2014.05.31

優勝パレードはトラックの荷台…“超低予算クラブ”エイバルが起こした奇跡

エイバル
クラブ史上初の1部昇格を果たしたエイバル [写真]=Getty Im

 今、スペインで一際脚光を浴びるクラブがある。それは、10度目の欧州制覇“ラ・デシマ”を実現したレアル・マドリードでも、18年ぶりのリーグ優勝を達成したアトレティコ・マドリードでもない。スペイン北部バスク地方に本拠を構える、エイバルだ。

 今シーズン、スペイン2部リーグに在籍するエイバルは、5月25日のアラベス戦に1-0で勝利すると、残り2試合で3位ラス・パルマスとの勝ち点差を7とし、自動昇格圏である2位以内を確定。1940年のクラブ創設以来、初めての1部昇格を達成した。2012-13シーズンには、3部で2位となって2部昇格を果たしていたため、これが2年連続での昇格となる。

 もっとも、エイバルが脚光を浴びる理由は、それだけではない。今シーズンのクラブ予算390万ユーロ(約5億円)は、2部で最低。レアル・マドリードやバルセロナの予算と比べれば150分の1以下に過ぎない。また人口約27000人、ホームスタジアムの収容人数5250人も、2部で最も低い数字である。そんな“超スモールクラブ”が、リーグ最少失点を誇る守備力をベースに快挙を達成したのだから、あらゆるメディアの見出しに「奇跡」の文字が躍ったのも当然のことだった。

 なお、現地31日にはホーム最終戦が行われ、1部昇格を記念したセレモニーが開かれる。ただし、厳しい財政事情がゆえに、バルセロナがリーグ最終節で優勝した際に使う予定だった紙ふぶき30kg以上を破格の値段で譲ってもらったという。奇しくもエイバルのファーストユニフォームの色がバルセロナと同じ「青とエンジ」だったいう縁も手伝って実現したアイデアだが、その他にも、街を周回するパレードは1年前の2部昇格時と同じく、一般的なオープンバスではなく、トラックの荷台に乗って行うそうだ。

 一方、アレックス・アランサバル会長が公言するように、エイバルは「負債もなく、給与の未払いもない」という“優良企業”としての顔を持つ。負債を抱えることが当たり前のサッカー界において、これは特筆すべきことであり、「スポーツとビジネスを両立する理想のサッカークラブ」としてスペイン全土から大きな注目を集めている。

 しかしながら、エイバルは現在、来シーズンのトップリーグ初挑戦を前に大きな問題に直面している。それは、8月6日までに約170万ユーロの増資を実現しなければ、1部昇格どころか3部への降格を命じられるというもの。現行のスポーツ法により、1部、2部の“プロカテゴリー”に属するクラブには約210万ユーロという最低資本金制度が課せられており、約40万ユーロの資本金しか持たないエイバルは、この基準を満たしていない。

 そのため、クラブは1口50ユーロの新規株式の発行を決定し、現地20日にはマドリード市内で購入を呼び掛けるPR活動を行った。なおこのPR活動には、2000-01シーズンにレアル・ソシエダからのレンタル移籍でエイバルに在籍したレアル・マドリードのスペイン代表MFシャビ・アロンソと、同じバスク地方を出身とするレアル・マドリードMFのアシエル・イジャラメンディも参加。彼ら2人の参加とツイッターを通じた告知活動の効果もあって、日本時間31日時点で100万ユーロ以上が集まっており、残り60日強での目標達成へ順調な歩みを見せている。

 このまま増資の問題をクリアすれば、来シーズン、スペインのトップカテゴリーで戦う史上60番目のクラブとなるエイバル。前途多難な船出となったが、“奇跡のクラブ”が織りなす物語はスペインサッカー界にまた新たな一石を投じてくれるに違いない。

(記事/Footmedia)

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