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【インタビュー】ピエール・エメリク・オーバメヤン「愛すべき“ジョーカー”」

2017.02.09

かつての俊足ウインガーは、世界屈指のゴールハンターへと変貌を遂げた。その素顔は、誰からも好かれる不思議な魅力を持った、陽気で謙虚な好青年。時としてルールを破り“悪役”にもなるが、どこか憎めない存在だ。

文=アンドリュー・マリー Text by Andrew MURRAY(FourFourTwo)
翻訳=田島 大 Translation by Dai TAJIMA
写真=ステファン・グレイ、ゲッティ イメージズ Photo by Stefan GREY, Getty Images

[ワールドサッカーキング3月号「BORUSSIA DORTMUND プライドと狂気のフットボール」]

 現実のフットボールでも、テーブル・フットボールでも、その決定力に変わりはないようだ。ドルトムントの点取り屋、ピエール・エメリク・オーバメヤンは、世界最高のストライカーへの階段を駆け足で上り続けている。彼はゴールを奪う才能だけでなく、誰からも好かれるという不思議な才能を併せ持っている。たとえルールを破った時でも、どこか憎めない存在なのだ。 我々がオーバメヤンの取材を許されたのは2016年11月のことだった。だが、取材前日になって厄介な問題が起きた。オーバメヤンがクラブの規則を破ったとして、チャンピオンズリーグ(CL)のスポルティング戦のメンバーから外されてしまったのだ。これではインタビューの約束もキャンセルされてしまうだろう。すでにドイツ入りしていた我々は最悪の事態を想定した。

 翌朝、神に祈るような気分で、大勢のファンが集まるドルトムントの練習場を訪れる。すると、渦中のオーバメヤンがまるで何事もなかったかのように現れ、チームメートやコーチたちと笑顔で冗談を言い合いながら、トレーニング場に足を踏み入れた。11月のくもり空の下、オーバメヤンは笑顔を絶やすことなくすべての練習をこなし、居残りでシュート練習まで行った。前夜の騒動は何だったのか……彼はすぐに気持ちを切り替えていた。

 ドイツの記者たちが帰り始めたところで、オーバメヤンは練習ピッチの反対側で我々を出迎えてくれた。そして満面の笑みを浮かべながら、若者らしい握手の後に肩をぶつけてきた。黒のニット帽とフェイクファー付きのパーカーに身を包み、足元には自分でデザインしたというスニーカー(銀のスタッズが並び、「PEA」という彼のイニシャルが刺繍されている)。派手なファッションに、はじけるような笑顔がよく似合う。

「最高じゃん! 1試合やらない?」。部屋の隅に置かれたテーブル・フットボールに気が付くと、ストライカーの闘争心に火がついたようだ。しかし、我々にはその前に仕事がある。まずは2016年を振り返ってもらわなければならない。昨シーズン、彼は49試合で39ゴールをマークし、少し無駄の多い俊足ウインガーから世界屈指のゴールハンターへと変貌を遂げた。もちろん、他にも聞きたいことがある。“ドルトムント愛”について、そして“バットマン”との関係についても……。

15-16シーズンのELガバラ戦ではハットトリックを達成。ロイスとのパス交換から生まれた鮮やかなミドルシュートを自身のベストゴールに選んだ


チップシュートが決まると最高に気持ちがいい


昨シーズンは過去最高のゴール数を記録したね。以前と何か変わったことはある?
(トーマス)トゥヘル監督の就任1年目で、僕らは新しい試みに着手したんだ。僕自身は常に中央でプレーするようになった。チーム全体で素晴らしいシーズンを送れたし、僕も楽しめた。これだけ優秀な選手に囲まれていたら、ゴールを決めるのもそんなに難しくないよ。

トゥヘルはどんなタイプの監督なんだろう?
彼はものすごく細かい部分にまでこだわる。完璧主義者で、選手たちにも完璧を求めるんだ。実は僕もそういうタイプだから、監督とは気が合うよ。

プレー面で改善したことは? 
よりゴールに近い位置でプレーすることを心掛けたよ。結果的にそれが功を奏して、得点力がアップしたのかもしれない。昨シーズンの自分の成績を誇らしく思っている。加入したばかりの頃は、ストライカーとしてプレーできるのか多くの人に疑問を抱かれていた。単にスピードを生かしてサイドを駆け上がるだけの選手だと思われていたからね。だから成長するために毎日のように居残り練習をしてきた。ゴールを決めたければ練習を続けるしかない。継続することが大事なんだ。

ドルトムントにとっての今シーズンの目標は?
CL出場権の確保は最低ラインだ。それが絶対条件。その上で何かトロフィーを取りたいね。DFBポカールでもいい。僕らは3年連続で決勝に進みながら優勝を逃しているから、「今シーズンこそは」というモチベーションがあるんだ。

ドルトムントはCLでも順調だ。 
そうだね。ここまでの戦いには満足しているし、再びヨーロッパ最高の舞台でプレーできてうれしい。クリスティアーノ・ロナウドのような選手と戦えるわけだからね。彼は本物の怪物だよ。ユーロ2016ではポルトガルを優勝に導いたし、昨シーズンのCL決勝でもPKを決めて試合を終わらせた。

ドルトムントに加入する時、ここまで順調なキャリアを送れると思っていた?
ドルトムントへの移籍は正しい判断だと確信していたよ。1年目はあまりパッとしなかったかもしれないけど、だからこそ必死に頑張ってここまで成長できた。そして、これからもっと上を目指していきたんだ。いつまでドルトムントでプレーするかって? それは分からない。フットボールの世界では何があるか分からないからね。確実に言えるのは、ドルトムントにいて幸せだってこと。ファンやクラブスタッフともいい関係を築けている。長期契約を結んでいるし、この偉大なクラブでベストを尽くしていきたい。

一番好きなのはどんなゴール?
もちろん、スペクタクルなゴールだ。例えば2015年の10月にヨーロッパリーグ(EL)のガバラ戦で決めたようなヤツだね。マルコ・ロイスとのパス交換からゴール上隅に叩き込んだ。あれは最高だったよ! それと、GKとの一対一の場面でチップシュートを打つのも好きだ。GKが倒れ込むまで待ってから狙う。以前の僕はグラウンダーのシュートばかり打っていたんだけど、父から「もっとGKの動きを確認してチップシュートを狙え」とアドバイスされてね。それから熱心に練習するようになった。今は自然にチップシュートを打てるし、決まった時は最高に気持ちがいいね。

ワールドサッカーキング2017年3月号「BORUSSIA DORTMUND プライドと狂気のフットボール」では、オーバメヤンが尊敬する父親への想い、ガボン代表でのプレー、プライベートについて語ります!

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