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【コラム】バルサファンに新しく刻まれた“年号”…CL敗退で見えた「問題点」とは?

2018.04.15

まさかの大逆転を許してしまったバルサ [写真]=UEFA via Getty Images

 バルセロニスタに新たな年号が刻まれた。「2018 ローマ」。ほんの3年前までは、歴史のテスト前の学生のように、彼らは歓喜の年号をそらんじていた。「1992 ウエンブリー」、「2006 パリ」、「2009 ローマ」、「2011 ウエンブリー」、そして「2015 ベルリン」だ。

 バルセロナがビッグイヤーを掲げた年号と場所をバルセロニスタは覚えている。彼らは3年前、今後も別に出題されるわけでもないのに、覚えなければならない年号と都市名はもっと増えるだろうと考えていた。

「レアル・マドリードが20世紀最高のクラブ? 白黒で最高のクラブだったってだけだろ。カラーテレビになってからの優勝回数をカウントしてくれよ。21世紀になってから、最もチャンピオンズリーグ(CL)勝ち取っているクラブはどこだよ? 4回のバルサだよ」

 バルセロニスタは今そんなことを声高には言えないし、事実は更新された。レアル・マドリードは21世紀になってから昨シーズンの連覇を含め、すでに4度欧州王者に輝いており、21世紀におけるバルセロナの優勝回数に並んだ。通算優勝回数は見るまでもなく、憎きライバルに対して、バルセロニスタはいちゃもんをつける口実が何ひとつないのが現状だ。たったひとつできることは、レアル・マドリードが欧州を制覇しないことを願うことだけ。そうでなければ、いくらリーガの覇権を取り返そうが、コパ・デル・レイを4連覇しようが、獲得したタイトルは、欧州3連覇の前では霞んでしまうからだ。

 バルセロニスタは、年号と都市名を最近は全く反対の意味をもって記憶している。「2016 マドリード」、「2017 パリ」、「2017 トリノ」。今週加わったのが、冒頭の「2018 ローマ」だ。

 2016年はマドリードで行われた準々決勝セカンドレグのアトレティコ・マドリード戦、0-2でなす術なく敗れた。2017年は決勝トーナメント1回戦でパリでパリ・サンジェルマンに0-4で負けた。大敗後にセカンドレグで6-1と奇跡の大逆転をやり遂げたが、準々決勝ファーストレグではトリノでユベントスに0-3と大敗した。

 今シーズンのバルセロナのCLも、準々決勝で唐突に終わる。ホームでのファーストレグを4-1で勝利していたが、永遠の都で行われたセカンドレグでは0-3の大敗を喫し、劇的な形でローマが準決勝進出を決めた。

 バルセロナは欧州の舞台で、歴史的な敗戦をアウェイで繰り返している。今シーズンの惨敗は、最も衝撃的だ。バルセロナ寄りのスペイン紙「スポルト」は抽選の結果、準々決勝の対戦相手がローマに決まると1面で「チョコレート(甘い贈り物という比喩)」と見出しで「バルサに笑みがこぼれる幸運な抽選で、3冠の夢が見えてきた」と報じた。抽選前にバルセロニスタは「どうせレアル・マドリードがいつものように1番楽なローマと対戦するようになるんだろう」と皮肉っていたが、紙面が示すように理想の相手と対峙するようになったのは自分たちだった。しかし、それがフタを開けてみれば、歴史的な敗戦だ。

 敗れた直後から地元メディアでは敗因探しが始まった。敗因は根深く、要約するとこうなる。

 今のバルセロナはかつての世界中を魅了したスタイルはなく、結果だけを残すチームになってしまった。しかも結果はリオネル・メッシがピッチで活躍した時だけで、メッシがいなければ、周囲のメンバーは豪華でお金をかけているが、並のチームとなってしまう。かつてのバルセロナには確固たる信条とスタイルがあり、そこにメッシという稀代のタレントが加わり、世界を席巻した。メッシがいなくともシャビ、アンドレス・イニエスタが君臨しピッチを支配した。かつては内容でも結果でも相手を凌駕していた。今シーズンのバルセロナは、勝ち星を重ねているが、内容で相手を圧倒したゲームは少ない。リーガでは31節無敗と順調だが、欧州最高の舞台ではメッシだけで勝利できず。疑いなく世界最高の選手であるメッシを擁しても、3シーズン連続で準決勝進出を逃しているという事実は重い。

 チームの問題点はどこにあるのか。

 ある地元メディアは「2015 ベルリン」と「2018 ローマ」のスタメンを比較することで敗因を探った。2015年にいて、2018年にいないのは3人だけ。ネイマール、ダニエウ・アウヴェス、ハビエル・マスチェラーノの3人だ。彼ら以外は同じ8人が並んでいる。その8人は今年5月で34歳になるイニエスタ、今年6月で31歳のメッシ、31歳のジェラール・ピケとルイス・スアレス、7月に30歳になるセルヒオ・ブスケツ、30歳のイヴァン・ラキティッチ、29歳のジョルディ・アルバ、そして26歳のマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンだ。黄金時代を築いた選手たちは、代えが利かないのは確かだが、30代の選手がチームの陣容を大半を占めている。世代交代は急務であり、全てのタイトルを目指し、そしてシーズン終盤にチームが息切れを起こすのは当然だ。ましてやエルネスト・バルベルデ監督はクラッシクなタイプで、ベストの11人を固定してどのゲームでも送り出そうとする傾向が強い。それゆえにコパ・デル・レイやリーグ戦が立て込んだ1月、2月の疲労が、この時期に表面化した。

 クラブは6月で26歳になるフィリペ・コウチーニョ、5月で21歳にウスマン・デンベレ、24歳のネルソン・セメドなどを獲得し、過去2シーズンでも25歳のアンドレ・ゴメスやパコ・アルカセルに大金を払い若返りを図っているが、クラブの意図どおりに順調に進んでいない。元々コウチーニョはCLに出場できなかったが、3年前の決勝に立ったスタメンの内、8人が同じ顔ぶれで、その内テア・シュテーゲンを除くほとんどが30代という事実が現時点での世代交代の失敗を示している。 

 敗因探しにおいて、エルネスト・バルベルデ監督に対する批評は少ない。ネイマール離脱という激震を乗り越え、リーガ無敗、コパ・デル・レイ決勝進出と結果を残しており、堅実な指揮官らしいきっちりとした仕事をすると高く評価されている。

 ただ来シーズンは違う。もし欧州の舞台で同じ事が起これば、すぐに解任論が叫ばれるようになるだろう。特にレアル・マドリードがCL3連覇を果たしたら、重圧は巨大なものになる。さらに、今まではゲームのクオリティには目をつぶっていたが、その内、急に思い出したかのようにバルセロニスタやメディアも声高に「美しく勝つ」というクラブポリシーを連呼するようになるだろう。

 人間とは欲張りな生き物で、決して満足することがない。バルセロニスタは口では「もうあんな時代は2度とやって来ない」と勝利とクオリティが同居したジョゼップ・グアルディオラが指揮したチームを理想郷のように語るが、レアル・マドリードが欧州を制覇し続けていることもあり、彼らはそのユートピアが再び築かれることを望んでいる。だからカンテラを重視せず、大枚を払い、2人のスターを獲得しても、たいして咎める声は聞こえない。そのことがバルセロナを弱体化させるだけでなく、魅力のないクラブにしているのに。

文=座間健司

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