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スペイン代表に何が起きていたのか?…現地メディアがスペインの早期敗退を分析

2014.06.20

前回王者のスペインは第2戦でチリに敗れまさかの早期敗退が決定した [写真]=Getty Images

 初戦のオランダ戦に1-5、続くチリ戦にも0-2で敗れ、ブラジル・ワールドカップ敗退国“第1号”となってしまったスペイン代表。前回優勝国としては、南アフリカ大会のイタリア代表に次ぐ2大会連続、史上5度目のグループリーグ敗退となった。

 ビセンテ・デル・ボスケ監督は試合後、「すぐに結論を出したくない。時間を置いて、慎重に答えを出さなければいけない」と敗退の理由について明言を避けたが、現地メディアは、今回の悲劇が起こった要因を様々な角度から分析。中でも、スペイン最大の一般紙『エル・パイース』は、<8つの敗因>を挙げている。

まず同紙が挙げたのは、<顔ぶれの変化のなさ>。4年前にはジェラール・ピケ、ペドロ・ロドリゲス、セルヒオ・ブスケッツ、ユーロ2012ではジョルディ・アルバがそうであったように、当時のデル・ボスケ監督は、クラブでは主軸であっても代表では新参者に過ぎなかった若手を大抜擢し、チームの若返りと強化を見事に両立していた。しかし今大会、その候補者とされていた、バイエルン所属のチアゴ・アルカンタラやレアル・マドリード所属のヘセ・ロドリゲスは、本番前の怪我であえなく欠場。さらに抜群のテクニックを持ち、引いて守る相手を崩す“切り札”と期待されていたイスコも、予備登録メンバーにすら選ばれなかった。その結果、ブラジルに乗り込んだ23名中、ユーロ2012に参加した選手は18人。南アフリカ大会を経験した選手も16人にものぼり、極めてフレッシュさに欠けるチームが出来上がった。「勝っているチームはいじるな」はサッカー界における1つの格言だが、4年間も変化がなければ“退化”へとベクトルが変わってもおかしくはない。

 次に指摘されているのが<野心の欠如>と<慢心>だ。これについては、昨年11月に行われた赤道ギニアとの親善試合終了後、「コケの目からしか、ハングリーさが感じられない」と語ったデル・ボスケ監督の言葉が紹介されている。シーズン真っただ中に行われた格下相手との“興行試合”だったことを差し引いても、大半の選手たちの代表に対するモチベーションが低下しつつあることに指揮官は警鐘を鳴らしていた。その悪い予感が、ブラジルの地で現実のものになったという訳だ。なおチリ戦後、シャビ・アロンソも今回の惨事の原因に“メンタル”を挙げた。また、スポーツ紙『マルカ』で行われた緊急読者アンケートでも、投票者の約30%近くが「モチベーション、ハングリーさの欠如」が問題だったと答えている。

 一方、<指揮官の采配>についても槍玉に上がっている。オランダ戦の敗戦を受けて、デル・ボスケ監督がチリ戦のスタメンで加えた変更箇所は2カ所。センターバックの1人を、ピケに代えてハビ・マルティネス、そして“チームの頭脳”でもあったチャビをベンチに置いて、ペドロを投入した。試合前に予告されていたように、選手の入れ替えはあった。だが、「チームには、大胆なショック療法が必要だったのでは」と『エル・パイース』紙が書いたように、初戦で大敗したチームのリアクションとしては、あまりに保守的すぎたと言えるかもしれない。特に、オランダ戦に続き、チリ戦でもイケル・カシージャスの拙いプレーが失点につながったのは、皮肉でしかなかった。

 “采配”という意味では、<ジエゴ・コスタの起用>にこだわったことも、不可解だった。2試合ともに先発出場した同選手だが、結局、「スペイン代表の一員とはなれなかった」(エル・パイース紙)。先に挙げたように「顔ぶれの変化」に当てはまる選手ではあったが、4月中旬から筋肉系のトラブルを繰り返してきた影響で、代表での慣らし運転を満足にできず。周囲との連係不足は明らかだった。今大会で残した成果は、オランダ戦でPKを獲得したことだけ。前回大会のエース、ビージャは出番すらなく、同じく代表の常連ストライカーであるトーレスも、途中からピッチに立ったものの、チームを救うことはできなかった。

 ユーロ2008での優勝以降、国際大会3連覇中だったスペイン代表にとって、<中盤>が最も誇れるポジションだったのは明らかだ。その選手層は他国から羨ましがられるほど。しかし、今大会は本来の姿からはほど遠かった。実際、『エル・パイース』紙は、チームで最もテクニックに優れるとされるイニエスタとシルバが、2試合合計で、それぞれ23回ものボール喪失回数を記録していたことを紹介。“ティキ・タカ”と呼ばれた変幻自在のパスワークはその面影すらなく、最大のストロングポイントだったはずの中盤は、相手チームの格好の餌食となっていた。

 そして<守備の綻び>については、言うまでもないだろう。オランダ戦の5失点が全てを物語るように、優勝した前回大会で参加国最少の2失点(7試合)を記録したチームとは思えない出来だった。“十八番”のボール回しがスムーズにいかなかったが故に、不安視されていた弱点が露呈した形となったが、それでもピケ(ハビ・マルティネス)とセルヒオ・ラモス、カシージャスで構成される自陣ゴール前のトライアングルは不安定であり続けた。

 チリ戦のマッチレポートに、『エル・パイース』紙が付けた見出しは「スペイン代表はタイタニックだった」。ユーロ2008から6年に渡って続いた栄光の日々が、一瞬にして崩れていった様を表現したものである。そういう意味でその栄光を支えてきた代表のシンボル、<チャビとカシージャスの衰え>は、まさに現在のスペイン代表の姿そのものだったのかもしれない。

 だが、6年も世界の頂点に君臨してきた彼ら2人、そしてスペイン代表というチームの功績が色あせることはない。最終戦となるオーストラリア戦、それは“史上最高のサッカー”を我々サッカーファンに魅せ続けてくれた彼らにとって、集大成の90分間となるはずだ。

(記事/Footmedia)

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