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【アジア最前線:韓国 #11】五輪に向けて慢心なき強化を進める韓国

2021.04.27

浮き足立つメディアと、油断のないキム監督

 東京オリンピックの開幕まで100日を切ったなか、男子サッカーの組み合わせが4月21日に決まった。そこで話題になったのが、“死の組”に入った日本と対照的に“楽な組”に入ったとされる韓国だ。

 グループBの韓国はルーマニア、ホンジュラス、ニュージーランドと同居。韓国はルーマニアとは初対戦になるが、ニュージーランドには過去3戦全勝。ホンジュラスは2016年のリオデジャネイロ・オリンピック準々決勝で敗れた相手であるだけに気が抜くことはできないが、通算成績では2勝1分け1敗と勝ち越している。

 優勝候補の一角とされるフランスや、2012年のロンドン・オリンピックで金メダルを獲得したメキシコと対戦する日本と比べれば、確かに「韓国のほうが決勝トーナメント進出の可能性が高い」という見方もできるだろう。

 実際、組み合わせが決まった直後は多くの韓国メディアが「最高の組」、「最高の対陣」、「最高のシナリオ」と嬉々として速報。数日が経った今も「日本が望んだシナリオ、韓国が持ってきた…対照的組み合わせ」(『スポータルコリア』)、「男子サッカー、東京五輪で最高の組…メダル獲得可能性↑」(『クッキーニュース』)、「“最上の組み合わせ”…キム・ハクボム号、メダル獲得に青信号」(『TV朝鮮』)など、早くもメダルを期待する声が挙がっているほどだ。

 ただ、こうした国内の浮かれぶりに反して、監督や選手たちは改めて気を引き締め、緩みかけた雰囲気に警鐘を鳴らすような声が多い。

“楽勝ムード”に誰よりも早く「待った」をかけたのが、Uー24韓国代表の指揮を執るキム・ハクボム監督だ。キム監督は「我々より弱いチームなんていない」と断固たる口調で切り出すと、「ホンジュラス、ルーマニア、ニュージーランドのどの国も侮れない」、「最善の準備を尽くしてこそグループを突破できる」、「(出場する)全チームの全選手を徹底的に分析し、戦略を立てる」と矢継ぎ早に語った。

 そんなキム監督は抽選会当日、ソウル近郊にある標高836メートルの山にスタッフとともに登り、組分けの様子を見守ったという。韓国サッカー協会は山の頂上でガッツポーズをするキム監督の写真を掲載するとともに、「オリンピックで必ずメダルを持ち帰る」という意気込みを伝えている。

 監督の言葉に選手も続く。抽選会翌日、蔚山現代の五輪世代に話を聞いた『スポーツソウル』は、「組み合わせがうまくいったと言われるが、どこと対戦するかに大きな意味はない。オリンピックは弱いチームが出る舞台ではない」(ウォン・ドゥジェ)、「“楽な組み合わせだ”という話は気にも留めていない。どこも予選を突破してきた強豪だ」(イ・ドンジュン)と“生の声”を届けていた。

オリンピックに向けた強化の道のり

 では、韓国はオリンピックに向けてどのように強化を図ってきたのか。韓国は2020年1月にAFC Uー23選手権で優勝して以降、計4回にわたり五輪世代の招集を行ってきた。

 まず、同年10月に国内で開催したA代表とのスペシャルマッチだ。2試合にかけて行われた“兄弟対決”は合計スコア2ー5で敗れはしたが、第1戦では2ー2のドローに持ち込むなど互角の戦いぶりを披露した。

 その1カ月後にはエジプトでUー23の親善大会に参加し、48時間で2試合を戦う強行日程もこなした。結果はエジプトに0ー0で引き分け、ブラジルには1ー3で敗れている。

 今年に入ってからは、1月から2月にかけて約3週間、3月に9日間の国内合宿を敢行。Kリーグ1・2部クラブとの練習試合も行い、全7試合で26ゴールを挙げる圧倒ぶりで全勝を収めた。今後は6月の国際Aマッチ期間に、大会前最後の親善試合を自国で行う予定だ。

 仮に日韓両国がグループステージを突破できれば、東京五輪では決勝トーナメント初戦で早々に対戦する可能性がある。オリンピックでの日韓戦と言えば、記憶に新しいのが2012年のロンドン五輪だ。当時は3位決定戦で激突し、パク・チュヨンとク・ジャチョルのゴールで韓国が勝利を収めた。

 もっとも、どちらの国もグループステージを突破しないことには対戦の可能性も生まれない。まずは日本が“死の組”とされるグループA、韓国が“楽な組”とされるグループBを勝ち抜けるかどうか、両国の戦いぶりに今から注目してみたい。

文=ピッチコミュニケーションズ

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