苦戦を強いられ、シーズン中の解任も囁かれているジダン監督 [写真]=Quality Sport Images/Getty Images
「おいおい、レアル・マドリードは2月でもう、争うタイトルがなくなるかもしれないぞ」
そう嬉しそうに話すのは、バルセロニスタだ。彼らの眼前には、昨夏と全く違う景色が広がっている。残暑が厳しくても笑顔のTシャツ姿だったマドリディスタは、今冬コートを羽織っていても、全く暖かそうではない。
レアル・マドリードは1月25日のコパ・デル・レイ準々決勝セカンドレグで、レガネスに1-2で敗れた。ファーストレグを1-0制していたが、ホームで2点を決められ、準々決勝敗退が決まったのだ。
同じマドリード州を本拠地にするレガネスにとっては、歴史に残る日となった。クラブ史上初のコパ・デル・レイ準決勝進出。さらに115年の同大会の歴史において、レアル・マドリード相手にファーストレグをホームで落としながらも、アウェイでのセカンドレグで逆転し、敗退に追い込んだ初めてのクラブとなった。
レガネスにとっては快挙だが、レアル・マドリードにとっては屈辱だ。スペイン紙「アス」の名物記者トーマス・ロンセロは自身のコラムの中で「アルコルコナッソ(パート2)」という見出しつをつけ、悪夢だと伝えている。
「アルコルコナッソ」とは、レアル・マドリードが2009年10月27日に行われたコパ・デル・レイの決勝トーナメント・ベスト32で当時2部B(実質3部)に属するアルコルコンに0-4で大敗したゲームを指す。2部Bのチームを相手に、代表歴がある選手たちが出場しながらも大敗した衝撃は大きかった。またこのゲームのハーフタイムにキャプテンマークを巻いた元スペイン代表MFグティが、当時の指揮官だったチリ人のマヌエル・ペジェグリーニ氏と衝突したのも大きな話題となった。ペジェグリーニ監督はこの敗戦でフロレンティーノ・ペレス会長から愛想を尽かれ、シーズン終了後の解任が既定路線となってしまった。そして、現在指揮を執るジネディーヌ・ジダン監督も、レガネス戦の敗戦でチリ人指揮官と同じ道を辿るだろうと推測されている。ゆえにトーマス・ロンセロ記者は「アルコルコナッソ(パート2)」と名付けた。
熱狂的なマドリディスタである彼は、大半のソシオと同じようにこのゲームでクリスティアーノ・ロナウド、ギャレス・ベイル、マルセロ、トニ・クロースらを出場どころか、ベンチにさえ置かなかったジダン監督の采配に疑問を投げかけている。フランス人指揮官もコパ・デル・レイは勝ち進まなければいけない大会だったことは理解していたはずだ。
バルセロナに19ポイント差をつけられたリーガ・エスパニョーラの逆転制覇はほぼ不可能だ。ゆえに今シーズンのレアル・マドリードに残されたタイトルは、コパ・デル・レイ、そしてチャンピオンズリーグ(CL)だけだった。だが、国内カップ戦制覇の希望も1月で潰えた。もはやレアル・マドリードに残されたタイトルは、CLだけ。しかも決勝トーナメント1回戦で対戦する相手は、レアル・マドリードも欲するネイマールらを擁するパリ・サンジェルマンだ。花の都を本拠地とするチームの鼻息は荒く、優勝候補のひとつだ。楽観できる相手ではない。さらにレアル・マドリードには大きな重圧がのしかかる。もし敗れれば、2月にしてすべてのタイトルを逃したことが決まるからだ。
レアル・マドリードは世界屈指の名門で、毎シーズンすべてのタイトルを勝ち取らなければいけないチームだ。CL出場権を争うクラブではない。パリ・サンジェルマン戦は、欧州連覇、リーガ制覇と輝かしい実績を残すジダン監督にとっても自身の運命とキャリアを懸けた大一番となる。
文=座間健司