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【フットボールクラブがある街】A View Of DORTMUND 「罵声、ビール、カップ、 時々、ライター。」

2017.02.13

 ドルトムントのホームゲームを撮影する時は、カメラを守るレインカバーが欠かせない。たとえその日が雲ひとつない晴天であっても、だ。

 ホームチームが相手を圧倒していれば何ら問題はない。「0-0で進む緊迫した展開の中、疑惑の判定で試合終盤に相手チームにPKが与えられる」なんてことが起きると、コアなファンが集まるスタンドから様々なものが雨のように降ってくる。罵声、ビール、カップ、時々、ライター。ビールのシャワーが原因でレンズが動かなくなったことは、過去に2度。「お前は自分の家でも同じことをやれるのか?」と小声で不満を示したところで意味はない。また別の試合で、全く望んでいないビールかけを経験することになるだけだ。

 幸運にも(?)、それほどファンやピッチに近いところから撮影できているわけだから、このスタジアムが放つ圧力はいつも感じている。

①②③試合が始まる3時間前頃から、徐々にサポーターがスタジアムに集い始める ④小さい子供の姿もちらほら。この子はどうやらオーバメヤンのファンのようだ ⑤⑥試合のある日には、スタジアムに隣接されたファンショップにも数多くのサポーターが訪れる

南側のゴール裏は、大規模なスタジアムでは珍しい1層構造。ひとつながりの斜面に、およそ2万5000人を収容する

コアなサポーターが作り出す“黄色い壁”に、ドルトムントの選手は背中を押され、相手選手は気圧される


 まず、一人ひとりの声量が凄まじい。そして、コアなファンーーつまりすべてを犠牲にしてチームに情熱を捧げるファンーーが圧倒的に多い。すると当然、声援の大きさは並大抵のものではなくなる。チャントが始まれば空気が揺れるし、ゴールが決まった瞬間の歓声は、控えめに言って爆発音だ。最近では、相手チームに対する耳をつんざくような指笛を遮断するために、撮影中にイヤホンで耳を塞くことすらある……のはここだけの話にしておこう。

 黄色い“壁”がそびえ立ち、夜になると少し怪しげな光に包まれるジグナル・イドゥナ・パルクは、アウェイチームにとっても、ビールのシャワーを恐れる一部のフォトグラファーにとっても、難所だ。しかし、8万人が大合唱する『You’l l Never Walk Alone』を聴くことができるこの場所は、ドイツ屈指の名所・ベルリンの“壁”にも負けないくらい、魅力に満ちている。

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■プロフィール
千葉 格
茨城県生まれ。神奈川県逗子市育ち。大学卒業後、サッカー雑誌編集社に編集者として入社。その後、観覧車の下でカップルを撮影するアルバイトなどを経て、2010年に渡独。現在はドイツのフランクフルトを拠点に活動中。人物ポートレート、スポーツ、旅写真などを撮影。国際スポーツプレス協会会員。

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