2018.09.19

完璧な面子を揃えついに始動…大願成就へ“一体”となったイタリア王者

ユヴェントスはフロント、監督、選手が一体となり悲願の欧州制覇に挑む [写真]=Getty Images
サッカーライター。雑誌や書籍の編集、企画&構成などに携わる。

 もしもあなたがユヴェントスの熱烈なファンであるとして、あるいはクラブの幹部であるとして、いったい何を思うだろうか。

2011-12 セリエA:優勝 コッパイタリア:準優勝 CL:-
2012-13 セリエA:優勝 コッパイタリア:ベスト4 CL:ベスト8
2013-14 セリエA:優勝 コッパイタリア:ベスト8 CL:GL敗退
2014-15 セリエA:優勝 コッパイタリア:優勝 CL:準優勝
2015-16 セリエA:優勝 コッパイタリア:優勝 CL:ベスト16
2016-17 セリエA:優勝 コッパイタリア:優勝 CL:準優勝
2017-18 セリエA:優勝 コッパイタリア:優勝 CL:ベスト8

 ユヴェンティーノになりきることが難しければ、自らの“推しクラブ”における過去7年間の戦績と思ってにらみ続けてほしい。しばらくすると、ジワジワと、ふつふつと、メラメラと、ある思いがこみ上げてくるに違いない。

「チャンピオンズリーグ、マジで獲りてえ……」

 アンドレア・アニェッリ会長やジュゼッペ・マロッタCEO兼GMをはじめとする本物の幹部たちの熱意は、おそらく「マジで」どころの騒ぎではない。

 2011-12シーズンからの3年間は、まだいい。

 2012年夏にアレッサンドロ・デル・ピエロが去ったクラブは、ついに本格的な変革期を迎え、最低限の結果を出しながらクラブの“イズム”を継承することに全力を注いだ。2011年から3シーズン連続のスクデット獲得は、ライバルの失態によってもたらされたものだ。無理もない。セリエAは過去30年における最停滞期で、カネも人気もなく、スクデットにふさわしい戦力を揃えられるクラブはユヴェントスの他になかった。(ユヴェントスにとっては2006年に発覚した“カルチョポリ”以降、欧州において本格的な復権を遂げるための準備期間に過ぎなかったとしても)

 だからこそ、準備が整った2014-15シーズンからの4年間は、過去3年間とは意味合いが異なるのだ。それでいて、チャンピオンズリーグ(CL)だけはどうしても獲れなかった。

完璧な陣容を揃えても叶わなかった欧州制覇

「ユーヴェ有利」と予想された2017年のCL決勝は、ジダンとロナウドの前に夢破れる結果に [写真]=Getty Images

 2014-15シーズンはファイナルに進出したものの、バルセロナとの力の差は歴然としていた。ベスト16でバイエルンに屈した2015-16シーズンは、ほんのわずかな運が足りなかった。

 次の2016-17シーズンは過去4年間におけるハイライトだ。ゴールマウスには「円熟」以上に熟したジャンルイジ・ブッフォンがいた。最終ラインには堅守の象徴である“BBC”(バルザーリ、ボヌッチ、キエッリーニ)がいた。中盤にはローマから強奪したミラレム・ピアニッチと大舞台に強いサミ・ケディラがいて、右サイドにはダニエウ・アウベスも加わった。さらに、前線には約120億円を費やして獲得したゴンサロ・イグアインがいて、一直線にスターダムを駆け上がろうとするパウロ・ディバラもいた。その勝ち上がり方には全盛を極めた90年代の迫力があり、ファイナルでレアル・マドリーを相手にしても「ユーヴェ有利」の声が過半数を超えた。

 ついに来た。この時が来た。セリエBに降格しても忠誠を誓った世界一の守護神ブッフォンが、あるいは現役時代の夢を幹部になっても追い続けるパヴェル・ネドヴェドが、ビッグイヤーを掲げるその瞬間が――。

 しかしその野望は、かつてゼブラを身にまとったジネディーヌ・ジダンの華麗なる采配と、クリスティアーノ・ロナウドの奇跡みたいな決定力に打ち砕かれた。欧州制覇の可能性を誰もが現実的に感じていたからこそ、そのショックはあまりにも大きかった。

勝者のメンタリティーを取り戻させた指揮官と応えたフロント

CL決勝で敗れて迎えた昨シーズン。主力数名が去り、高齢化も懸念されながらリーグ7連覇を達成した [写真]=Getty Images

「ここまで準備を整えて、それでも勝てないのか…」

 誰もがそう思っただろう。事実、夏のマーケットではネガティブな動きが続いた。

「ハッピーじゃなかった」という痛烈な言葉を残して、ダニエウ・アウベスは可能性に見切りをつけた。最終ラインの絶対的なリーダーだったレオナルド・ボヌッチは、別のモチベーションを見つけてミランに移籍した。ジョルジョ・キエッリーニとアンドレア・バルザーリは30代中盤と後半に突入し、チームのアイコンだったBBCはついに崩壊した。ブレーズ・マテュイディやドウグラス・コスタの獲得は結果的に成功したが、未知数な部分が大きいリスキーな補強だった。

