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【アジア最前線:タイ #9】タイと日本の間に生まれつつある新しい好循環

母国で成長を遂げ、FC琉球で2度目のJリーグ挑戦

 2月19日、FC琉球がタイのチョンブリFCからFWシティチョーク・パソを期限付き移籍で獲得することを発表した。シティチョークは2017年シーズンにJ3の鹿児島ユナイテッドFCでプレーしており、2度目のJリーグ挑戦となる。

 タイの名門チョンブリFCのアカデミーで育ったシティチョークは、17歳だった2016年末にJリーグの合同トライアウトに参加。翌2017年2月に鹿児島への期限付き移籍が発表された。この時すでに北海道コンサドーレ札幌への移籍が決まっていたチャナティップは同年7月からの加入であったため、シティチョークは「タイ人初のJリーガー」として歴史に名を残すことになった。しかし、18歳での歴史的なJリーグ挑戦は環境になじめなかった面もあったようで、出場5試合で1ゴールも挙げることなく終わった。

 2018年にチョンブリFCに復帰すると、日本での経験も生かして徐々に出場機会を増やしていく。2019年にはスタメン8試合を含む19試合に出場してタイリーグ初得点もマーク、シーズン3ゴールの結果を残した。2020年は同じタイ1部のトラートFCへ期限付き移籍。チーム事情もあってポジションは4―3―3の中盤のサイドに入ることが多かったが、主力として9試合にスタメン出場して2ゴール1アシストを記録した。その後、昨年12月にチョンブリFCに復帰し、主に3トップの一角としてプレーしている。

 昨年11月にはタイ代表の強化合宿にも初招集。18歳でのJリーグ挑戦を終えたあと母国で順調に成長を遂げたシティチョークは、A代表の新戦力として西野朗監督の目に留まる存在となっている。そして22歳を迎えた今シーズン、早くから注目されてきた才能が開花し始めたタイミングで、自身2度目のJリーグ挑戦となった。

元FC東京U―23のナッタウットも帰国後にブレーク

 シティチョークが西野監督によって初めてA代表に招集された昨年11月の強化合宿には、新鮮な顔ぶれが並んだ。招集された23名中、初招集が5名。チャナティップ、ティーラトン、ティーラシン・デーンダー、カウィンのJリーグ組が参加できなかったことに加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響でタイリーグの日程が不規則になっており、国内組にも招集できない選手が多くいたためだ。

 この合宿で初めてA代表に招集された選手の中には、シティチョークのほかにもJリーグでのプレー経験がある選手がいた。2019年にFC東京U―23でプレーしたFWナッタウット(バンコク・ユナイテッド)だ。さらに、59名の代表候補の段階では、2017年にセレッソ大阪U―23でプレーしたMFチャウワット(BGパトゥム・ユナイテッド)の名前も含まれていた。いずれもJリーグでの1シーズンを経て帰国後に飛躍を遂げた選手たちで、A代表の新戦力候補に名を連ねる存在となっている。

 とくに今シーズン、タイリーグで「ブレーク」と表現してもいい活躍を見せているのがナッタウットだ。元日本代表MF細貝萌も所属する強豪バンコク・ユナイテッドで、第23節までスタメン15試合を含む22試合に出場。チームトップの9ゴールをマークする得点源となり、Jリーグ挑戦前とは見違える存在感を示している。また、MFチャウワットも今シーズンのタイリーグで首位を独走するBGパトゥム・ユナイテッドで、中盤の貴重な戦力となっている。

 Jリーグの「アジア戦略」によって、チャナティップやティーラトンのようにJ1で華やかに活躍するタイ人選手たちが登場した。その一方で、セレッソ大阪とBGパトゥム・ユナイテッド、FC東京とバンコク・ユナイテッドなど、クラブ間の提携関係を背景とした育成型のJリーグ挑戦も積極的に行われてきた。タイ人選手がJリーグでプレーするようになって4年が経過し、若くしてJリーグを経験した選手たちが帰国後に台頭するケースも目立つようになっている。

 タイ代表の主力選手たちがJリーグで活躍するだけでなく、今後はJリーグで経験を積んだタイの若手が帰国後にA代表の戦力となるケースも増えていきそうだ。そんな好循環が生まれれば、アジア全体の底上げを図るという「アジア戦略」のビジョンが、また一歩前進することにもなる。

文=本多辰成

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