでゼンマイ仕掛けのブリキのおもちゃが高速で走るかのように滑らかさを欠くものだが、守備力は一級品で、相手との駆け引きに長けていた。ここ数年は持ち前のハードマークに加え、ボール扱いの技術も向上し、失点につながるような凡ミスも少なくなった。ただ、筋肉系の負傷が多く、疲弊したシーズン終盤に何度も戦列離脱を余儀なくされている。ここ4シーズンは、いずれも終盤戦に欠場を強いられた。ユヴェントスのセンターバック陣は、キエッリーニとボヌッチのほか、アンドレア・バルザーリダニエレ・ルガーニメディ・ベナティアといった充実の控えを擁するが、やはり、今のキエッリーニほど相手選手に蛇蝎のごとく嫌われる選手はいない。まさしく守備のエースだ。今シーズンは1年をケガなく乗り切ることができるかが、キエッリーニにとっての大きな課題となるだけでなく、ユヴェントスにとっての悲願である欧州制覇にも影響を及ぼすことになるだろう。

文=佐藤徳和/Norikazu Sato

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