 だからこそ、あの敗北を経験してなお勢いを止めず、踏ん張り、強引な手法でさらなるパワーアップを促したフロントの手腕は特筆に値する。

 最高の一手は指揮官、マッシミリアーノ・アッレグリとの契約延長だ。“モチベーションのコントロール”という意味では過去10年で最も難しかったはずの昨シーズンを、アッレグリは見事に乗り切った。リーグ7連覇における最高の功労者は指揮官だ。CLはまるで映画のようなC・ロナウドのオーバーヘッドに沈んだものの、一度は意気消沈したチームに勝者のメンタリティを取り戻させた功績はあまりにも大きい。

 迎えた今シーズン、指揮官のその思いにフロントが応えた。グループステージの組み合わせ抽選直後、マロッタGMは言った。

「我々が優勝候補であるという事実を隠すことはできない。C・ロナウドの獲得? アニェッリ会長の希望だ」

 C・ロナウドは2年連続でユヴェントスを失意の底に突き落とした張本人である。移籍金は約130億円。FIFAの規定で支払う手数料は約16億点。年俸は約40億円。しかも4年契約。33歳に提示するオファーとしてはあり得ない条件だが、33歳であってもC・ロナウドは「世界最高」の1人で、欧州制覇を成し遂げるために何としても手に入れたい戦力と考えたのだろう。アニェッリ会長の発想は普通じゃない。しかし、シンプルかつ大胆で、確かにC・ロナウドはユヴェントスにとっての最適解となる可能性が他の誰よりも高い。

本番は2月以降もチームと新エースは最高のスタートを切った

2月以降の本番を見据え、アッレグリ監督は数ある手駒から“ベスト”な布陣を模索している [写真]=Getty Images

 スロースターターのユヴェントスにしては、立ち上がりから好調だ。セリエAではキエーヴォ、ラツィオ、パルマ、サッスオーロを相手に4連勝で首位に立ち、サッスオーロ戦ではC・ロナウドが待望の初得点を含む2得点を記録した。

 現時点で、アッレグリの頭の中にあるファーストチョイスは以下のとおりだ。

<4-3-3(同ポジションは右から)>
GK:ヴォイチェフ・シュチェスニー DF:ジョアン・カンセロ、ボヌッチ、キエッリーニ、アレックス・サンドロ MF:ケディラ、ピヤニッチ、マテュイディ FW:フェデリコ・ベルナルデスキ、マリオ・マンジュキッチ、C・ロナウド

 ただし、ここ数年アッレグリは“最初”と“最後”を同じシステム、同じメンバーで終えたことがない。シーズン前半戦は“探り”の時期で、1月いっぱいを目処に“ベスト”を見極める。本当の意味での本番はCLの決勝トーナメントが始まる2月以降で、ベストを固めてからのユヴェントスは圧倒的に強い。勝者のメンタリティーの発揮しどころでもある。

 おそらく今シーズンも、戦いの中でメンバーとシステムは変化するだろう。特に中盤から前の構成には手を入れるはずで、ディバラを筆頭に、現時点で名前のないドウグラス・コスタやエムレ・ジャン、マッティア・デ・シリオ、ファン・クアドラードといった面々は必ず絡んでくるだろう。もっとも、“ベスト”を引き出すための基準が「C・ロナウドの決定力を最大限に引き出す」ことにあることだけは間違いないのだが。

グループステージの苦戦は想定内(?)もレアルを倒すのは「俺たちだ」

9月16日のリーグ戦ではロナウドが移籍後初ゴールをマーク。悲願の欧州制覇へ準備は整った [写真]=Getty Images

 マンチェスター・ユナイテッド、バレンシア、ヤングボーイズと強豪が顔を並べる予選リーグでは、おそらく苦戦するだろう。3、4節で迎えるマンチェスター・ユナイテッドとの連戦が突破を左右するターニングポイントだ。マロッタGMは言った。

「突破可能なグループだが、全ては私たち自身にかかっている。運命は我々の手の中にある。グループステージ突破のためのスキル、確信、方法を持っている」

 ユヴェントスにとってグループステージの苦戦は“想定内”で、ベストを探る調整段階においても「なんとか2位以内」を確保できるのがこのクラブの強みだ。本番は、あくまで2月以降。いつも通りの流れでグループを悠々と突破できる自信がなければ、破格のオファーを提示してまでC・ロナウドを連れてくるはずがない。

 レアル・マドリードの主将セルヒオ・ラモスは「ライバル」としてバルセロナを挙げたが、もしもあなたがユヴェントスの熱烈なファンであるとして、あるいはクラブの幹部であるとして、いったい何を思うだろうか。

 きっと、ニヒルな笑みを浮かべて拳を握りしめるに違いない。「お前らを倒すのは、俺たちだ」と。

文=細江克弥

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