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日本人選手は海外組しか知らない…ベトナムにおけるJリーグの認知度は?

2020.09.04

[写真]=Getty Images

[サッカーキング アジアサッカー特集号(2019年10月号増刊)掲載]

2012年より本格的にアジア戦略を推進してきたJリーグ。果たして、アジア各国ではどのように情報が展開され、どのくらい浸透してきているのだろうか。Jリーグに興味を持つサッカーファンは多くないものの、“東南アジア初のJリーガー”を輩出した実績を持つベトナム。Jクラブ関係者が現地を訪問・視察する計画を練るなど、両国間のコミュニケーションが活発になりつつあるようだ。

Jリーグ自体に関心を持つベトナム人は極めて少数派

“ベトナムの英雄”レ・コン・ビンが2013年に当時J2の北海道コンサドーレ札幌に加入したのを皮切りに、その後も続々と東南アジア出身選手たちがJリーグに活躍の場を求めて海を渡った。サッカー後進国である東南アジア諸国の選手たちにとって、ワールドカップ常連国の日本は、今のところ打ち勝つべきライバルというよりもリスペクトの対象だ。

 そして、これまでJリーグに挑戦した東南アジアの選手たちが口をそろえて語るように「Jリーグは憧れの舞台」というのが共通認識であろう。多くの東南アジア出身選手たちは、日本代表への畏敬の念をそのまま漠然とした形で、まだ見ぬJリーグに感じている。それは“東南アジア初のJリーガー”を輩出したベトナムも同様だ。

「Jリーグが憧れの舞台」と言っておきながら、いきなり否定するようになってしまうが、東南アジアでどこのリーグが人気かと問われれば、それは間違いなくプレミアリーグ。それもダントツの一番人気だ。ベトナムでも、ブンデスリーガやセリエA、リーガ・エスパニョーラ、エールディビジなどが放送されているが、プレミア人気を脅かすには到底及ばない。

 Jリーグに至っては、かつてベトナム人選手が在籍したシーズンに数試合を中継したり、パブリックビューイングを実施したのみ。ベトナム人選手が去って以降、Jリーグの試合を目にする機会はとんとなくなってしまった。

 必然的にベトナムのファンたちが日本人選手の活躍を目にするのは、欧州でプレーする場合、あるいは国際大会での日本代表の姿だけということになる。現役の日本人選手で知名度があるのは、香川真司、本田圭佑、長友佑都、岡崎慎司、吉田麻也などいわゆる海外組。最近では、中島翔哉、南野拓実、冨安健洋、そしてバルセロナのカンテラに所属していた久保建英も知られている。特に中島と南野はアンダー世代のベトナム代表と対戦した際に大きなインパクトを残したため、欧州移籍前から名前が知れ渡っていた。

 一方、Jリーグは川崎フロンターレやセレッソ大阪などがクラブ単位でSNSなどを通してベトナム語で情報発信を続けているものの、まだ知名度があるとは言えないのが現状。「日本サッカー=日本代表」というイメージが独り歩きしており、Jリーグ自体に関心を持つベトナム人は極めて少数派だ。

選手獲得を視野に入れてJクラブ視察団がベトナムを訪問

2013年に札幌でプレーした“ベトナムの英雄”、レ・コン・ビン [写真]=J.LEAGUE


 関心を持つには当然きっかけが必要。それこそがJクラブによるスター獲得ということになる。事実、レ・コン・ビンを獲得したことで、札幌の名は瞬く間にベトナムで知れ渡った。

 札幌は、東南アジア屈指のスターだったレ・コン・ビンを獲得することで、新規スポンサーやファン層を開拓しただけでなく、クラブと北海道の自治体とが連携してPR活動を行うことによりインバウンド増加に繋げることにも成功。レ・コン・ビンの在籍期間は半年という短いものだったが、各方面に大きなインパクトを残すこととなり、Jリーグのアジア戦略を前進させる上で大きな一歩になった。

 ベトナムからはその後、アンダー世代の代表で活躍して国民的アイドルになっていたグエン・コン・フオン(2016年、水戸)とグエン・トゥアン・アイン(2016年、横浜FC)が日本に渡ったが、プロ入り2年目で体もできておらず、日本サッカーへの順応にも時間が掛かったため、ほとんど出場機会が巡ってこないまま1シーズンで退団した。

 以降しばらくベトナム人Jリーガーは途絶えているが、この数年のベトナム代表の国際舞台における躍進や隣国タイ人Jリーガーの活躍もあり、改めて獲得に関心を示すJクラブが増えつつある。2018年にはJ2のレノファ山口が、ベトナム代表で中盤の王様に君臨するグエン・クアン・ハイに獲得オファーを出した。所属先のハノイFCが拒否したため残念ながら実現しなかったものの、この10月には総勢15人からなるJクラブ視察団が選手獲得を視野に入れてベトナムを訪問。4人目となるベトナム人Jリーガー誕生の知らせが届く日も、それほど遠くないかもしれない。

文=宇佐美淳

※この記事はサッカーキング アジアサッカー特集号(2019年10月号増刊)に掲載された記事を再編集したものです

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