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【アジア最前線:タイ #6】2026年のW杯初出場を目指すも「西野タイ」は想定外の一年に

2020.12.11

[写真]=Getty Images

去就のジャッジは来年まで保留に

 西野朗氏がタイ代表の新指揮官に就任して、約1年と4カ月が経過した。本来であればすでに2022 FIFA ワールドカップ カタールのアジア2次予選も終了し、タイ代表監督としての一区切りを迎えているはずだった。しかし、世界中を巻き込んでいる新型コロナウイルスの感染拡大によって、「西野タイ」の2020年も想定外のものとなった。

 今年1月、AFC U-23選手権がタイ・バンコクで開催された。U-23タイ代表の指揮官も兼任している西野監督は、同大会でチームを同国史上初となるベスト8に牽引。1968年のメキシコ・オリンピック以来52年ぶりとなる五輪の切符を獲得することはできなかったが、就任以来続いてきた現地における西野監督の人気はさらに高まった。

 その後は2大会連続となるW杯アジア3次予選進出を懸けたA代表の大一番が続くはずだったが、3月と6月に予定されていたアジア2次予選は早々に延期が決定した。いまだに新型コロナウイルスの感染拡大は収まらず、当初は今年10月に延期されることが発表されていたものが来年に持ち越された。

 タイは現在、W杯アジア2次予選のグループGで2勝2分け1敗の勝ち点8で3位につけている。東南アジア諸国が集中した同グループでは、現在のところベトナムが首位に立つ。続いてマレーシア、タイ、UAEと4カ国が3次予選の進出枠を争う混戦模様となっている。出場枠が拡大される2026年大会でのW杯初出場を目標に掲げるタイにとっては、大事な試金石となる戦いに水を差された形だ。

 西野監督は就任当初から現地で高い支持を得ており、タイサッカー協会もすでに今年1月に西野監督との契約を2年間延長することを発表している。タイサッカー界はしばらくの間、代表チームを西野監督に託す覚悟を決めている状況といえるが、結果として明確に下されるはずだったジャッジは来年まで保留となった。

真価が問われる2021年

 昨年7月の就任以来、西野監督は現地に腰を据えてタイ代表の強化に取り組んできた。長期の中断を経て9月に再開されたタイリーグでも、毎節のように試合に足を運ぶ西野監督の姿が現地メディアで報じられている。

 タイ代表は10月に久々に招集されて数日間の国内合宿を行い、11月にも外国人選手を中心としたタイリーグ選抜との強化試合を行った。この合宿ではチャナティップ、ティーラトン、ティーラシン・デーンダー、カウィンのJリーグ組は選外に。タイリーグの日程が不規則になっていることで招集できなかった選手も多くいたため、代表経験の少ない新戦力候補が数多く招集された。

 日本と縁のある選手でいえば、昨シーズンFC東京U-23でプレーしたFWナッタウット、2017年に鹿児島ユナイテッドFCでプレーしたFWシティチョーク・パソと、Jリーグでのプレー経験がある若手2選手がA代表に初招集されている。AFC U-23選手権では3ゴールで大会得点王となったMFジャルンサック・ウォンコーン、今シーズン開幕前にFC東京への移籍の噂が浮上したMFアーノン・アモンルーサックら、U-23世代からも新戦力候補たちが本格的にA代表に加わりつつある。

 10月、11月の代表合宿を終えた西野監督は、現地メディアに対して「新しい選手、人材を発掘するいい機会だった」とコメントしている。監督就任後、すぐにW杯予選に突入したため、昨年中は腰を据えて準備をする時間がほとんどない状況だった。新型コロナウイルスという誰も予想できなかった惨禍によって生まれた予定外の時間は、西野監督にとっては好機となった面もあるかもしれない。

 来年はW杯予選に加え、12月から2022年1月にかけては東南アジア王者を決めるAFFスズキカップも開催される予定となっている。コロナ禍による想定外の一年を経て、2021年はいよいよ「西野タイ」の真価が問われる年となりそうだ。

文=本多辰成

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