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【アジア最前線:ベトナム #3】ベトナム人選手の“海外進出”の歴史

2020.09.02

[写真]=J.LEAGUE

 東南アジアでは、ベトナムとタイが覇権を争っている。ここ数年の国際大会の成績ではベトナムが一歩リードしているが、選手個々で見れば、タイのほうが海外進出に成功していると言える。その最たる例が札幌のチャナティップだ。一方のベトナムはまだ成功例がなく、最近は選手も海外移籍に及び腰な印象が残る。しかし、ファンは自国スターがいつか海外で認められることを夢見ている。今回はベトナム人選手の海外挑戦の歴史を振り返っていく。

▼レ・フイン・ドゥック(2001年:重慶力帆)

ホーチミン市警察FCのエースで、ベトナム史上最高のセンターフォワード。代表歴代2位の34得点を記録したレ・フイン・ドゥックは2001年に4カ月のレンタルで重慶力帆に加入し、ベトナム人初の“海外組”となった。重慶力帆はフイン・ドゥック1人を獲得するため、トレード要員として3人の選手をホーチミン市警察に渡したほか、警察特殊車両60台を贈呈。フイン・ドゥックが残した成績は10試合に出場して4得点。ビジネス色と政治色の強い移籍だったと考えられている。

▼レ・コン・ビン(2009年:レイションイス、2013年:札幌)

Le Cong Vinh

[写真]=Getty Images


 AFFスズキカップ2008でベトナムの初優勝に貢献したコン・ビンは2009年、当時のベトナム代表監督の紹介でポルトガル1部レイションイスSCに期限付き移籍し、欧州でプレーする初のベトナム人選手となった。5カ月の在籍期間で公式戦3試合に出場して1得点。その後、2013年に当時J2のコンサドーレ札幌(現・北海道コンサドーレ札幌)に期限付き移籍し、東南アジア人初のJリーガーとして歴史に名を刻んだ。当時はJリーグのアジア戦略が動き出していた時期でもあり、コン・ビン加入がきっかけで新規ファンやスポンサー獲得にもつながった。シーズン途中の加入ながら11試合で4得点と結果を残し、札幌は残留を要請していたが、コン・ビン自身の希望もあってわずか4カ月で古巣復帰となった。

▼グエン・コン・フオン(2016年:水戸、2019年:仁川、シント・トロイデン

Nguyen Cong Phuong

[写真]=Getty Images


 HAGL JMGアカデミーの第1期生で、鋭いドリブルを武器に年代別代表で活躍し“ベトナムのメッシ”と呼ばれた。2015年にホアン・アイン・ザライ(HAGL)のトップチームに昇格。翌年にはJ2水戸ホーリーホックに期限付き移籍するが、運動量やフィジカルに難があり、公式戦出場は5試合で無得点に終わった。戦力としては期待外れだったが、水戸はコン・フオン在籍中に新規スポンサー獲得やインバウンド増加を実現するなど、商業面では一定の成果を見せた。その後、コン・フオンはHAGLで実績を積んで代表でも定位置を獲得。2019年には2度目の海外挑戦として韓国1部の仁川ユナイテッドに加入するが、ポジション争いに敗れて契約期間半年を残し退団。去就が注目されるなか、アジア方面にスカウト網を広げていたベルギー1部シント・トロイデンから声がかかり渡欧。しかし、ここでも活躍は出来ず、3度目の海外挑戦も失敗に終わった。

▼グエン・トゥアン・アイン(2016年:横浜FC

Nguyen Tuan Anh

[写真]=Getty Images


 HAGL JMGアカデミー第1期生。入団当初から同期のコン・フオンを上回る才能と高く評価されていたが、非常にケガが多く、“クリスタルガラスの両脚”と言われてきた。ケガと戦いながらも年代別代表で中心選手として活躍を続け、2015年にHAGLのトップチームに昇格。翌年にはHAGLと提携関係にあったJ2の横浜FCに期限付き移籍を果たすも、コミュニケーション能力の問題などもあってチームになじめず、リーグ戦出場はゼロに終わった。天皇杯では2試合に出場して3回戦のAC長野パルセイロ戦の延長で決勝点となるゴールを記録した。

▼ルオン・スアン・チュオン(2016年:仁川、2017年:江原、2019年:ブリーラム)

 HAGL JMGアカデミーの第1期生。トゥアン・アインとのコンビで創造性豊かなゲームメークを披露して一世を風靡した。年代別代表で活躍後、2015年にHAGLのトップチームに昇格。翌年に仁川ユナイテッドに期限付き移籍を果たし、Kリーグ初のベトナム人選手となった。仁川では公式戦8試合に出場し無得点。2017年は江原FCに移籍して2シーズン連続で韓国でプレーしたが、ここでも目立った活躍はなかった。2019年にはASEAN枠でタイ1部のブリーラム・ユナイテッドに期限付き移籍。当初はある程度の出場機会を得ていたが、同時期に加入した元日本代表MF細貝萌が復調すると徐々に出番が減り、シーズン途中に退団。なお、ブリーラム時代に決めた唯一のゴールであるナコーンラーチャシーマーFC戦での直接フリーキックは、リーグの年間ベストゴールに選出された。

▼ドアン・バン・ハウ(2019−2020 ヘーレンフェーン

Doan Van Hau

[写真]=Getty Images


 ハノイFCのリーグ2連覇に貢献した185センチの大型左サイドバックで、19歳の若さで代表レギュラーの座をつかんだ逸材。2019年にオランダ1部のヘーレンフェーンに期限付き移籍すると、直後にヘーレンフェーンのFacebookページのフォロワーが数十万人規模で急増した。オランダ移籍後、リザーブリーグではセンターバックで起用され、多くの試合に出場して安定したパフォーマンスを見せたが、トップチームではカップ戦の試合終盤で1試合途中出場するにとどまった。新型コロナウイルスの影響でリーグが早期終了してしまったことで、結局、2020シーズン後期から古巣ハノイに復帰した。

文=宇佐美淳


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