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【アジア最前線:韓国 #6】今季Kリーグの各賞受賞者を輩出した浦項が再びACLの舞台へ

2020.12.07

[写真]=Getty Images

3位の指揮官が最優秀監督賞に輝くのはKリーグ史上初

 Jリーグよりもひと足早く終わったKリーグの2020年シーズンを一言で表すなら、「現代」(HYUNDAI)に尽きるだろう。Kリーグ1の優勝争いは、昨シーズン同様に蔚山現代ウルサン・ヒョンデ全北現代チョンプク・ヒョンデが競い合い、最後は全北現代の4連覇で幕を閉じた。現代系列の企業「HDC現代産業開発」を親会社とする釜山プサンアイパークがKリーグ2(2部)に降格するという皮肉もあったが、全北現代のMFソン・ジュンホが年間MVPに、蔚山現代のFWジュニオール・ネグランが26ゴールで得点王に輝くなど、多くの「現代」の選手たちが称えられた。

 だが、「現代」ばかりが輝いたわけではない。今シーズンは、浦項ポハンスティーラースの奮闘も目立った。勝ち点では全北や蔚山には及ばず3位に終わったが、27試合で57得点はリーグ最多。その主軸となったDFのカン・サンウ(8得点/リーグ最多となる12アシスト)、セルビア人MFのアレクサンダル・パロチェビッチ(14得点)、ロシア人FWスタニスラフ・イリュチェンコ(19得点)はKリーグ・ベストイレブンに輝き、27試合出場10得点6アシストのFWソン・ミンギュはヤングプレーヤー賞を受賞した。昨年4月からチームを率いるキム・ギドン監督も、Kリーグ最優秀監督に選ばれている。優勝でも、準優勝でもない3位の指揮官が同賞に輝くのは、Kリーグ史上初めてのことだった。

 今年で49歳を迎えたキム・ギドン監督はクラブの生え抜きで、現役時代は39歳でKリーグにおけるフィールドプレーヤー初の500試合出場を達成したことから、“鉄人”と称されたMFだった。浦項では2007年にはリーグ制覇を、2009年にはAFCチャンピオンズリーグ優勝をキャプテンとして成し遂げている。

 そんなフランチャイズ・スターが指導者として再び浦項に戻ってきたのは、2016年9月のこと。2011年12月に現役を引退し、城南一和ソンナム・イルファ(現・城南FC)のスカウト、U-23韓国代表コーチを経験し、古巣に帰ってきた。

浦項の試合はゴールが多くて迫力にあふれ、おもしろい

 だが、当時の浦項は混乱に陥っていた。2013年にリーグとFAカップの2冠へと導いたファン・ソンホン監督のバトンを受け継ぎ、2016年シーズンから指揮を執ったチェ・ジンチョル監督が、成績不振により9月に辞任。キム・ギドン監督はその後釜に座ったチェ・スンホ監督の右腕を長く務めたが、2019年4月にチェ・スンホ監督も成績不振を理由に自ら退任したことで、監督の座が回ってきた。つまり、指揮官としてはまだ2年目でのKリーグ最優秀監督賞受賞だっただけに、受賞式では当の本人も驚きとうれしさを隠せないようだった。

「(受賞は)奇跡に近いと言えるが、浦項らしいチームカラーを打ち出したことが評価されたのだと思う。『浦項の試合はゴールが多くて迫力にあふれ、おもしろい』。そう思ってもらえるようなサッカーを、これからもしてきたい」

 振り返れば、浦項はKリーグ屈指の伝統を誇る名門だった。“漢江(ハンガン)の奇跡”とされた韓国経済の高度急成長を支えた浦項製鉄所(現・POSCO)のサッカー部として1973年に産声を上げて以来、上述したチェ・スンホやファン・ソンホン、ホン・ミョンボなど、韓国サッカー界の歴代スターたちがプレーしてきたクラブでもある。1986年、1988年、1992年にはリーグを制し、1997年と1998年にはACLの前身であるアジアクラブ選手権連覇も達成した。2009年の優勝を含めれば、サウジアラビアのアル・ヒラルと並んで優勝回数トップに立つ。

 そんなKリーグの伝統クラブが、来シーズンはACLに帰ってくる。キム・ギドン監督も今シーズン開幕前からACLの出場を目標に定めていただけに、リーグ戦を3位で終えられたことに、確かな手応えを得ているという。

 今シーズンのACLが集中開催されているなか、来季の話をするのはいささか気が早すぎるが、Kリーグは“HYUNDAI”だけではないことを、今から知っておくことも悪くはなさそうだ。

文=慎 武宏(ピッチコミュニケーションズ)

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