【コラム】ブッフォンも認めた? バルサ最後の砦、テア・シュテーゲンに称賛の嵐

テア・シュテーゲン

今季、好パフォーマンスを見せるテア・シュテーゲン [写真]=Getty Images

 試合終了後、センターサークル付近でイヴァン・ラキティッチと抱擁を終えたジャンルイジ・ブッフォンは親指を立てて、大声で何かを言いながら、1人の選手に近づいていく。「なんてセーブしやがんだ!」と冗談交じりに言っていたのだろう。口を大きく開いたイタリアのレジェンドは、マルク・アンドレ・テア・シュテーゲンと抱擁した。試合後にGK同士がお互いを労るのはよくある光景だが、スペインの各メディアはこのシーンに通常とは違う意味を見出していた。「今シーズン終了後に引退するであろうレジェンドが、バルセロナのドイツ人GKを自分の後継者だと公に認めた」。2人の抱擁をそう深読みしたのだ。ブッフォンが自身の後継者だと思っているかどうかは分からないが、25歳のテア・シュテーゲンは、今現在、そして未来において“世界最高のGK”と呼ばれるにふさわしい能力を持っていることをユヴェントス戦でも実証した。

 22日に行われたチャンピオンズリーグ(CL)第5節、バルセロナはアウェイでユヴェントスと対戦。スコアレスドローに終わり、グループリーグ首位通過を確定させた。このゲームでは、リーガ・エスパニョーラとCLで今シーズン初めてリオネル・メッシがスタメンから外れたことが大きな話題になったが、試合後は違った。世界最高の選手のベンチスタートよりも、スペインのメディアが多くの言葉を費やしたのが、テア・シュテーゲンのパフォーマンスだった。ユヴェントスのエース、パウロ・ディバラは左からのクロスをゴール中央でダイレクトで振り抜いた。彼の目の前には味方も含め、4人の選手がいた。GKからボールは見にくい。しかも、シュートはポストぎりぎりの絶妙なコースに飛んでいた。ディバラはシュートの後に得点を確信し、走り出していた。だが、テア・シュテーゲンが右腕を伸ばしてセーブ。ドイツ人GKのビックセーブがバルセロナに勝ち点1をもたらしたゲームだった。エルネスト・バルベルデ監督が「テア・シュテーゲンは、ポイントとなる時間にいつも決定的なプレーをする」と称えれば、アンドレス・イニエスタは「ユヴェントスは少しの決定機しかなかったし、GKが全てセーブしていたのが重要だった。それは簡単なことではないけど、マルク(テア・シュテーゲン)は高いクオリティとタレントを兼ね備えている。それでいて、最高なのはまだ成長の余地を多く残していることだ」と現在のパフォーマンスを称賛し、同時に成長過程にいるテア・シュテーゲンは実力をさらに伸ばすだろうと予期する。

ユヴェントスのエース、ディバラを完封した [写真]=Getty Images

 ユヴェントス戦だけではない。リーガの前節レガネス戦でも決定的なピンチをテア・シュテーゲンが救った。今シーズンのバルセロナは、彼の好守に何度も助けられている。パフォーマンスが決して良くないバルセロナが今日までにリーガが開幕してから無敗なのは、このドイツ人によるところが大きい。スペイン紙『エル・ムンド』によれば、最近公式戦4試合で20本のシュートを浴び、その内19本をセーブしている。今シーズン、リーガでこれまでに39本の枠内シュートを浴び、34本をセーブした。セーブ率は89.5パーセントとリーガで最も高い数字だ。バルセロナは開幕から12試合でわずかに4失点だけ。無失点で終えたのは、すでに8試合になる。CLでも11本の枠内シュートを浴び、その内10本をセーブしている。セーブ率は90.9パーセントだ。メッシが得点を積み重ねていたこともあって、序盤戦のバルセロナは「メッシ+10人」と揶揄されたが、中盤戦に突入した今はメッシが得点を決めていないこともあり、「10人+テア・シュテーゲン」という様相だ。

 テア・シュテーゲンは、12歳までGKだけでなく、フィールドプレーヤーとしてもプレーしていた。そんなこともあって、足元が巧みだ。バルセロナに加入した当初、プレースタイルに合致するとその正確なキック、パスがクローズアップされたが、今は彼のセーブが称賛されている。サッカーのスタイルが変わり、GKに求められる仕事も増えた。とはいえ、やはりいつの時代もGK最大の役目が「失点を防ぐ」にあることに変わりはない。バルセロナの守護神としてテア・シュテーゲンは、欠かせない存在となっている。このパフォーマンスを維持すれば、来夏のFIFAワールドカップ ロシアではマヌエル・ノイアーがベンチに座り、ドイツ代表のゴールマウスにテア・シュテーゲンが立っているかもしれない。

文=座間健司

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