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【アジア最前線:香港 #3】政府の資金援助は継続も、目標の2034年W杯出場はまだ遠い

2021.01.05

[写真]=Getty Images

再興計画『プロジェクト・フェニックス』

 前回のコラムで書いたように、アジア最古のプロフットボールリーグの一つ、香港リーグ(現在は香港プレミアリーグ)は1970年代に栄華を極めたが、1980年代後半から衰退し、かつての活況は今も戻っていない。

 この状況は以前から危惧されており、香港フットボール協会は2011年に『プロジェクト・フェニックス』と呼ばれる再興計画を発表。香港政府が承認し、多額の税金の投入を決めたこの計画には、「統治の構造と組織」、「ビジョンと戦略とビジネスプラン」、「組織の問題」、「フットボール水準の向上」という4つの大枠に、33の目標が立てられている。具体的には、プレミアリーグの創設といった構造改革や代表チームの新本拠地の建設、ファンの増加策などのほかに、男女、アンダー世代の各代表チームの目標ランキングも設定されている。

 2014年には、そこまでの『プロジェクト・フェニックス』の進行が評価され、それをさらに明確にした『5年計画』が開始。長く停滞していた香港フットボールが、ついに前進を始めたかに思われた。

 ところが5年計画が終わった今年(契約は3月末まで)、「過去5年間に大きな進歩は確認できなかった」と政府の監査委員会から報告された。『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』紙によると、過去9年間で1億6000万香港ドル(約21億4000万円)以上が投じられながら、香港プレミアリーグに関する数字を筆頭に、望まれた成長はなかったという。

 監査委員会のレポートによると、国内リーグやカップ戦などの公式戦の入場者数は減少傾向にあり、平均入場者数は2015年の1403人から、2019年は1352人に減っている。チケット売上も、2014―15シーズンの1680万香港ドル(約2億2470万円)から、2017―18シーズンは460万香港ドル(約6150万円)に。同時期のスポンサー契約も、2110万香港ドル(約2億8200万円)から、450万香港ドル(約6000万円)に減少している。

 また、各代表チームに設定されたランキングの目標も、達成されていない。男子は2011年当時146位だったFIFAランキングを、2012年には120位、2015年には100位、2020年には80位にすることを目標としていたが、いまだに143位だ。同代表のアジアランキング(2011年当時は26位)も、2020年に10位以内を目指していたが、27位と逆に順位を落としてしまっている。女子も2010年に67位だったFIFAランキングを、2012年に50位、2015年に40位、2020年には35位にすることを目標としていながら、現在は71位と後退している。

計画は更新されるも監視の目は厳しく

 その後は新型コロナウイルスの影響もあり、『5年計画』の更新が滞っていたものの、3カ月遅れの7月上旬にようやく承認された。政府の資金援助がなければ、「香港のフットボールは終わってしまう」と語っていた香港フットボール協会のプイ・クワン・ケイは胸をなでおろしたことだろう。ただし、過去5年間の拙い運営や乏しい成果を議会側から指摘され、目標の再確認を迫られ、年間の支出額も削減されている。

「香港フットボール協会は、(これまでの活動を記した)レポートから学ばなければならない」と議会側のある元メンバーは『サウス・チャイナ・モーニングポスト』紙に話した。「政府は今後、協会がいかに税金を使用しているかを密に精査することになった。これは良いことだ。すべては公共の資金であり、政府と協会には説明の責任があるのだから」

 今後、協会は3カ月に一度、活動の内容と成果を報告しなければならない。だが新計画の最大の変化は、2034年ワールドカップの本大会出場を目標に掲げたことにある。まだ先の大会とはいえ、現在世界で143位の代表チームが世界最高の舞台に立つのは、至難の業にも思える。良質な指導者が不足し、気候や政治的な問題も抱える香港が、フットボールでメインキャストの仲間入りを果たす日は、いつか訪れるのだろうか。

文=井川洋一

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