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【アジア最前線:韓国 #5】いよいよ最終節…優勝するのはどっちの「現代」?

2020.10.30

[写真]=Getty Images

「現代家ダービー」と呼ばれるようになったワケ

 今週末にいよいよ最終節を迎えるKリーグ。

 今シーズンは新型コロナウイルスの影響で3月の開幕が5月にずれ、試合数も従来の38ラウンド制(レギュラー戦33試合+スプリットラウンド5試合)ではなく、27ラウンド制 (レギュラー戦22試合+スプリットラウンド5試合)に短縮されたこともあり、気づくと夏頃には優勝争いを演じるチームが2つに絞られていた。昨シーズン王者の全北現代チョンプク・ヒョンデと同2位の蔚山現代ウルサン・ヒョンデだ。

 当初は蔚山が首位を走り、全北が追いかけていたのだが、前節(第26節)の直接対決で全北が勝利して立場が逆転。勝ち点57の全北は江原カンウォンFC(7位)、勝ち点54の蔚山は光州クァンジュFC(6位)をそれぞれホームに迎えて11月1日の最終節を迎える。日本のサッカーファンからすると、どちらが栄冠に輝いていても“現代”が頂点に立つように映るかもしれないが、この2チームは生まれも財布も全く異なるチームだ。

 1983年設立の蔚山現代は、世界最大規模の造船業を誇る現代重工業の傘下にあり、1994年からKリーグに参戦する全北現代は、世界5位のシェアを持つ現代自動車グループが親会社だ。それぞれの親会社はともに「韓国経済を作った男」とされる故・チョン・ジュヨンによって創業され、建設業、電子工業、百貨店など多岐にわたったグループは一時、韓国財閥1位の座にあった。しかし、2001年6月の創業者の死と前後して、いくつかのグループに分裂。そのため、2000年代になると蔚山現代と全北現代は“兄弟クラブ”とは見なされず、全北現代がKリーグで初めてAFCチャンピオンズリーグを制した2006年以降は“ライバル関係”になった。

 ともに母体企業からの支援を背景に、“引き抜き合戦”も展開された。2016年に蔚山現代のエースだったキム・シンウクが全北現代に移籍すると、2017年には現役時代に全北現代で得点王にも輝いたキム・ドフンが蔚山現代の監督に就任。これにより、サポーター同士の対抗心もヒートアップし、いつしか両クラブの対決は「現代家ダービー」と呼ばれるようになった。

絶大な貢献度と存在感を示す「HYUNDAI」

 ちなみに、現在10位の釜山プサンアイパークも、「HDC現代産業開発」という現代系列の企業を親会社とするものの、釜山アイパークとの試合は現代家ダービーとは言われない。釜山アイパークの前身母体が1999年に破綻した大宇デウ財閥であることも無関係ではないだろうが、HDC現代産業開発のトップであるチョン・モンギュ氏は、韓国サッカー協会の会長でもある。

 つまり、韓国サッカー界において「HYUNDAI」の貢献度と存在感は絶大で、昨シーズンも最後まで優勝争いを演じていたのは蔚山と全北という2つの“現代”だった。最終節まで首位に立っていた蔚山現代は引き分けでも優勝できたものの、浦項ポハンスティーラーズに2-1で敗戦。一方の全北現代は、最終節に勝利して勝ち点で蔚山に並ぶと、最後は総得点数での争いとなり、全北が1得点差で逆転優勝するという劇的な幕切れとなった。

 今シーズンも、Kリーグ優勝クラブの行方は最終節に持ち込まれた。ここまでの総得点数は、全北が44得点、蔚山が51得点だ。蔚山の大逆転があれば15年ぶりの優勝、全北現代が優勝すればKリーグ史上初の4連覇となる。

文=慎 武宏(ピッチコミュニケーションズ)

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