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【アジア最前線:タイ #12】重要な3連戦を前にコロナ禍に揺れるタイ代表

2021.06.03

[写真]=Getty Images

合宿でクラスター発生。ティーラトンは辞退

 西野朗監督が率いるタイ代表は5月21日、2022 FIFAワールドカップ カタールのアジア2次予選が開催されるUAEに入った。コロナ禍によってW杯予選のスケジュールにも大きな影響が出ているなか、タイが入るグループGの残り試合はUAEで集中開催されることとなった。現時点でグループ3位と2大会連続の3次予選進出へ向けて後がないタイは、6月3日にインドネシア、7日にUAE、15日にマレーシアと対戦する。

 当初からの予定どおり先月21日にUAE入りすることはできたものの、そこに至るまでの過程では大きなアクシデントに見舞われた。5月3日に国内合宿を始めると、直後の7日に2選手とスタッフ4名の新型コロナウイルス陽性が判明。西野監督も「想像以上にみんなコンディションがよかった」と語る順調なスタートを切っていたのだが、クラスター発生によってその後は思うように練習が行えないままUAEへ向かうこととなってしまった。

 UAEでのW杯予選を戦うタイ代表候補には、Jリーグ組のチャナティップ(北海道コンサドーレ札幌)とティーラトン(横浜F・マリノス)も招集されていた。両選手は本番直前にUAEで合流する予定となっていたが、新型コロナウイルスの「変異株流行国」に指定されているUAEから日本に入国する際の規制が強化されたことにより、ティーラトンは代表招集を辞退。チャナティップと並んで最も替えの利かない存在である左サイドバックの離脱は、タイ代表にとって大きな痛手となった。

 もう一人のJリーグ組であるチャナティップは招集に応じる方針であるため、タイ国内ではティーラトンに対する批判の声も上がっている。ティーラトンのSNSには「裏切り者」といった非難の書き込みもあり、それに対してティーラトン側は法的措置も辞さない構えを示している。この騒動に西野監督がタイ代表の公式YouTubeチャンネルを通して「ティーラトンの判断を理解してほしい」とファンに訴えかけるなど、タイ代表は決戦を前にしてコロナ禍の影響に大きく揺れる事態となってしまった。

主力不在で苦しい台所事情の「西野タイ」

 合流予定のチャナティップも先月25日の札幌でのトレーニング中にヒザを痛めており、復帰まで2週間を要する見込み。UAE入りするのが3日のインドネシア戦前日となるため、もともと西野監督もチャナティップの起用については「初戦は少し難しい」と語っていたが、その後についても不透明だ。さらに今回は、長くタイのエースを務めてきたFWティーラシン・デーンダーも負傷で代表を辞退しており、苦しい台所事情であることは否めない。

 UAEでの3試合は試合ごとにメンバーを入れ替えることが可能だが、当初は23名ほどまでメンバーを絞ってからUAE入りする予定だった。しかし、合宿でのクラスター発生という不測の事態によってトレーニングが予定どおりに進まなかったため、41名の代表候補がそのままUAE入り。現地でオマーン、タジキスタン、ウズベキスタンとの強化試合をこなしながら、西野監督は直前まで選手たちのコンディションを見極めている。

 タジキスタン戦で2ゴールをマークした18歳のFWスパナット・ムアンター(ブリーラム・ユナイテッド)、「プレミアリーグで鍛えられていることを非常に強く感じる」と西野監督も好印象を口にしている初招集のMFタナワット・スンジッターウォン(レスター)ら期待を抱かせる新戦力候補もいる。しかし、チャナティップ、ティーラトン、ティーラシンという主力の穴を他の選手たちがどこまで埋められるかは未知数で、現時点では不安要素も多いと言わざるを得ない状況だ。

 ベトナム、マレーシア、タイ、UAEの4カ国による混戦模様となっているグループG。最低でも2位以内に入らなければ3次予選進出の目はないだけに、現在3位のタイは残る3試合を一つも落とせない状況にある。就任からまもなく2年を迎えようとしている西野監督にとっても正念場となる3連戦は、コロナ禍も相まって厳しい状況下でまもなく始まろうとしている。

文=本多辰成

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